表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

53/143

5 サキュバスのダンジョンを進め

 俺は最初のフロアを後にして次のフロアへと向かう。

 そのフロアも同じ光景で、桃色の霧がかかっていた。


 アムリスいわくは淫気のようだ、この桃色の空気は。

 発生源はこのダンジョンのサキュバス、それが思考を奪う淫気を蔓延させているようだ。


 淫気はそのうち理性も奪っていくとも聞く。

 道理で妙に心臓が高鳴っていたわけだ、あれの仕業か。

 攻略は早いうちにした方がいいな。


 そして次のフロアにもサキュバスが一人いた。

 白いチャイナドレスをまとった、赤い髪のモンスター。

 結果を言うと、こちらは手早く倒せた。


 アムリスがストーンエッジで隙を作って、俺が斬撃を加えるという形だ。

 ただ、あのサキュバスは胸が大きい上に足も綺麗だった。

 それも無意識に気を引くほどに。


 そのため、戦闘中に拳での攻撃、足の攻撃の時に不意に目が行っていた。

 何とかうまく倒せたが、結構自分の動作に隙を作っていたな。

 反省はしたい。


 このフロアに宝もなく、俺と佐波さんはひとまず粘着化した空気で脳の思考を整える。

 消費した空気は各二つ、その後に次のフロアへと向かった。


 そのフロアにもサキュバスが一体いた。

 姿は黒いブレザーのような上着に黒いミニスカート。

 長い金髪で女子高校生のような姿に近い。


「とりゃ!」


 金髪のサキュバスは浮きつつ、回し蹴りを放つ。

 俺は今その相手と戦っている最中だ。


「くっ……そのさ、足上げるの困るんだよ!」


 避けつつ、俺は文句を言う。

 相手が聞かないのは分かるが、どうしても言いたい。


 何せスカートが短く、中が見えてしまいそうで一々目がそっちに向かってしまう。

 これまで何とか見ないよう耐えているが、不意に見てしまったら大きな隙を作ってしまいそうだ。


 文句を言うのも自分の気持ちを整える意味もある。


「ふふふ、見ていいんだよ? それっ、私の贈り物」


 サキュバスが口に手を付けて、投げキッスを放つ。

 そこから桃色のハートが俺に向かってくる。


 当たったらどうなるか。

 どうなるかは分からないが、ろくな目に合わないだろう。


 でも、もしかしたらいい気持ちなのかもしれない。

 いや、そんなことは考えてはいけない。

 とにかく粘着空気砲で落とそう。


 俺は粘着化した空気をハートに当てる。

 当たったハートは床へと落下した。


「早く俺はここを攻略したいんだ! 倒れてくれ!」


 俺は言葉と共に剣を振りかぶって、サキュバスへと駆ける。

 何もしなければ攻撃が当たる。

 しかし、それでも相手は何もせず、浮いたままだ。


(照日! 下がって今すぐ!)


 アムリスからの声。

 ふと視線を変える。

 落としたハートが俺に再度向かっていた。


 避けないと、後ろに。

 しかし、俺の反応は遅れた。

 淫気で思考が鈍ったせいか。


 ハートは俺に当たってしまった。

 当たった際にハートが何個か散っていく。


「ふふふ……私の気持ち、君に伝わったね」


 そうサキュバスが言うと、急に視界の桃色の空気が濃くなった気がした。

 同時に俺の心臓が倍以上に高鳴る。

 こんなにも心臓って動くのかってくらいだ。


「え……? な、なんだよ……この気持ち……」


 俺は戸惑いを覚える。

 更には頭の熱もすごいことになっている。

 風を引いた時でも熱はこんなにはならない。


「捕まえた!」


 サキュバスは俺と向かい合う形で抱き着く。

 腕は俺の首に回して、足は俺の腰の後ろに。

 更には胸も腰もお互いに密着していた。


 俺は成すすべがなかった。

 視界もよく分からなかったし、防御も回避も出来なかったし。

 それと女性特有の香りもどこか脳へと直接快感をもたらしてもくれた。


「あ……」


 俺の声の後にキスをされる。

 赤味がかったオーラも出てきてから、一旦サキュバスは口との距離を離した。


「私、欲求不満なの、ダンジョン出来てから男に触れてないから」


 そっと俺の耳にささやく。

 その間にも俺の生命力が腰から吸われていた。

 もがきたいが、力がほとんど出ない。


 再びのまずい状況。


「何とか、しないと……」


「いやよ。こうして君とくっつくの気持ちいいし。離したくないもの」


「これじゃあ……吸われるだけだし……」


「ダメー」


 サキュバスは脚の絡みを強めて、腰の密着を強める。

 伴って、腰の刺激が強くなり、生命力が更に相手へと流れて行った。

 まるで俺を絞るかのように、だ。


「ああぁ……」


 俺に脱力感が走る。


 だるいが、不思議と快感もあった。

 何もせずにこのままでいいんじゃないか。

 アムリスも不思議と何も言ってないようだし。


「ああん。いっぱい生命力頂いちゃった」


 サキュバスは喜びを声にする。

 欲求不満と語っていたから、久しぶりの味わいなのかも。


 相手は抱き着いて向かい合う形で密着。

 胸も腰も、そして、お互いの股間も密着して刺激し合っている。

 俺の硬くなった部分が、あちらの下着が覆う部分に触れ合っている状況。

 ああ、このまま生命力を吸われる状況もいいのかも。


 少し考えてから、ふと考えがよぎる。

 いや、このままだとダメだ。

 吸われつくして負けてしまう。


 状況を打破しないと。


「あれ、だったら……」


「何をする気なのー?」


 サキュバスの問いの中、俺の指輪は光る。

 念じる相手はミュサで、召喚も念じる。


「ミュサ、WO」


「む! 悪いお口は閉じなさい!」


 俺の言葉の後すぐにサキュバスはキスをしてくる。

 さらに一度足の絡みを緩めてから、再び絞るように足の力を強める。

 生命力が吸われていった。


「んぅ……」


 言葉は封じられる。

 だが、ミュサの召喚には成功した。

 近くに魔法陣が現れて、ミュサがその中から出てくる。


「ん!? サキュバスですか? 知らない相手とこんなやらしい絡みは許しません!」


 ミュサは人間の姿のまま、足元に魔法陣を出す。

 ウィンドプレッシャーをサキュバスに放つつもりだ。

 先ほどの命令のWO、ウィンドプレッシャー、オポネントへ、も命令の一つ。


 強い風が俺とサキュバスを巻き込む。

 絡み合っていて、これならば一緒に飛ばされるだろう。

 でも、体勢が崩れて俺の後ろへとお互いに倒れたのは好機だ。


 床に手を伸ばして、空気を粘着化。

 粘着化した空気が俺の手と床に付着する。


「え? あ、そんなあ……」


 サキュバスは風に流される。

 対して俺は粘着化していてその場にとどまることが出来た。

 やっと、俺は離れたわけだ。


 風に流されたサキュバスは壁に張り付いて動けない状況。


「これでようやく攻撃できる」


 剣に魔力を込めて、槍をイメージし、突きを放つ。

 結晶がサキュバスに向けて伸びていく。


 俺にも風は吹くが、粘着化で留まる。

 そして相手は風で無防備を晒している。


 槍のように伸びた結晶はサキュバスの胴を貫いた。

 攻撃を受けると、相手は光に包まれていく。


「あん! こんなのじゃなくて、君の固い物を入れたかったな……」


 サキュバスは悔しさを言葉に出して消失した。

 これにて敵対するモンスターはフロアからいなくなったわけだ。


 俺は一息ついてから、安心を感じた。

 一瞬でも隙を見せるとあっちのペースに巻き込まれてしまう。

 それに思考力も奪われて、いつもの判断も出来ない。


 あの時走って切るんじゃなくて、結晶を伸ばせばこんなことにはならなかったな。

 このダンジョンに入ってからは思慮に欠けている。

 反省したいけど、本当にこの空気は不味い。

 おそらく反省も意味がないくらいかもしれない。


「えっと、とりあえず助かった。ありがとうミュサ」


 起死回生の機会をくれたミュサには礼をしたい。


「いえ、構いません。この淫気はやむをえませんので。それよりもアムリスに言うことはないのですか?」


 対してミュサは特に顔色を変えることなく俺にこう話す。

 そういえばハートを食らってから、アムリスからの行動がなかったな。

補足

オポネント:日本語訳で相手

opponentです

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ