3 大学にて
そして、俺は佐波さん案内の下に話に出ていた大学へとたどり着いた。
シュンも同行してもらってだ。
目立つダンジョンが出来ていれば、すぐモンスターの仕業と分かる。
それがないことは目立たないダンジョンが出来ている可能性が高い。
そのために同行してもらっていた。
ミュサは家付近で何かあった時のために待機してもらって。
大学についてから俺はアムリスとシュン、そして佐波さんと大学のグラウンドにいた。
ちなみにマトトも佐波さんと一緒だが、武器化してアイテムボックスに格納されている。
家にいるときもこのモンスターは武器となってボックスの中に潜んでいるのだとも聞く。
「俺は待機という訳だな。どこにダンジョンがあるかも分からないし」
今、佐波さんは西堂さんのお姉さんを探していた。
俺は何もすることがないので、待機。
シュンは今の内に怪しそうなところを探している最中だ。
俺がやみくもに探すよりかは見つけやすいだろうし。
今は余計なことはしない方がいい。
「照日達もだけど、大学生も普通に学生生活をしているわね」
俺の隣でアムリスが呟く。
周りは大きく騒いでいる様子もなく、生活している様子。
今のところ被害で困っていて、それが大学生の間で蔓延している様子はなさそうだ。
モンスターからの被害とは断定できないが、早いうちに元は絶っておきたい。
「野球もやっていれば陸上もだし、テニスもやっているな」
ユニフォームでバットを振っている学生もいれば、ハードル走を練習している学生もいる。
練習には熱が見える感じだ。
大会でもあるのか。
その中でテニスをやっている学生に目がつく。
大学のユニフォームをまとった女学生がラケットでボールを弾き返していた。
そこで気になっていたのが動きだ。
ひらひらとした短いスカートで走っていて、ラケットを振るってもいた。
そうすると、スカートも激しく動く。
スカートで覆っている中の部分も見えそうであった。
「照日……なにをみているの?」
アムリスからの鋭い視線と言葉。
なんだか嫉妬のようにも見える感じだ。
「あ、いや……なんでもない」
俺は目をそらして、否定する。
これ以上見るのはアムリスにも悪いし、テニスをやっている女性たちにも悪い。
俺なんかがずっと見ていては不愉快になるだろうし。
ボールとラケットのぶつかる音が聞こえる。
俺は逸らした視線を無意識に元に戻しそうになった。
いや、だめだ、戻しては。
別の所へ視線を移そう。
人がいないところならどうだろう。
大学とかだ、そこでどこにダンジョンが出来たか考えれば。
で、女性の声が聞こえる。
掛け声だったり、こうした方がいいとの声で、テニスをやっている女性たちだ。
無意識に視線が動いてしまう。
テニスをやっている女性たちは俺を気にする様子もなく動いてる。
そして、スカートも激しく動く。
確かテニスでは見えてもいいような下着をはいていると聞くが、こっちはどうしても気になってしまう。
俺からすれば下着が見えそうな行動をしているのに違いないから。
そして、女性が走って立ち止まって、大きくラケットを振った。
それに伴って大きくスカートがめくれる。
尻を覆う下着が俺の目に入ろうとしていた。
その瞬間。
「照日……! 随分と視線が変な方向に行ってない?」
アムリスからの鋭い言葉。
怒り気味の表情も見える。
「あ、いや……なんでもない。なんでもないから」
再び俺は視線を逸らす。
なんと言うか申し訳ない。
俺ってこういうのに弱かったんだな。
なんだか情けなくなってきた。
と、ここで、佐波さんがテニスコートの方へと入ってくる。
声掛けをしていると、女性が佐波さんの元へ近づいた。
もしかすると、今回頼んだ人と何か関係があるのか。
「天川くーん! この人が西堂さんだよー!」
まじか。
さっきまで俺が見ていた女性か。
なんか言われないといいんだけど。
あんな目で見ていたからな。
行きにくいけど、行くしかないか。
「あ、そうなんだ……今そっちへ行くよ!」
俺は返答してからテニスコートへと入っていく。
佐波さんの元へと歩いて行くと、ウェーブをかけた黒い髪をまとめた女性が俺に歩み寄ってくる。
テニス用のつばのついた帽子もかぶっていて、紫色のスカートを身に付けてもいた。
その女性は俺がさっきまで見ていた女性であった。
「天川君。この人が西堂さんのお姉さんで聖菜さんよ」
「あ、どうも……天川です。異変の方を解決しに来ました」
おれは挨拶を言葉にする。
すると、西堂さんは俺の顔を笑顔で見ていた。
正直言うと、この笑顔が怖い。
「あなたね?」
西堂さんからの問い。
それに心臓が高鳴る。
「え?」
この一言を俺は返す。
あんな目で見ていたのがばれていて、それでこういったのか。
分かっていたらそれを追及されるだろうな。
初対面でしょうもない話から始まった上に、悪印象で話を進めるのはさすがにまずい。
そんな中で西堂さんが笑みを浮かべて口を開く。
「電話で佐波さんから聞いていた強いって言う人よ。そんなに脅えなくていいのよ」
「あ、そ、そうです。モンスターとも何度も戦っていますので、その、任せてください」
驚いた、そっちのことを聞かれるとは。
てっきりスカートを見ていたことを指摘されると思っていた。
俺の言葉もかなりおかしいけど、何とか穏便にことが運んでよかった。
「それじゃあ、任せても大丈夫そうね。頼りにしているわよ」
西堂さんの言葉。
あからさまに機嫌の悪い声でもないようだ。
心の中ではどう思っているのか。
そこまでは分からないけど、とにかく注意されることもないのは助かる。
「分かりました。ところで、行方不明になっている男性ってどれくらいですか?」
「男子が三人よ。被害は大きくないから大学でそこまで騒ぎにはなっていないみたいね」
人数はそれくらいか。
大学の様子から見るに行方不明になった人数は少なそうと判断していた。
だから、人数に対して驚く印象はない。
でも、行方不明になっている人は困っているだろうし、早く見つけたいって気持ちはある。
ここで指輪が光り、声が響く。
「てるちゃん。ちょっと、いいかい?」
シュンの声だ。
「あ、シュンか。何かあったのか?」
「見つけたよ、ダンジョン。大学の中にあった」
ダンジョンがあったとの報告。
シュンに任せたのは当たりのようだ。




