13 アムリスからの夜這い、再び
それから、俺はダンジョンの見回りを行った。
その最中に三闘士から誰と契約するかも考えていた。
パンフレットによると三闘士は契約したモンスターと同じように使えるようだ。
ただし、一日に一回しか召喚できず、その上にできることは技の一つだけだとか。
その分、強力な技を使ってくれる。
なので、使いどころを見極めればかなり頼りになるのは間違いない。
で、その三闘士についてだ。
ガティークの他にゴーレムを精製する技師の男性もいる。
ゴーレムというよりもこの世界に存在する巨大ロボのようなゴーレムを作ったりするとのことだ。
こちらはなぜかミュサが推していた。
理由を聞いても教えてくれなかったけど、人形とか操作できるからだろうか。
もう一人はポーションマスターとも言えるほど精通しているドライアドの女性もいた。
なんでもエマージェンシーポーションを開発したという凄いドライアドだとか。
ちなみにシュンがやけに押していた三闘士だ。
「この人のマッスルキングポーション、絶対決めたらかっこいいですよ、旦那!」
なんてこともシュンは言っていた。
このポーション、量が多くて使うと俺も長い間飲まないといけない。
飲みきったら効果は凄いとも聞くが、ロマンの固まりとも言える技だ。
その三人の内から一人を選ぶが、まだその結論は出ていない。
それは夜のうちに考えをまとめるつもり。
そして、ダンジョンの見回りを終えて、佐波さん達とも別れて、夜がやってくる。
俺は夜食も食べ終えて、寝るだけとなった。
今の俺は寝間着で部屋を暗くして寝ていた。
「……」
俺は仰向けで寝ていた、考え事もしつつ。
考えることは見回ったダンジョンのこと。
結果的に見回ったところにはダンジョンもなく、何事もなく済んだ。
飽くまで俺の見た範囲では、だが。
見回りの結果、遠くの方でダンジョンが出来たという話を聞いた。
その場所はすぐに向かっても着くのは夜になるという場所との。
結局は行かなかったが、歯痒い気持ちもある。
冒険者も意外といるようなので、俺が行かなくともそこはクリアされているかもしれない。
でも、やはり、クリアできずにモンスターが出てきたら。
それを考えると、歯痒い気分は残る。
「仲間も出来たんだよな。だから次は……」
次はもう少し遠い場所も見に行くか。
近くのことはレックスや佐波さん、三木島に任せてもいいかもしれない。
出来ることは前よりも増えてているんだ。
せっかくできた仲間をこうやって頼る方法もある。
とここで、ノックが聞こえてくる。
「ん? 入っていいぞ」
「照日、起きていたの? じゃあ入るから」
帰ってきた声はアムリスの声。
入ってきた姿は以前と同じピンク色の寝間着であった。
「どうかしたのか?」
俺は体を起こしてベッドの端に座る。
足は床に付ける体勢だ。
「うん、個人的な用があって来ちゃった」
「あ、そっか。まだ眠くはないから話すのは構わないぞ」
俺のベッドの方へとアムリスは向かう。
隣に座ってから、何かを話そうとするが、話す様子がない。
彼女の視線は部屋の床へと固定されていた。
「そのさ……えっと……」
「なんだ? 何か重要なことか?」
アムリスはなんだか戸惑っている感じだ。
焦ることじゃないから、時間をかけるのは構わないけど。
何か言いにくいことでもあるのか。
「なんというか……気に入らない感じなの、ミュサとキスしていたことが」
「え? それ?」
まさかの言葉だ。
確かにミュサとのキスは良くない表情していたし、そう言われると納得する。
予想を裏切らることではないが、アムリスからこう伝えられると驚くものだ。
「見ていて嫌だった。その、ミュサもああしないといけないことは分かっているから、黙っていたけど」
「そ、そっか。でも、どうすればいいんだ、俺は? ミュサのことも拒絶できるわけではないから」
そう言われるとそのままには出来ない。
そのままにしておいて、これからの行動に支障がってなると困るから。
で、アムリスは少しの間黙っていた。
後に視線をさらに下げる。
「……吸わせて」
アムリスは小声で言う。
「そっか……ん? なんて言った?」
吸わせて、と聞こえたが、それは間違いかもしれない。
それの確認のために俺は改めて問いただした。
あと、少し嫌な予感もしている。
「あなたの生命力、私も吸わせてもらうから」
アムリスは背中から羽を出して、腰から尾も出す。
そして、俺の方に腕を巻き付け、引っ張った。
不意を突かれた。
まさか、こんなことをするなんて。
俺とアムリスの唇はくっついていた上にあちらから引き込むように倒れる。
「んっ……! ちょ……」
「ダメ……こうしないと気が済まないの、私」
一旦、口と口を離してからアムリスは語る。
そしてすぐさまキスを再開させる。
羽も俺の背を包んで、足も俺の腰の後ろに回し、尾も俺の足に絡ませて。
前回と同じように離さないという意思が感じ取れる。
すでに赤味がかったオーラもお互いから出ていて、もう俺の力も抜けていくようだ。
ヤバイ。
でも、距離を離すにも俺の力が弱まっているから、脱出が困難。
あと、脱出してもアムリスの機嫌が斜めになるから、出来たとしてもまずい。
なすすべもなく、俺の生命力はアムリスに吸われていった。
流れも感じるし、前回と同じ目に合うことは間違いなさそうだ。
少ししてからアムリスは腕の力を緩める。
俺はその隙に口との距離を離した。
「ぷはっ……」
「これからミュサとか他の女性といい雰囲気になっていたら、私が毎回こうするから。その……覚悟しなさいよ」
言いにくそうだが、まんざらでもなさそうにアムリスは語る。
まじか。
いい雰囲気ってのは何となくわかるが、基準はなんだろ。
佐波さんともいい雰囲気になっていると思われたら、これをやられそうだ。
しかし、これは嫉妬のような感じだな。
ここで聞いてみるか。
「ところで、嫉妬みたいなことするけどさ、俺のことは好きなのか?」
「え!? そ、それを今聞くの?」
「むしろ、今聞くのが遅いと俺自身も思うところだ」
前々から気になっていたところだし。
初対面では好きではないって話して、少し前に今日と同じこともするわけだから。
そういえば、足の絡みはまだ解いてない。
しかも、絡める力はさっきよりも強くなっているし、腰との密着も深まっている。
前から思っているけど、アムリスはむっつりなところあるよな。
そうでなければ、足で絡める力なんて強めはしないだろうし。
あと、腰が密着しているせいか、お互いのオーラもなくなっていない。
密かにアムリスは生命力を吸収しているようだ。
「その……嫌いではないと……思う」
小声の上に視線をそらして、アムリスは解答する。
なんというか恋愛の感情を抑えての解答のようだ。
証拠として、俺との絡みを解こうともしないし。
そう答えられると、俺もなんだか照れてきた。
俺への恋愛感情を持った言葉なんて初めてのことだし。
「……そっか」
「そういう照日はどうなの? 私だけ聞いてあなたは教えないってそれはずるいわよ」
俺が答えないのは確かに不公平だな。
という訳で分かる範囲で答える。
「俺は……分からないな。恋愛なんてしたことがないからな」
「ええ? それは反則じゃないの?」
「でも、恋愛感情かもしれないものはアムリスにはある。それも一番大きいものは」
「え……?」
そもそも、俺は今までいじめられたわけだし、友達どころか好きになった人もいない。
同じ学年の女性を好きになる暇なんてなかったんだ。
だから、俺に恋愛感情があるかなんてわからない。
でも、アムリスには感謝をしているし、そばにいてくれて嬉しいってのはある。
それと、こういうことをしてくれて、いやって感情はない。
それをひっくるめて俺は恋愛感情かもしれないと判断していた。
「そりゃ、俺をここまでにしてくれたきっかけはアムリスにあるんだ。嬉しいんだよ、アムリスがいてくれて」
「……そ、そう。あ、ありがと」
アムリスは照れの表情で礼を言う。
さっきまで視線を合わせていたのに、また視線をそらしていた。
「というわけだし、満足したんだったら、そろそろ離してほしいかなって」
俺からの願いを伝える。
このままで寝るのは大変だから。
寝てしまって誰かに見られると、どうなるかは分からないが大変のことになる気もするし。
しかしアムリスはしばらく返答しなかった。
ただ返答は彼女の方からあった。
「ダメ」
「え?」
「満足してないから、今日はたっぷり吸うつもりで来たのよ。それにあなたは回復力高いんだから、これくらい些細でしょ?」
「そ、そんな……こんなままで寝てしまって、ミュサとかシュンがこんな絡みを見られたらどうするんだ?」
俺が一番危惧しているのは二人だ。
あの二人が見てどんな反応をするか予想もつかない。
シュンとかは余計なことをしないかかなり不安だし。
「今日は朝まで逃がさないんだから!」
俺は抵抗できずにアムリスから再びキスをされる。
抵抗なんてことも出来ずにだ。
そして、寝るまで生命力を奪われ続けるのであった。
これにて第四章は終わりとなります。
天川のステータスは次の章で公開します。
それと、ギルド三闘士についての設定も明日まで次の話にて公開します。




