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11 敗北に向けての一撃

先に言葉をかけたのはレックスの方だ。


「友人君。どうもレックスの敗北が濃厚のようだワン」


「みたいだな。でも時間稼ぎすればガルガードも立ち上がるかもな」


ガルガードの方を見て俺は声をかける。

もしかすると時間稼ぎのための会話なのかもしれない。


「ガルガードもしばらくは立ち上がらないワン。時間稼ぎなんて無駄なのはわかるし、その上で話を聞いてほしいワン」


「なんだ? 勝負中なのに」


「レックスが王様になる理由は飼い主が死ぬまでの寿命を得ることだワン」


レックスからの告白。


ああは言っても時間稼ぎかもしれない。

だが、会話を止めろとも言えなくなってきた。

内容も内容で、気にはなる部分でもあった。


「確か、飼い主は独り身だって聞いたな」


「佐波ちゃんから聞いたワンね。レックスは飼い主に寂しい思いをさせたくないワン。レックスは捨て犬だったから、その上で拾ってくれた飼い主に恩返しをしたいワン」


「冒険者に成ったのもそのためか。でも、どうやって寿命を?」


「寿命を得る手段は分からないワン。でも、王に成れば探すのはぐっと楽なはずだし、探すのはそれからワン」


「立派な目標があるんだな」


俺は関心の言葉を出した。

冒険者としての行動に俺は理由はある。

アムリスの真相を探るためという理由。


でも、王に成る理由ってのは確かに持っていなかった。

そんな俺に比べるとすごい理由だよ。


「だから……レックスはこんな状況でも悪あがきをしたいワン。そして、代わりに王様になるかもしれない友人君への一撃を送りたいワン」


頭を下げて地面に触れる前足を広げる。


するとレックスは光に包まれるとその光は大きくなる。

大きさは獣人の時よりも大きくなりそうだ。

大型自動車並みの大きさで、巨大化は止まり、光が散って姿を現す。


そして現した姿はライオンのようなたてがみと額に日本の赤い角を生やす。

骨格も犬の物とは異なり、どう見ても魔物とも言える姿だ。


その姿になってレックスは一吠えを繰り出した。


「凄いなこんな技もあるのか」


「敗北の覚悟はある。でもレックスはまだあきらめてない、それに王に成る気持ちはまだ大きいままだ」


「ああ、こんな姿になればいやでも伝わるよ」


俺は感じたことの感想を伝える。


体にも伝わるし、服も剣も震えているのが感じ取れる。

レックスの気迫に脅えるかのように、だ。


その後にレックスは身を引いて縮めた。

攻撃への溜めの動作だ。


「いくぞ、友人君よ! レックスの気持ちが大きいか! それとも友人君の負けない気持ちが大きいか! 今、確かめる!」


レックスは声とともに正面を駆けていき、光の粒子を体から出していく。

そして体から白いオーラをまとって、角を俺に向けてきた。


この大技、避けれるかもしれないが、避けるわけにはいかなかった。

俺の力の確認の意味もあるのだろう、この技は。


だからこそ、俺は真正面から受ける覚悟を持っていた。


俺は剣で防御の構えを取り、魔力を出来る限りつぎ込む。

そして作るは結晶の盾、それも縦横の長さ3Mはあるくらいの。

その盾にレックスが突っ込んできた。


衝撃は何とか耐えることはできるも、完全には殺しきれなかった。

盾に加えられる衝撃は1Mほど後ろに押し切る。


「レックス。お前の負けない気持ちはよく伝わったし、正直、王に成る気持ちの大きさは負けているかもしれない」


衝撃は盾も持ちこたえられないかもしれないほど。

結晶の盾から悲鳴に似たひびの入る音も聞えていた。


「だ、だったら、この勝負はレックスの勝ち……」


「それでも! 悪いんだけど! 勝たせるわけにはいかないんだ! 俺はアムリスのためにここで負けない理由があるんだ!」


俺は気持ちを率直に伝える。


ここで負けてはアムリスのためにならないことは分かっていた。

だからこそ、レックスが背負うものが大きかろうと勝つ選択をしていく。


盾に大きくひびが入り、砕ける。

俺の方から放棄をしたのだ。

最もこのままではレックスに砕かれるのも時間の問題だろうが。


そして改めて魔力を込めて作るのは、1M強の大きな球体。

盾もなくなったところでレックスは俺へと向かう。

というよりも盾への突撃の勢いを殺しきれず、姿勢はもたつきながらの全身であった。


ふらつくレックスに大きな球体が付いた剣を両手で横に振るう。

その大きな結晶は相手の顔に当たった。


「ぐうあっ!!」


レックスは後方へと飛ばされていく。

同時に結晶にもひびが入った。

相手が地に衝突すると同時に、剣にできた結晶も壊れる。


「ど、どうだ……これで……?」


俺からの問い。

まだレックスの耐久力は4250もある。

聞いておきたい。


「ま、負けたワン……」


そう言ってレックスは光に包まれて、ポメラニアンの姿に戻っていく。


「勝者、天川照日」


メイルオンさんが手を上げて、勝利を告げる。

棄権扱いのようだが、これで俺の勝ちが決まった。


<レベルアップ! レベルアップよ!>


ふと佐波さんの方を見る。

俺に視線は向けずに顔は伏せていて、喜びの表情は見えない。

勝ったには勝ったが素直には喜べないようだ。


「俺もあんなこと言われればな、勝ってもすっきりしないよ」


改めてレックスの方へと視線を向ける。


「うう……ごめんだワン、飼い主……」


倒れたレックスの方へと歩んでいく。

そしてしゃがんで、顔の方へ視線を向ける。


まあ、その気持ちはわかる。

俺が勝ってしまったから希望が潰えたわけだし。


「俺さ、こういうことを言われて、ほっとけないんだよな」


「嬉しいワン。でも、レックスの負けだから飼い主には……」


レックスは横向きに倒れたまま話す。

俺へと視線を向けずに。


「俺も探ってみようと思うんだ、寿命を延ばす方法を」


「え!? 本当ワンか?」


「ああ、可能性はあるかもしれないって思うから俺も探してみようと思う」


「それは嬉しいワン! だったらレックスは友人君の配下になってもいいワンよ!」


レックスは急に立ち上がって、体ごと俺へと向ける。

尻尾も振っているし、かなりのご機嫌と見える


この一言だけで立ち直っちゃうんだな、随分と早い。

まあ、立ち直ってくれて俺も何よりだ。


メイルオンさんがレックスの元へと寄ってくる。


「では、そろそろレックスはダンジョン外から出て行ってもらいます。回復もついでに行いますので」


そうメイルオンさんが言うと、レックスとメイルオンさんを囲む魔法陣が出てくる。

それとガルガードの方も魔法陣が包んでいた。

その魔法陣から光があふれて、レックスたちは魔法陣とともに消えていく。


予想外のことも起きたが、このダンジョンでのやることはこれにて終わりだ。


「あの、天川君……」


佐波さんが俺に近づいてくる。

気持ちの整理がついたのか、暗い表情ではなかった。


俺に負けろと言うのも心ぐるかっただろうし、逆にレックスに負けてなんても言えないよね。

複雑な表情になるのも俺は分かる。


「佐波さん。こんな結末で大丈夫なのかい?」


「うん。結果はこうなっちゃったけど、探してくれてありがとう」


「探すってよりも、俺はただ敵を倒していったら、偶然見つかったって感じだけどね。そういえば、俺より探すのが得意なシュンはどうしているんだか?」


俺に照れの感情が湧いたので、別の話題へと挿げ替えてみる。


にしても、シュンからの連絡がないのはやはり気になるな。

召喚したときにはシュンの方が先に見つけるんだろうなって気持ちがあったからな。


「でも、レックスの願いを引き継いでくれたってことは私も嬉しいな」


「あ、そうなの? 俺はやっぱりああいう願いを持った犬でも救いたいって気持ちがあったから」


佐波さんとしてもああいう対応で良かったんだな。

勝負が決まった後に下手なこと言っていたら、嫌われてもいそうだしな。


「うん。やっぱり、天川君凄いなって思っちゃった」


「あ、その……ありがとう」


佐波さんからの褒める言葉。

返すためのいい言葉も思い浮かばなくて、俺は礼しか言えない。

やっぱり褒められるのは慣れないな。


「私も冒険者として頑張るから。それで、レックスの願いをかなえる手伝いもしないと」


「まあ、そうなってくるか。ただ、危険な目に合うのはダメだからな」


「えへへ、気を付けるから」


佐波さんからの笑顔の返答。

こうして俺達はダンジョンでの捜索を終えて、帰るのであった。


それとシュンもダンジョンの帰りに合流が出来た。

なんでも彼はレックスも見つけることもなかったが、代わりに敵も倒しつつ、ダンジョンの宝を回収できたのだとか。

天川のレベルアップ結果の詳細についてはもう少しお待ちください

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