10 予知からの打開は出来るか
ガルガードはレックスに呼びかけをする。
それと共に彼はアイテムボックスから別の武器を取り出す。
その武器は両手に付けられる鉄のクローだ。
「いくぞ、レックス」
ガルガードの呼びかけ。
「ガルガード、準備は出来ているワン」
その呼びかけにレックスも解答。
お互いに腰を低くして、跳躍する。
俺の方に挟み撃ちか。
と思ったら、飛んだ先は俺の頭上だ。
妨害はすべきだったかもしれないが、予想を裏切られて行動が遅れてしまう。
お互いの爪同士と足同士がぶつかる。
そのぶつかったまま落下せずにいると、お互いはすぐに距離を離す。
飛んだ先はフロアの壁。
その壁にぶつかると別の方向へと飛んで行く。
その方向は俺とは違う方向。
そして壁にぶつかって、また別の方向へと飛ぶ。
まるでお互いが玉のように予想できない方向に跳ね返っていた。
ただし、その玉は凶器が付いている上に、どんどん早くなっていく。
(照日! これに当たったりしたら……)
ああ、俺でも一発で終わりかもしれない、アムリス。
俺に攻撃を当てるのは楽なはずなレックスが今はこうしている。
今は加速に専念という訳のようだ。
「アムリス、後ろは任せる。俺は行動を読まれないように今から対策を施す」
俺からの提案。
今の内にできる対策は施しておきたい。
相手にも伝わっているだろうが、言葉に出さずとも相手のやることは変わりないだろう。
(分かったわ。避ける方向も指示するから)
頼んだよ。
そろそろ、当ててくる予感はするから。
そして俺は両足に手を触れて、粘着化を念じる。
足を粘着化させるのではなく、対象は空気の方だ。
そうすることで、ついに攻撃が俺へと延びてくる。
来たのはレックスの方で、まっすぐに爪を伸ばしてきた。
「ぐあっ!」
俺は爪の斬撃を腕に受けてしまう。
勢いもあるためか、攻撃も先ほどよりも痛い。
更にと俺は傷が付いた方の腕にも触れて粘着化を念じる。
これも粘着化させるのは空気の方だ。
(左に避けて、照日! ガルガードが!)
分かった、アムリス。
俺は指示通りに避けた結果、ガルガードは通り過ぎていく。
ガルガードの方はレックスのような予知能力を持っていないようだ。
それに速さもレックス以上にないこともあって、助かる。
最も、当たればダメージは大きそうだが。
さらに別の腕をまとう空気も粘着化する。
その後に、俺の視界の正面右からレックスが突撃してくる。
当然、爪も伸ばして。
俺はそれを避ける。
「くっ……!」
その攻撃は俺の胴へと当たる。
ただし傷も浅く、痛みは先程よりも少ない。
レックスが手加減したわけではない。
むしろ、さっきの突撃よりも速度は速い。
俺がうまく避けれたからだ。
次に粘着化させるのは傷を負った胴をまとう空気だ。
空気の粘着化も完了し、これで首から下は粘着化させた空気をまとったことになる。
対策も完了だ。
(上に飛んで! レックスが膝の裏を狙っているから!)
俺は指示通りに避けた。
このレックスの攻撃は完全に避けることが出来た。
相手は俺の下を素通りしていく。
速度は先程の胴への攻撃よりも早い。
当然、相手の攻撃に不都合があったこともない。
俺の対策が効果があったようだ。
レックスの予知の効能は鈍ってきている。
「これで……次からは避けれるぞ。もう、臭いは分からないだろ?」
俺は希望を掴んだと宣言する。
俺のやった対策は粘着化した空気を体にまとわせること。
それで、臭いをシャットダウンしたわけだ。
俺が空気をまとえば分からないと判断した理由。
それはガルガードの剣が粘着化した空気に触れたことだ。
それが分かるのであれば、レックスが予知して防げていたはずだったのだ。
予知できていたのであれば、忠告があるはずだろうに、それはなかった。
判断理由としては十分だ。
空気の臭いは分かるかもしれない。
が、その臭いは部屋中にあるから俺のまとった物は分からないだろう。
現に対策を施してから、レックスの攻撃を完全に避けている。
臭いで予知していたという推測も完全に当たりと見える。
「……だからと言って、勝てると思ってはいけないワンよ」
「だな。まだ、俺はレックスを倒していないからな」
レックスからの反論に俺は答える。
俺だってこの状況で負ける可能性だってある。
(真横の右に飛んで! ガルガードが来る!)
アムリスの指示通りの飛ぶ。
その下でガルガードが通り過ぎる。
レックスの脅威も薄れた今、レックスより遅いガルガードへの攻撃も可能。
攻撃するしかない。
俺は攻撃として剣に魔力を込めて、槍をイメージして突きを放つ。
狙いはガルガードの背中。
結晶の精製とともに槍として狙いの方へと延びる。
「くうっ!」
ガルガードは結晶に貫かれる。
その結晶に粘着化を念じて、相手を包むように動かす。
ガルガードの勢いと俺の引っ張り。
両者の力が釣り合って、お互いに動きを止める。
厳密には俺が引っ張られそうだったが、それも何とか俺の腕力で食い止められた。
結果としてガルガードは粘着化した結晶に包まれて身動きがとれなくなる。
ただ、これだけで攻撃はやめるつもりはない。
結晶の捕縛も解かれる可能性がありうる。
「捕縛の上での追い打ちで悪いが、許してくれ。炎魔法、ブラストボム」
俺は落下しつつ、魔法を唱え、魔法陣が俺の足の下に出てくる。
その途中にレックスからの突撃が横から見えてきた。
それを剣で防ぐも、俺とレックスはお互いに弾かれる。
だが、魔法陣は健在。
俺は掌から火の玉をガルガードに向けて出す。
捕縛されたガルガードは足掻くも、防ぐ動作は出来なかった。
「ぐほうあ!!」
ガルガードの悲鳴と共に煙を出して爆発する。
俺は着地をして、煙が落ち着いたころには黒焦げになったガルガードが倒れる。
倒れてからは体を動かす様子も見えない。
これでガルガードはノックアウトだろう。
残りはレックスだ。
(右に避けて! レックスが後ろからくるから)
指示通りに俺は避ける。
レックスは俺を通り過ぎていく。
攻撃はしたかったが、かなり加速されていて攻撃は出来なかった。
確かに、この加速で捕らえるのはなかなか難しいだろう。
「今の速さは捉えにくい。でも俺の体で止めて、まとった空気をレックスに付ければそれで捕縛だ」
厄介な二対一の攻撃もこれで不能だ。
時間をかければガルガードが復帰するか分からないが、すぐにでもレックスは捕縛できる。
そして、今の俺の耐久力は6400。
壁の反射攻撃で削れたが、それでも回復はしていた。
捨て身でレックスを捕まえても、耐久力に問題はない。
そうこう考えていると、レックスは壁にぶつかる。
反射して別の壁、かと思えば今回は違うようだ。
ぶつかった後、体を回転させた。
そして、付近の地面に着地を決める。
反射攻撃はやめるようだ。
そして、レックスは俺に顔を向ける。
するとだ。
レックスは白い光に包まれて、白い光は小さくなっていく。
包まれた光が消えると、小さい犬の姿を現した。
最初に俺と対面したポメラニアンの姿を。




