表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

44/143

9 いかにして予知しているのか

 ガルガードは俺の方へと走ってきていた。


 だがその速さはレックスよりも遅いため、それは助かる。

 あのなりでレックスよりも早いってイメージはなかったし。


 で、レックスの方も何もしないわけではなく、再び俺の方へと走ってくる。

 事実上二対一なのはかなり大変だ。

 だから、せめて片方は抑えておきたい。


「片方はおとなしくしていてくれ。炎魔法、フレイムスネイク」


 俺の足元に魔法陣が出て、俺の掌に炎が生まれてくる。


 ダメージも自然治癒のおかげで直りは早いが、それだけで勝てるほど優しくはない。

 こちらからもダメージを与えないといけない。


 しかしだ。


(照日! 横から来ているわよ!)


 アムリスからの警告。

 横からレックスが伸びた爪を振りかぶって接近していた。

 俺は剣で防御を試みる。

 しかし、その防御も予測できていたかのようにかいくぐってきた。


「ぐあっ!」


 俺は炎が出た掌を押し出すと同時に攻撃が当たる。

 それで一直線上の炎はコントロールを失い、俺の意図とは別の方へと行ってしまった。


 だが、出来ることはまだある。

 魔法を出した掌に空気を粘着化して、それをガルガードの方へと向けることは出来た。

 幸いにも一つの炎はガルガードの方へと向かっていて、空気はその後ろについて行く形になった。

 おそらく、あちらは炎だけしか見えていない形だろう。


 ガルガードは向かってきた炎に向かって剣を持ちあげる。


「ぬん! ……ん? わしの剣に粘着化した空気が。やってくれるわ」


 その炎を叩き切ると、粘着化した空気も巻き込んでしまう。

 それによって地面と粘着化した空気が付着した剣がくっつくことになった。

 これである程度はガルガードの行動を防げそうだ。


 ただ、厄介な状況は変わりがない。

 まだ、レックスがいる。


「レックスだっていることを忘れちゃだめだワン」


 レックスは再度爪による突きを放とうとする。

 再度の攻撃も早い上に、粘着化しての壁や魔法の防壁も間に合いそうにない。

 だったら俺も攻撃だ。


 俺はカウンターとして剣の突きをレックスに放とうとする。

 その攻撃も難なくかわして、俺に突きを当ててきた。


「くうっ……!」


 突きが当たって、苦痛が漏れる。

 でも一対一に今のところは持ち込めている。

 そして、相手の爪が接触しているのだ。


 物に触れて、スキルコピーは出来る。


 俺は刺さった爪を握って、スキルコピーを念じた。

 コピーするものは幻覚発症。


 動き回る相手にこれは効果的なはずだ。

 仮にも相手は犬だが、多少の効果は望めるはず。


 レックスは爪を引き抜き、何もないはずの左右を見回す。

 効果の方は早速出ているようだ。


「ん! 分身能力を身に付けていたのかワン! 友人君!」


 声からもレックスに幻覚が見えているのが分かる。

 更には辺りを爪で引き裂く行動も見せている。


 好機だ。


 臭いで判断される可能性も考えていたが、今のところは大丈夫なようだ。

 やはり犬なので、嗅覚はすごそうだ。


 俺はレックスへと走っていき、剣を構える。

 相手はこちらに背を向けて爪での斬撃を出したところ。

 幻覚を切っているのだろう。


 これなら攻撃は当たるはずだ。

 俺は剣で斬撃を放とうと行動に出る。


 しかし、俺は早計だったと気づく。

 幻覚にかかっていないガルガードから声も何もなかったことに。


 レックスはすぐに俺の方へと振り向きながら横にひっかく。

 まるで瞬時に幻覚ではない俺の気配を察知したかのように。


「え……!?」


 俺は驚くことしかできなかった。

 まさか急に俺の姿を捕らえて、攻撃を仕掛けるなんて思いもしなかった。


 それでも、俺は何とか反応できた。

 剣に魔力を込めて結晶を作り出し、早急な盾を作る。

 大きさは80CMはあるか。


 しかし、レックスは盾の精製を受けて、別の爪で俺に突きを放った。

 相手の突きは精製と同時にだったので、これも読まれていたのかもしれない。


 ここまでの行動、俺は考えてもいなかった。

 爪での突きも避けられなかったし、まともに受けている。


 少し焦った感じだな、かなり痛い。

 よろけて後ろから倒れていく。


 俺は仰向けになった。

 そして、レックスが俺の視界に入る。


「おっと、どうも引っかかっていたようだワン。幻覚をいつの間にかみせられていたことかワン」


 倒れた俺を見つつ、レックスは話す。


 ふと見えた俺の耐久力は7500となっていた。

 対してレックスは最初から変わる様子もない。

 俺の耐久力は時間で回復するものの、じわじわと削られれば、負けの目が見えてくる。


 状況は不利。

 一方的に攻められている上に、こっちから攻撃できる状況でもない。

 更には予知もされているのか、攻撃や防御も読まれている。


「でも、収穫はあった。分かったことはでかい」


 俺からの確信を持った言葉。

 レックスはすべての行動を予知できているわけではないこと。


 本当に予知が出来ているならば、幻覚で惑わされることなんてない。

 あちらが幻覚でない俺を察知できたのは動き始めてからだ。

 ということはだ。

 視覚自体で予知しているわけではない。


「何が分かったワンか?」


 レックスからの言葉。


 ならば頼りになるのは嗅覚と聴覚だ。

 おそらく、聴覚は大体の方向は分かるだろうが、具体的な行動まで分からないはずだ。

 例えば小指の動かす音やどこかの足が音で分かるのは考えにくい。


「臭いで俺のことは分かったみたいだけど、その臭いで次の動きまで理解されているってことだな。それ以外にあり得ない」


 俺からの結論。

 予測だが、レックスは臭いで俺の動きを察知して予知までしているようだ。


 犬が優れているのは嗅覚だ。

 聴覚でなく嗅覚が冒険者に成って倍以上に研ぎ澄まされたというのであれば、予知できるという理屈も分かる。

 現に音は静止していれば出ないが、静止していても動いても出るのは臭いの方だ。

 予知しやすいのは臭いを研ぎ澄ませた方がいい。


 聴覚も頼っているかもしれないが、おそらく予知の力は嗅覚に比重を置いているだろう。


「んー、それはどうかなワン。正しいことを言っていたとしても、それに答えられないワン」


 レックスからは否定の解答。

 顔は動いてないもの、視線までは俺の方向へと固定化されていない。

 視線は左右へと動いているという状況。


 まだ幻覚は見えているようだ。


「いや、それが正しいかは今は関係ない。その正しいかをこれから実証するからな」


 俺は100%正しいと考えて行動に出るつもりだ。

 そうでもなければ、実証は出来ない。


 とここで、武器が落ちる音が聞こえる。

 俺からではなく、ガルガードの方だ。


「レックスよ。わしの武器はしばらくこのままのようじゃ。だから別の武器であれをやろうぞ」


 ガルガードは武器から手を放して、語る。

 まだ粘着化した空気が取り除けていないようで、諦めて武器を放棄したようだ。


「んー……分かったワン。友人君は回復するから、それがよさそうワン」


「貴重な時間をわしの別行動で費やしてしまってすまんの」


「構わないワン。どうせあれが当たれば帳消しワン」


 レックスは謝罪に対してのフォローを行う。


 何かしらのことをガルガードと行うようだ。

 しかも、俺の自然治癒をもろともしないような何かを。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ