6 スキル回収をしての強さ
戸柱との戦闘が終わって、俺は次のフロアへと移動していた。
今は細い通路を佐波さんと歩んでいる状況。
先ほどの戦闘でレベルも大きく上がり、スキルも回収できていたが、新しく獲得したものは6つだ。
爆弾化スキル
爆弾混入スキル
爆弾起動操作スキル
風魔法ウィンドサイス
風魔法ウィンドランス
風魔法ウィンドボール
これらが戸柱から回収できたスキル。
できれば全部確認したいが、急いでいるので爆弾化スキルだけ確認した。
これは戸柱も使っていたので、確認もすぐに出来るためだ。
この爆弾化スキルだが、石で試してみたところ、見た通りのスキルであった。
動作自体は無機物に爆弾化を念じて時間が経つと、煙を立てて爆発をするという物。
爆発までの時間は今のところいじれないみたいだね。
石を何回も爆発させて確認してみても、同じ間隔であったからだ。
爆弾起動操作スキルでもしかしたらと思うけど、そこまではやめておく。
それまでやると次のスキルも、となって時間をかけそうだし。
そして移動前に聞いたことのもう一つがレックス周りのことだ。
「レックスの飼い主はたぶん冒険者って線はないと思うよ」
佐波さんからの証言はこうだ。
年取っていて動き回るって言うのも得意ではないとも言っていた。
なら、飼い主と共にダンジョンにいるってことはないか。
となると、他にレックスと関わっていた人物がいる可能性の方がまだ高い。
ただ、その関わっていた人物も限られている上に、こちらの可能性だって考えられる限りではかなり低い方。
不透明なことは多いが、少なくともレックスは冒険者と関わっている可能性は高い。
そのため、奥に敢えて行っていると俺は見ている。
でも、俺は一応早めに探る必要はあると、急いでいるわけだ。
そして、佐波さんが魔法を使ったことについても聞いた。
「父親や母親について魔法が使えるなんて聞いていない。こんなことできるなんて、分からなかった」
佐波さん曰くはこうだ。
まあ、一般人が急に魔法が使えれば驚くよな。
レックスを探す前にモンスターと関わったということもないと言う。
なので、実は冒険者だったという可能性もない。
これについてはこれ以上分からなかったので、追及はここで終わりだ。
それが移動前に聞いて分かったことだ。
急いではいるけど、事前に確認しておきたいことだったし。
これに費やすのは必要と割り切っての判断だ。
通路を移動していた俺は佐波さんを気にかけつつ、敵の気配を探っていた。
移動中にふと気づいたことがある。
次のフロアは間近であったが、妙に騒がしい上に人の声がする。
「佐波さんはここで待っていて」
俺の指示に佐波さんは頷いて立ち止まる。
何が起きているか事前に確認したい。
なので、入口まで歩いてそっと覗く。
するとだ。
「うわー! 助けてほしんですぜー!」
男の喋る声。
でも驚くのはここじゃない。
青色の大きなコブラがフロアを逃げ回っていた上に喋ったのはあいつなのだ。
このフロアにはジャバウォックがいて、酸性のブレスからコブラは逃げ回っていた。
胴から竜の頭二つを生やして、長い尾が六本、マズワインが出した個体と同じだ。
まじか。
モンスターが喋っているのは分かるけど、仲間割れみたいなこともあるんだな。
前回のシュンとケットシーとの戦闘とも違う感じだし。
(どうするの、照日?)
どうすると言われても、あのジャバウォックは倒さないといけないしな。
コブラのことは置いておいて、戦闘はしないといけない。
ここはあのフロアの敵がコブラに気を取られているうちに入り口から攻撃をした方がいいな。
そう思っていた時にジャバウォックが酸のブレスを吐いて、コブラが前に飛ぶ。
着地に失敗して、前倒れになったわけだ。
俺の近くで。
そしてそのジャバウォック、俺を視界に入れた。
目が俺をはっきり見ているのは分かる。
不意打ちもダメそうだ。
「仕方ないな。直接向かうしかなさそうだ」
そう言って、俺は入口から出てくる。
不意打ちは失敗したけど、それでもジャバウォックとの戦闘は悪くなかった。
剣の強化前は尾を切れなかったしな。
どんな結果になるか楽しみだ。
あと、ミュサの召喚も試してみたい。
以前に見せたウィンドプレッシャーはなかなか使い勝手は良さそうだと思うし、使ってもらいたい。
俺とジャバウォックは戦闘になる。
先手を打ってきたのは相手だ。
相手の攻撃は頭を後ろに引っ張ってからの酸のブレス。
このままでは当たるので、防ごう。
避けるとコブラに当たるかもしれないし、盾を出すか。
「水魔法、アクアシールド」
魔法を唱えると、俺の中心に泡が現れて大きくなる。
その泡は地面と俺とコブラごと包み、半円の形になった。
泡と酸のブレスはぶつかって、溶解の音を立てる。
何とかまだシールドは耐えられそうだな。
ここでミュサに連絡だ。
彼女への連絡を念じる。
「はい、ミュサです。どうしましたか?」
ミュサからの声。
慌てる様子でもなく、取り込み中ではないようで安心だ。
「ミュサ、戦闘なんでウィンドプレッシャーをお願いしたい。向きはこっちに呼んでから指示する」
「分かりました」
ミュサの召喚を念じる。
すると彼女は俺の前に出た魔法陣から出てきた。
人間の姿でだ。
「狙いはあっちだ。俺もついでに魔法を仕掛ける」
相手も様子見のようで今は何もしてこない。
ならば、こっちから反撃と行こう。
アクアシールドを解いてだ。
「では行きます。風魔法、ウィンドプレッシャー」
ミュサの足元に魔法陣が出る。
そして強い風がジャバウォックに向かう。
相手は強い向かい風に耐える様子を見せていた。
風は強いからね。
下手をすればそのまま壁にぶつかりそうだ。
あと、酸性のブレスも出来ないよね。
風に跳ね返されて、自分に当たるだろうし。
「よし、炎魔法、ブラストボム」
俺も魔法陣を出して、掌を前に出す。
火の玉が弧の軌跡で放り出される。
今は風が相手に向かっているので、この火の玉も風に乗せてだ。
火の玉は勢いを加速させて向かい、相手も避けることも防ぐこともできない。
煙も立てて、爆音が鳴り響いた。
このブラストボムはウィンドプレッシャーと相性がいい。
相手の隙を作って、当てにくいブラストボムを上手く当ててくれるから。
ブラストボムって軌道も読まれやすいし、着弾までも時間がかかるんだよな。
この欠点を補ってくれるのはありがたい。
ウィンドプレッシャーの効果も終わり、ジャバウォックはよろめきながらも羽ばたく。
まだ攻撃できそうだ。
俺は走りつつ剣を振りかぶる。
結晶で剣を大きくということも可能だけど、今回は何も細工せずに攻撃だ。
剣の切れ味がどれくらいジャバウォックに効くか確認したいから。
俺は跳躍して相手に近づき、剣を振り下ろした。
その斬撃は思った通りの軌跡を描いてくれる。
前は弾かれるだろう体表に剣が入ったから。
斬撃を受けて、ジャバウォックの胴は裂かれるのであった。
ブラストボムのダメージと斬撃のダメージを受けて、よろめく。
さらに相手は光に包まれていくのであった。




