3 粘着化ってスキル、思ったより偉い
三行あらすじ
・粘着化スキルでゴブリン一体撃破
・サキュバスの名前はアムリス
・ダンジョンに驚きつつ、潜入へ
ゴブリンたちと俺、お互いに臨戦態勢。
すぐに戦闘へと入った。
まず俺は走って、ゴブリン二匹も俺へと向かって走る。
二匹相手は分が悪い。
ということで、一体にはおとなしくしてもらう。
「粘着空気砲!」
俺は声を出し、一体のゴブリンに向けて、手の平で突きを放つ。
同時に粘着化の念を送った。
粘着化した白い半透明の空気はゴブリンの足に向けて飛んで行く。
足に粘着化の空気が命中して、その場に足を固定させる。
ゴブリンもこれで一体はその場に留められた。
「ヒエア!」
拘束されていないゴブリンはこちらに向かって、こん棒を振りかぶってくる。
こん棒の振り下し。
それを俺は剣で防御した。
防げる攻撃だが、ゴブリンの体重も乘っていて、何度も防ぐのはしんどい。
だから、俺は後方へと下がった。
何のためかというと、仕掛けを作るため。
手で地面に触れて、粘着化を念じる。
更に後方に下がると、ゴブリンはこちらに向けて走ってきた。
相手の足が触れる、俺が触れた地面に。
「よし、かかったな」
ゴブリンの足は粘着化した地面に足を取られる。
相手は急なことで戸惑いを顔に浮かべていた。
視線も粘着化した地面に向いていて、俺は視界の外。
防御できない隙を見逃してはいけない。
俺は軽く飛んで、剣の振り下しをゴブリンに放つ。
攻撃をまともに受けて、ゴブリンは光に包まれた。
残りゴブリンは一体。
まだ、粘着して拘束できているようなので、試しに遠距離攻撃をしてみる。
(ん? ここからだと、攻撃できることはないんじゃ?)
中にいるアムリスの疑問は分かる。
確かにもう一体のゴブリンは剣の射程範囲外。
今の剣の二倍か三倍に伸ばさないと届かないだろう。
「まあ、見ててくれ」
剣を構えて、粘着化を念じる。
すると、剣の直線の刀身がゆがみ始めた。
うん、ここまでは成功。
剣を一振りすると、鞭のようにしなった。
剣が二つに別れないか心配だったが、そこも安心だ。
今は剣の長さも二倍になっている。
物を粘着化させると、触れている間は自在に動かせるようだ。
ということで、俺はゴブリンに向けて突きを放った。
突きの最中でも剣は伸びているので、相手に届きそうで安心だ。
「なんだ? なんだ?」
ゴブリンの驚き声。
同時に相手は棍棒で防御をする。
当たりたくはないよね。
で、もう一つ試すわけだ。
粘着化した剣よ、下に曲がってくれ。
伸びる剣は下に曲がってから、伸びてくれる。
「お、曲がるんだ。ありがたい」
この能力、偉い。
突きはゴブリンに命中。
一応、先までは粘着化しないように念じていたから、どうか。
「ヒゲアッ!!」
ゴブリンの胴は剣に貫かれた。
光に包まれて、消失していく。
粘着化解除してよさそうだ。
その思いの後に剣は縮んでいき、元の剣へと戻った。
これにて、この部屋のゴブリンはいなくなったわけだ。
<レベルアップ! レベルアップよ!>
レベルアップ。
なら、さっと確認しておくか。
急いだほうはいいけど、出来ることの変化だけは確認したい。
戦力は心細いから、いい方向の変化は常に見ておきたい。
俺はステータスオープンを念じる。
名前:天川照日
種族:人間
LV:3
職業:冒険者
所属:なし
耐久力:800
魔法力:150
攻撃力:350
防御力:300
機動力:300
技術力:350
魔法威力:150
スキル、魔法欄
物質粘着化:LV1
フレイムショット:LV1
ステータスの窓に表示されるスキルに視線がいく。
フレイムショット?
これはなんだろう?
(あ、フレイムショットは魔法よ)
アムリスの説明が入る。
「魔法か、詠唱の時間とかかかりそうだけど、どうなんだろう?」
(今は時間がかかるわよ)
「そっか……俺一人で足止めされるのはあれだし、今は使えないか」
魔法を試すにも時間はないから、試行は後回しだな。
もう一人、詠唱の間に時間を稼いでくれる人がいれば、試せたけど。
アムリスは戦闘も出来そうにないし。
(すごいわね。粘着化能力使いこなしているわ)
「正直、魔法よりも面白そうだし、使い勝手がよさそうだからさ。色々試してみたくなるんだよ」
魔法を試さない理由に、粘着化の力が便利だというのもある。
戦闘はこの能力でも現状十分でもあったし。
(でも、数回の戦闘でよくそんな発想が出てくるわね。驚きよ)
「光の当たらない影にもきっと可能性があるって思っているからさ。だから、目につくものの可能性は考えてみたくなるんだ、この能力がうまく使える可能性ってのをね」
(私はこの力をうまく使えなかったから。精々、壁か床を粘着化してイタズラ程度にしか使えないと思っていて)
こう見えて、俺は日常の物が武器になるかと妄想もしていたりする。
傘はとっさの時の突きに使えるんじゃないか、電源コードで遠距離攻撃をやれるんじゃないかと。
まあ、今まで武器として使ったことはなかったり、だが。
次の部屋への階段を探すと、部屋の隅に宝箱を発見する。
何か戦闘で使えるものがあるかもしれない。
俺は急いで、宝箱へと向かう。
罠の可能性もあったが、時間が惜しいと、さっそく宝箱を開けた。
宝箱の中にはビンに入った青い液体、長い剣。
「液体は何か分からないが、剣は持っていくにはかさばりそうだな」
(あ、そのアイテムはアイテムボックスに入れなさい)
「アイテムボックス? って言っても、箱はどこにあるの? まさか俺が箱になるとか言わない?」
(違うから、アイテムボックスオープンを念じて)
その指示を受けて、念じてみる、アイテムボックスオープン。
すると、俺の斜め前に黒い円が開いた。
覗いてみると、真っ黒の空間で何もない。
「まさか、これがアイテムボックス? これに入れていいのか?」
(ええ、入れればアイテムも分かるから、今回は分かるはずよ)
今回はとの言葉に少し不安が出てきたよ。
とにかく、入れてみるしかないと、俺は宝箱のアイテムを黒い円に入れた。
するとステータスの窓が出てきて、文字を覗いてみる。
アイテムボックス
・ポーション *1
・ロングソード *1
「あ、さっきの液体、ポーションか。これは回復すると見ていいのか?」
(ポーションは即効性があるから、戦闘中で飲めればすぐに回復するわよ。あと、収納はほぼ無限だと思ってもいいわ)
有限だったりするといざって時困るからね、有難いことだ。
でも、ポーションは今飲んでしまおうか。
慣れてきたと言っても暴力振るわれたわけだし、ダメージは残っているから。
そうは考えていたけど、もう少し後でいいか。
「とにかく先に進まないと」
俺は周りを見渡して、部屋の隅に階段を発見する。
(今のあなたなら、もしかしたら……)
走っている中で、アムリスが声をかける。
「どうかしたのか?」
(いえ、あなたには可能性を感じたってことよ。ともかく、今はダンジョンを攻略して多くのモンスターを倒してくれればいいわ)
「……そっか、ありがとな」
アムリスの評価に俺は礼を言う。
俺はいじめられていた上に両親以外からいい評価を貰ったこともない。
そんなもんだから、彼女の言葉は素直に嬉しい。
でも、今は佐波さんの救出が優先。
俺は階段を下りて行った。
後は本日の七時に投稿予定です。
しばしお待ちいただけると幸いです。
現代ダンジョンものが被っている気はしますが、そこは気にしないことにします。