4 冒険者、再びの邪魔をする
赤い髪の男の何かを見つけたような表情。
正直言えば、嫌な予感がするな。
なんと言うかろくな目に合わないような予感。
何せあの男性は槍を縮めたようなものを握っていたからだ。
よく分からないが武器だし、戦闘に持ち込むってんじゃないだろうな。
「悪いけど俺は探し物、というか探しペットをしているんで、用があるんだったら後回しにしてくれよ」
俺からの牽制の言葉。
あの男は素通りしたい。
ので、俺は移動して佐波さんも後をついて行く。
「まあ、そういうなよ。天川さんよ。しかも、彼女連れているみたいで嫉妬しちゃうんだよなー」
男の言葉。
あ、俺の名前を知っているな。
当然、あの男は初対面。
どういう経緯で知ったかはなんとなく想像できる。
俺が優勝候補だってことからだろう。
戦う予感がさらに出てくる。
あと、佐波さんは彼女じゃないんだけど。
「俺は用事があるんだ。構っている暇がないほどのな」
男に目もくれずに移動をする。
男の横に近づいたところで、男は言葉を差し入れる。
「じゃあ、決闘を申し込む。これで逃げられないだろ? 俺だって未だ彼女がいないのに、それはないぜ」
うわ、やってくれるな。
こっちは探している犬がいるって言うのに。
で、どこからともなく、天井から女性が下りてくる。
それは銀色の髪で鎧をまとった女性。
幸前の時にも見たメイルオンさんだ。
「では、決闘の宣言を聞きまして、エルドシールダー所属の私、メイルオンがジャッジを務めさせていただきます」
メイルオンさんは告げる。
おそらく前回と同じセリフを。
こうなってくると戦うしかないか。
ダメもとで一つ聞いてみるか。
「そういえば、メイルオンさん。これで俺が逃げると棄権扱いになるって感じかい?」
「はい、そうなります。逃げるというのであれば、当然負け扱いです。逃げるのなら今のうちに申告を」
そんな気はしていた。
逃げるのもダメそうだな。
「分かった。この勝負受ける。佐波さんは下がっていてくれ」
佐波さんは俺の指示を受けて下がっていく。
とりあえず、入口のところまで下がれば巻き添えは食わないだろう。
ここのフロアも結構広いし。
メイルオンさんは両者を見る。
戦闘準備が出来たと見てだろう。
「では、私、メイルオンが戸柱哲樹と天川照日の戦闘を見届けます。戦闘開始」
メイルオンさんからの言葉で戦闘が始まる。
「お前に勝てば、優勝候補へ百段飛びだ! あれを倒す必要もない!」
戸柱からの言葉。
そういえば、戸柱のパートナーの姿が見えないな。
俺のように体の中にいるタイプか、それともか。
「しょうがない、出来るだけ早く片付けるぞ。それと、両者HP公開」
俺は両者HP公開を試す。
冒険者とダンジョンのリーダーには通じるはずなんだけど、今度はどうか。
で、結果は何とか成功だ。
HP公開で見える数値だが、相手の耐久力は2800/2800となっていた。
あと、HPだけでなくLVも出ていたのが新発見だ。
相手のLVは24と出ていて、俺のLVも公開されていた。
あと、あれって語句もちょっと気になるな。
なんだろう?
「うわ……強いと聞いてはいたが、ここまでか。だが俺だってな、ここまでのLVに来たんだよ。簡単に勝てると思うなよ!」
俺のLVも公開されて、驚き交じりの反応が出る。
知られてはいるようだけど、LVとかの具体的な強さは知られていないみたいだ。
それもそのうち知られるのかもな。
「まあ、俺もそう思う。俺だってこの勝負で負ける可能性は背負っているからな、それでも俺は負けない」
俺の言葉の後に動きが出る。
先に仕掛けてきたのは相手の方。
石が6つ投げられるが、俺に当てるわけではなく、同時に地面に落下していく。
何なのかは分からない。
が、一応、攻撃をしてみよう。
飛び道具だってないわけじゃない、魔法以外にも。
俺は剣に魔力を込める。
魔法を唱えるときに魔力が注がれるので、その流れをイメージ。
何度か唱えているのでそれでうまくいった。
込めた剣には徐々に結晶ができて、大きくなる。
三つくらいは欲しいと念じたおかげか拳サイズの結晶が三つ出来た。
俺は一振りして、結晶を三つ飛ばす。
すると六つの石は結晶と接触前に赤い線が走り始めた。
なんだろうか、攻撃したのは不味い予感が。
六つの石は光があふれ始める。
接触前に石は煙を巻きたてて、爆発した。
さらには大きく鋭利な岩も石から三つ飛んできた。
爆発する気はした、赤い線がはしる感じだったし。
防がないとな。
地面に触れて粘着化、それを引っ張って粘着解除。
俺は地面の壁を作った、厚さは10CMくらいの。
アクアシールドよりもこっちの方がよさそうだ、物理的な攻撃みたいだし。
壁が岩を食い止めてくれた様だ。
俺に届くこともなくだ。
(照日、後ろからも攻撃が来る! 避けて!)
アムリスからの警告。
俺は壁から離れて、後ろを見るとその先には大きなモグラがいた。
ただのモグラではなく、モンスターだと分かる。
あいつが戸柱のパートナーってところか。
どおりで見えなかったわけだ。
そのモグラはこちらに岩を三つ投げつけてくる。
広範囲にという訳でなく、収束していて、何もしなければ三つ当たりそうだ。
だが、何とか避けられそうなので、俺は再度横に避ける。
岩が通り過ぎて行った後に、戸柱の姿が煙の外から現れる。
さらに、落ちていた石を三つ拾ってから投げた。
これも俺に当たらないようにで、地面に落ちる。
また、爆発させるようだな。
しかも、あの石を爆弾みたいにできるようだ。
スキルのおかげかな。
戸柱は次に持っていた槍を後ろに下げる。
さらに突きを放つと、その槍は三節に分かれて伸びていった。
あの槍、伸びるのか。
遠距離も攻撃できそうだし、近距離も対応できて、よさそうな武器だ。
ならばこっちはこうだ。
俺は手に平を向けて空気を粘着化、そして圧縮。
厄介なのは煙。
相手の姿が隠れるのは困る。
槍も避けて、俺は圧縮した空気を石の前に投げる。
石は赤い線が走って爆発寸前。
石が爆発して煙も出て、大きな岩が一つ飛んでくる。
で、その爆発には圧縮した空気も巻き込まれている。
なので、その空気は炸裂して、煙を四散させた。
これにて相手は煙で姿を隠せないという訳。
「くっ、煙が! だったらこれで! 風魔法、ウィンドサイス!」
戸柱は掌を俺にかざして、足元に魔法陣を出す。
そして、手のひらから三つの白く三日月上の刃が俺に飛んで行く。
更にとモグラはその場で岩を三つ投げつけてきた。
今度は俺に集中でなく、三つを別々の方向に。
魔法はかわせそうだし、岩は防げそうだ。
そう考えた俺は魔法を横に避けて、次に飛んできた岩の一つを剣で分断する。
岩は二つに落ちて、俺を通り過ぎる。
「俺からもそろそろ攻撃だ」
俺は剣に魔力を込める、先ほどよりも多い量を。
この結晶は魔力を込めた量で結晶も大きくなる。
そしてある程度イメージ通りに結晶は作られることもさっきので分かった。
ならばと、俺は魔力を込めるとともに長い槍をイメージ。
そして突きを戸柱に放つ。
生み出された結晶が伸びていき、相手に向かっていく。
伸びていく速さは粘着化した剣を伸ばすよりも早い。
「うわっ! く……!」
その鋭くなった結晶が戸柱の胴を貫く。
この剣は以前よりも面白くなっているな。
前も自在に出来てはいたが、粘着化していないことが特徴的だ。
硬いままなので結晶を投げつけて、ダメージを与えるということも出来そう。
それに結晶で大きな刃を作るということもだ。
そして鋭くなった結晶を粘着化させて、戸柱の手足を縛るようにまとわせる。
これにて戸柱は身動きが出来ない。
「降参するなら今の内だ。俺は次の攻撃に入るからな」
これにて俺のターンが回ってきそうだ。




