15 部下の選択
「ぐがあっ!」
青帯の男は攻撃を受けて道の上に落下した。
もう光にも包まれているから、攻撃することはないだろう。
ミュサも念のためと男から距離を置いているし、大丈夫だな。
「俺から言うことはこれだけだ」
「ぐっ……後悔するなよ……マズワインなんかよりも、うちの組織は……」
その言葉の途中に包まれた光は消えてしまう。
何を言おうとしたんだろうな。
きっと厄介だとか強いだとかいうつもりだったんだろうな。
それが事実だからと言って、俺は今更引かないけど。
「ミュサ」
「あ、はい……」
「もう日陰者である必要はないからな。俺がそばで光を照らしてやるから」
「あ、ありがとうございます」
ミュサからのお礼。
変なのに絡まれたけど、これで終わりだし後はこっちの用事を済ませよう。
「じゃあ、道草を食わされたけど、母さんの所へ向かおう」
俺はロングソードをアイテムボックスに戻して、母さんへと向かう道を歩み始める。
ミュサいわく片割れだって話だから、母さんに何かしていないといいな。
早くいった方がいいかもしれない。
「あ、あと一ついいですか」
ここでミュサの声がして、俺は反応する。
「なんだ?」
「私、考えたのですけど、天川さんの部下になりたいと思います」
俺の部下にか。
アムリスの部下ではないということは、戻りにくいって気持ちもあるのかな。
俺は構わないけど。
「俺の部下に? アムリスの部下じゃないのか、それとも一時的にってこと?」
「いえ、ずっと天川さんの部下になりたいと……」
まじか。
そこまで気に入られるなんて思わなかったな。
ミュサは頼りになるけど、ずっと俺の部下になる必要はないのにな。
それこそ、アムリスの部下ってだけでも十分なのに。
「まあ、俺は構わないし、気が変わってアムリスの部下になりたいって言うのも全然変わらないから」
「はい、分かりました。それと、私は天川さんに敬語で話すことにします。もう部下という立場の上に、このほうが落ち着きますので」
そういえば、時々敬語が混じっていたよな、ミュサの言葉は。
敬語の方がしっくりくるってことか。
アムリスはジト目でミュサの方を見ている。
不快って程ではない目だけど、喜ばしいって感じではなさそうだ。
「ミュサ、ずいぶんと照日に惚れこんじゃったわね……」
「あ、いえ。部下としての一線は超えないようにしますから」
「ふーん……そう……」
アムリスは腕を組んで納得の様子を見せる。
反論する様子もないし、一応は納得って感じのようだな。
と、突然、スマホが鳴り響く。
音からして俺のだ。
「はい、もしもし、天川だけど」
スマホを耳に近づけて、俺からの声を最初にかける。
出てきたのは佐波さんからだ。
「あ、天川君。話したいことがあるけど、時間は問題ない?」
「一応、今は問題ない。何かあったらすぐ切ると思うけど」
こっちは母さんの安全のためにで向かうくらいだ。
会話するくらいなら移動しながらでも構わないだろう。
「そう、実はね……三木島君、モンスターとの契約に成功して、冒険者になったって」
「え? 三木島が!? よく無事でいられたな……けがとかないのか?」
「三木島君ね。天川君の手助けをしたいって前々から冒険者になりたいってね、言ってたの」
「三木島が、なー。よくここまでやるようになったよな」
冒険者に成り立てだったら装備も不足気味だろうしな。
剣と防具を分けてやろうか、今日手に入ったものなら使えそうだし。
あと回復アイテムもだな、俺は使わなそうな感じだから。
でも、けがについては言わなかったのはちょっと気になるな。
少し間を開けてから佐波さんは話しかけてくる。
「あとね、ここだけの話だけど……これ、三木島君には話さないでね?」
「ん、構わないけど、どうかしたのか?」
「三木島君、モンスターとの契約で怪我しちゃったの、これは天川君に言わないでって口留めされていることだけど」
「なんだって? それじゃあ俺が行って直してやるよ。回復魔法だったらすぐ治せるはずだ」
けがについて言わなかったのはこれか。
母さんの方はミュサに任せれば大丈夫だし、俺が今から行けば大丈夫だろう。
「うん、そう言うと思った。でも、それじゃあ私が話したってことバレるでしょ? 悪いけど行っちゃだめなの」
「確かにそうだけど……俺はほっとけないよ」
「冒険者になったのだってね、天川君に迷惑をかけたくないからなのよ。自分が冒険者に成れれば、周りの人を危険から守れるし、なにより、天川君はダンジョンの攻略に専念できるでしょ?」
「そうだけど……三木島、そこまで考えていたのか……」
意外だな。
いじめていたころからは考えられない行動だよ。
ここまで改心できるものなんだな。
「私は三木島君がそこまで考えているってことをどうしても話したいから、隠れて話すけど。これで天川君が回復のために行ったら迷惑かけることになるから、行ってほしくはないの」
「そう来るか……分かった。三木島は俺が放置しても回復しそうなんだな?」
「あ、それは大丈夫。回復するポーションって言うもの、それは確保できたって言っているから」
「なら、俺からは行かない。が、もしも三木島の容態が危うかったら、すぐに連絡してくれ。俺のために命を落とすことなんてこっちは嫌だからな」
「うん、その時はね」
俺が放置していてもなんとかなる状態ではあるようだな。
もう、ここまでのことをやってくれれば、すでに三木島は俺の仲間なんだ。
そんな仲間の命を落とすことなんて見過ごせない。
俺をいじめていたころの三木島はいないからな。
「あと、何か変わったことはあるか? モンスターが出てきたとかそんな事でも構わないぞ」
「あ、モンスターは出てきてないけど、実は相談事があって、それも話しておきたいの」
「相談事か。構わないし、何だったら今でも」
「その相談事だけど、私はこれから手伝いの方があって手が離せなくて。明日、天川君の家に行ってもいい? 朝、学校に行く時間帯に向かうつもりだけど」
佐波さんも周りの住人の話とかの対応で迫られている感じみたいだな。
お父さんの方が地区のリーダーのようだし、対応しないといけないようだ。
逃げられるときはあるけど、逃げてばっかりも悪そうだもんな。
「俺の家にか。分かった、待っているよ」
「私からは以上だよ。それじゃあ、明日ね」
俺からの話は特にないので、これで話は終わりとなる。
佐波さんの方から連絡を切ってきた。
これで佐波さんが来ることになったわけだ。
相談事って何だろうな。
モンスターとダンジョン絡みの可能性はありそうだ。
今まで俺に相談ということもなかったわけだし。
まあ、明日のことは判断材料もない以上、考えても仕方ない。
とにかく母さんを迎えに行くことだ。
そして、俺とアムリスとミュサは母さんと何事もなく対面した。
母さんの方も特に問題もなく。
それから俺達は家に向かうのであった。
これにてヒロイン追加と第三章は終わります。
あと、三行あらすじもそのうち消去しようと思います。




