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14 ミュサのスカートの中と裏切り者への処罰

 ミュサは移動しつつ俺に話をしている。


「マズワインはアムリスの力を奪えた。それで私に新たな命を埋め込んでくれた、それで今の私がいる」


 ミュサの話。

 その部分はマズワインから聞いていた。


「そうだったよな。で、その力は今はマズワインの下ってところだよな?」


「いえ。マズワインにその力は扱いきれなかった。私を生み出してから、その力はどこかへ行ってしまったの」


 まさかの展開だ。

 今、マズワインに奪った力がないなんて。


「え? 力が勝手に出ていったのか!? 誰かに奪われたとかでなく?」


「ええ。竜をかたどって、その力はマズワインから抜けていったの」


 奪われたなら分かる。

 でも意思を持って逃げていくなんてな。


 マズワインと戦っていて、物に命を宿すそれらしい力は使ってなかったから、変だとは思っていたんだ。

 でも、そこまでは予想できなかったな。


「じゃあ、マズワインは取り戻そうと一生懸命だったろ? それで、俺の世界に来たと予想出来るな」


「はっきりとは言えないけど、おそらくそうみたいね。ただ、マズワインはその力を取り戻すというよりも、その力の現状を知りたがっていたようだけど」


 そういう目的があったのか。

 逃げた力を放置、というのもそれはそれでおかしいしな。


「少なくとも逃げて行った力に興味があったという訳だな、マズワインは。でも、そのマズワインの配下から抜けて、生きていくのに大丈夫なのか?」


「それでだけど、今まで私はマズワインから手で触れて維持できる命を貰っていたわ。それが今はないという状況」


「あ、それは不味いんじゃないか……これで放置のままだとミュサって生きていられないだろ?」


 その疑問を俺は向ける。

 するとミュサは笑みを浮かべて、こう答えた。


「いえ、方法はあるの」


「あ、あるんだな……でも、なんで笑顔なんだろうなー?」


 なんというか不安が俺の中に沸いてきた。

 まさか、生命力を奪ったようなことしないよね?


「天川さん、あなたから命を補給できれば、私は生きていける。部屋でやったときのように一日に一回キスして奪えれば十分なの」


 まじか。


 しかもミュサ、なんだか嬉しそうだね。

 少しくらいは嫌な顔しないのかい?

 知り合って間もない男とキスなんて、拒否感はないのかな?


「ねえ、照日。そんなことしてたの?」


 ここでアムリスからの質問が来る。

 表情はジト目で。


「ああ、それは不可抗力でね、アムリス。事実と言えば事実だけど」


 俺からの弁明。

 あれは敵としてやられたことだし、抵抗も出来なかったことなんだ。

 許してほしいことだ、本当に。


「ああ、そういえば、スカートの中も気にしていたわよね。というわけで……」


 そう言って、ミュサは立ち止まって驚きの行動に出る。

 なんと横から自分のスカートをめくってきたのだ。

 俺に中を見せるように。


「え!? いや、ミュサ! そんなこと頼んでいないから、今すぐ離して!」


 スカートの中の腰は下着で覆われてなかった。

 代わりに藍色の水着のようなレオタードが彼女の秘部と尻を覆っていた。


 ただ、体を覆う面積は横からだとかなり少ない。

 それも真横から見れば、下着をはいてないとまで思われるほどに。


「スカートの中はレオタードなの。だから中を見られても平気」


 平気というけどね、それでも十分いやらしいことなんだけど。

 結構、困る。

 羞恥心とかやっぱり感じないのかな、ミュサって。


 で、アムリスの方からは視線を感じる。

 それも痛く感じるほど鋭い。


「えっと、アムリス! これはだね……なんというか、その……」


 弁明の言葉。

 それでもアムリスはジト目のまま、さらに視線の鋭さを強める。

 事実だし、誤解だとも言えない。


「へえー、ミュサ、今度は色仕掛けで優勝候補に寝返るのかい?」


 すると、男の声がする。

 俺は周りを見渡して、アムリスは即座に俺の中に入る。


 敵襲の予感。

 でも、正直言うと、ナイスタイミングと言いたいけど。

 あのままだと、アムリスが機嫌を損ねたままだったし。


 で、見渡すと道の奥の電柱に男が一人、直立していた。

 男は白の胴着をまとうが、帯の色は青である。


「あなたは……イグルティル兄弟! ……の片割れの方!」


 ミュサの声。

 このタイミングでのミュサの知り合い。

 断定はできないが、敵と見ていいだろうな。


「俺は兄の方だ、ミュサ。まあ、お前は知っていることも少ないようだし、マズワイン自体もこちらとの関わりが少ないからな。俺達は監視のために来ただけだ」


 青色の帯の男が語る。

 ミュサは警戒を緩めない。


「そう……」


「でも、裏切り者を倒しておけば、俺の功績として残るわけだ。それに倒してしまっても組織には何ら問題もない」


「くっ……そう来るのね……」


 ミュサの顔が苦みに満ちる。

 よく分からないが、あの男はマズワインと似た組織の敵なのだろう。


「ミュサ! 日陰者だと言っていたようだが、日に当たるなんて無理なんだよ。裏切り者は一生日陰者だ!」


 青色の帯の男がそう言って飛び降り、黒色の帯の男も同時に飛び降りた。

 さらには男の背中から翼も生えてくる。

 モンスターと見てよさそうだ。


 ミュサは何も言えないようだ。

 反論の言葉も出る様子はない。

 自分でも日陰者でしかいられないって感じているのか。


 だったら、ここは俺が出るしかないな。

 俺はあんなこと言われちゃ黙っていられない。

 俺があの男の言葉に反論してやらないと。


「ミュサ、ここは俺があいつらに分からせてやる、下がっていろ」


「え!? あ、はい……」


 俺の指示にミュサはその通りに従う。

 俺はボックスの中から、ロングソードを取り出した。

 アムリスからもらった剣と同じ重さで、使いやすさは同じくらいだろう。


 男たちは道に着地せず、滑空して俺の元へと向かう。


「優勝候補の天川か! 邪魔すんなよ!」


 よく喋るな、青帯の男は。


「俺はな、ミュサに日に当たる資格があるって言ったんだ。だから俺はミュサに光を照らす」


「何言ってるんだよ! こいつは裏切ったんだ、関わっている組織からずっと付け回されるんだよ! それこそ、お前にだって危害が行く! お前の未来まで真っ暗になるほどだよ!」


 ミュサのことは今日会ったことでの話しか知らない。

 その部分はあの男の話に同意は出来る。


 それでも彼女を救うという気持ちに変わりはないんだ。

 光を照らすんだから、それをよく思わないやつらから危害を加えられるくらいの覚悟はある。

 それから守ってやれなきゃ、光を照らすことなんてできないだろ。


「だから何だよ。ミュサに光を照らし続けるんだよ、俺は。ミュサを日陰者に戻そうとするやつは絶対俺が倒して見せる」


「いいのか!? 俺の上はヴェルナ様だ。あのお方を敵に回すことだぞ!」


 なんだか新たな敵らしい語句が出てきたな。

 あっちがミュサを脅かすって言うなら、敵に回すしかないな。


 滑空しつつ青帯の男が黒い円を出して、槍を取り出す。

 突撃しながらの突き攻撃か。


「ミュサは光に当たりたいといった。俺はそれを成し遂げるだけだ。たとえどんな敵が来ようと、それは変わりない」


 俺は告げて青帯の男に突きを放つ。

 それも、粘着化で伸ばした剣を。


 それを踏まえてリーチは俺の方が有利の上に、動作も早い。

 青帯の男は突きを放つまでもなく、攻撃を受けた。


 突きを受けて、道の上に滑るように落下。

 そして、男は光に包まれ始める。

長くなりましたが、次で第三章は終わります。

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