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12 ダンジョンの報酬とシュンの手腕

マズワインが消えてから、しばし沈黙が流れた。


<やった! やった! ダンジョンクリアよ! すごいじゃない!>

<レベルアップ! レベルアップよ!>


アムリスからの音が脳内に聞こえてくる。

これでこのダンジョンはクリアという訳だな。


その後に倒れていたシュンが起き上がろうとしていた。


「いった……まあ、消えてないだけましか……」


シュンは後頭部を押さえて声を出す

こちらの方も問題なさそうで安心だ。


「シュン! 回復する必要はあるか?」


「ああ、それは大丈夫。マズワインも倒したようだけど、ミュサの方はどうなの?」


その問いに俺はミュサの方へと顔を向ける。

彼女は消えていないうえに、光に包まれている様子もない。


「ミュサの方なら大丈夫だ。今もここにいる」


「え? 嘘!? やられたと思ったけど、いるんだったら安心だよ」


シュンは中にある心配を息として吐き出した。

俺もスキルコピーをしたのは賭けだったし、不安もあった。

成功結果が分かるまで、同じく不安だからな。


そして、次はミュサの方だ。

こちらは自らの意思で少し動いたのを確認できた。


こっちの方が重傷だし、全回復までは出来てないはずだ。

コピーしたスキルが時間経過で消えることは確認済みなので、今回も消えている可能性がある。

おそらく回復魔法も使えるだろうし、手当はそれでやるつもりだ。


「ミュサ! 大丈夫か?」


今度はミュサの方へと歩む。


「ん……あ、私は元の世界に戻って……いないのですか?」


「ここは俺の世界だ。アムリスも、ついでにシュンもまだいるぞ」


「そうなんですか……」


ミュサから安心の表情が見える。

あんなことがあれば、死ぬかと思うよね。

俺の傷については自然治癒のおかげでほぼ回復している。


「それとマズワインも俺が撃破したし、あの男がリーダーだったからダンジョンはクリアした」


「じゃあ、私は……もう、マズワインの部下ではないこと……」


「マズワインがどうなっているかは分からないが、あの男の部下である必要はもう無い」


ミュサはそれを聞いて、驚きの顔を見せる。

が、その表情は悩みを抱えるものへとすぐに変わる。


「それじゃあ、私は……どうすれば?」


「アムリスの下に着けばいいじゃないか。彼女だってミュサを責めてないんだから遠慮なしでいい。どうしても気が引けるって言うなら、最悪、俺の部下ということでもいいんだ」


少なくともマズワインの元へと戻る必要はないしな。

だったら一番収まりのいい場所はアムリスだろう。

それが悪いって言うなら、一時的に俺の下にいて、落ち着いたらアムリスのところだって構わない。


ここで、アムリスが俺の中から出てきて口を開く。


「私の下に着くって言うなら、全然かまわないからね? 何かする必要もないから、遠慮なしでいいわよ」


アムリスの言葉の後、少しミュサは考える様子を見せた。

考えた後、俺に目を向けて言葉を出そうとする。


「……分かりました。マズワインの下なんていく気はありませんが、ただ、もう少し……考えます。どうするかは」


「あの男のところに戻る気がないなら、俺はそれでいいよ。じゃあ、ここの用は済んだし、帰るとするか」


どうするかは考えるということは、もしかすると、元居た世界へ帰るということか。

反省のために自粛したいという考えなのかもしれない。

どうやって帰るかは分からないが、何か手段でもあるのかもな。


辺りを見渡すと、シュンがどこかへ行っていることが分かる。

どこへ行くのかもあの時言っていないから、俺はさらに見渡した。

次にシュンの声が聞こえたのは、奥の部屋からだ。

マスワインが移動してきた通路の奥から。


「ちょっと、みんな! 奥の部屋で掘り出し物があったよ」


シュンからの呼びかける声。


「ミュサ、そこで少し休んでいるか?」


「あ、私は歩ける。傷は治っていないから、ゆっくりだけど……」


「そっか。なら、俺はシュンの元へ行くから背負っていくぞ。後、すぐに回復させたいけど、今は自然治癒のスキルを移しておく。シュンの方も待たせるのは良くないからな」


「え? あ、その、ありがとう……」


ミュサからの礼を聞いて、俺は彼女を背負う。


今はミュサだけにしておくのも気が引ける。

アムリスに任せるのもそれはそれで悪いこと。

だったら、俺が背負っていくのが最適解の行動だろう。


背負ってから、自然治癒をミュサにコピーして、俺とアムリスは通路へと移動していった。

移動して別のフロアへと着くと、先のフロアと同じ色で区切られていた。

だが、以前と違うところはテーブルやグラスなどの食器が部屋の隅にはおいてあったことか。


ここでワインをよく飲んでいたのだろう、マズワインは。


そのフロアにシュンはしゃがんでいて、その下には大きな宝箱が開いてあった。

しかし、シュンは良く宝箱を見つけてくるな。


「マズワインの隠し財産があったよー。貰っちゃいましょうぜ」


俺はミュサを丁寧に下すと、彼女はよろけながらも立つ。

そこで、俺は宝箱の確認をする。


宝箱の中には綺麗で大きな石だか結晶だかよく分からないものがあって、さらにはガイアス石も何個かあった。

石からは白い光が漏れていて、周りを白色の光で照らすほど。

あと、ポーションや高級そうな剣や防具も収まっていたのだ。


「ダンジョンの宝なのかもな。まあ、貰っておくかせっかくだし」


「綺麗な石はよくわかんないけど、所属しているギルドなら分かるんじゃないかな? あと、そうそう。報酬はこれだけじゃないんだよなー。見て見て、これを」


シュンは服のポケットの中から、石と何かのパーツを取り出す。

石は銀色に近く、パーツはよく分からないが、指輪のように付けられそうなことは分かる。


「ん? それはどこで手に入れたんだ?」


「石はケットシーから、パーツはマズワインからパクった」


「え!? お前そんなことまで出来たのかよ!」


「ふふん。あんなんでもただで倒される僕じゃないんだよ。天川くん」


ケットシーからパクったのはまだ分かるけど、マズワインとの接触って怒りで突っ込んだ時だったよな。

あの隙に盗むとは手癖の悪い奴だ。

本当に地味にすごいやつだよ、シュンは。


「照日、宝箱の綺麗な石は分からないけど、シュンの持っているのは契約石よ」


アムリスからの解説。


「契約石? 俺はアムリスと契約しているし、もしかして必要ないものか?」


「いえ、モンスターのパートナーを他にも増やしたいときにこの石が必要なのよ。これがあれば、シュンやミュサとも契約可能よ」


「ほー、これで戦力が増えるな。で、他にも契約するモンスター増えるとどうなるんだ?」


「この石で契約するとね、離れていても呼び出せるのよ。ただ、一日に一体だけって制約はあるけど、契約自体はこの石があれば何体でも契約できるわよ」


確かにシュンやミュサを呼び出せるのは便利だ。

ミュサは戦闘で、シュンは戦闘以外のことで頼れそうだし。

二人のできることは今日で把握しているから、それが遠くでも呼び出せるのは大きい。


「なるほどな、シュン。お手柄だ」


「このパーツも分からないけど、不思議な力があるわよ。ガンワークのところで見せれば、何かわかるかもしれないわ」


「だな。家に帰ったら、ちょっと見せてみるか」


俺は帰ってからのやることを決めた。


マズワインは召喚らしきこともしているから、パーツも呼び出すことへ良い影響があるのかもな。

あと、綺麗な石の方もガンワークへ見せればなんか分かるかもだ。


こうして、俺達はこのダンジョンでの戦闘を終えて、帰ることになった。




ちなみに今回の獲得したアイテムはこんな感じだ。


マズワイン戦の宝箱


光あふれる石

ガイアス石 *5

銀色の契約石

指輪のようなパーツ

ポーション *3

エマージェンシーポーション *1

シールドソード

傭兵の胸当て


ニックス戦の宝箱


ガイアス石 *12

天界の羽 *8

守護の紋章 *10

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