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11 マズワインとの決着

 アムリスとマズワインが会話をしつつ、俺はあの男への攻撃を試みる最中。

 しかし、ジャバウォックが邪魔をする上に、その戦闘は状況が動かずだ。


 俺はらちが明かないと、一旦、ジャバウォックへと粘着化の空気を飛ばす。

 狙いは翼と胴体のつなぎ目。

 粘着化した空気はそこに当たったが、それで飛ぶのに支障は出てはいない。


 跳ぶ力を削ごうと思っての行動だが、これでは効果が薄そうだ。

 斬撃も尾への感触を見るに、他の部分もダメージは期待できそうにないか。


 そんな中、マズワインはワインを飲みつつ、口を開く。


「ええ、可愛がっていた人形はあなたのことを一番知っていた。良くする行動も、癖も、どういうことを言えばあなたが素直に従うかも。それで命を与えて、聞きだしましたよ」


 マズワインからの語り。

 話すことはミュサが仮の命を与えられたときのこと。


「可愛がっていた人形……たしか、人形が動いてどこかに連れて行ったっけか」


 アムリスは聞いていて、視線をそらしていた。

 過去のことを思い出して懐かしむような、そんな表情。


「そうです、その時に奪いました。私が出来たのも仮の命、あなたの生み出したシュン君に比べれば、お粗末と言われる程ですがね。人形に意思を持たせて少し動かすくらいは出来ました」


「で、でも、ミュサの動きをあなたが強制させたってことは?」


「それですがね。もっと素晴らしい命が欲しいかとあの時のミュサに聞いてみましたら、悩んだ後に私の指示に従ってくれました。ミュサの裏切りはそれからですね。そして日陰者としての人生も」


「ミュサはその時に……」


 アムリスは残念の色を顔からにじませる。


 裏切ったとミュサが語ったのもそれなのだろう。

 ミュサが幼少期にマズワインが力を奪う機会を作った、さらに立派な命を与える事との引き換えに。


 マズワインは視線を別の方に向ける。

 その視線はミュサが倒れている方向。


「まあ、彼女はもうこれですし、例え生きていようと、どうしようとも思いませんがね。しかし、裏切り者は再び裏切りますよ。日陰者は日陰でしか生きられない」


「……」


 俺とアムリスがジャバウォックの六本の尾を回避する。

 だが、マズワインの言葉に彼女は無言であった。


「ミュサが生きていてあなたに着くとしましょう。彼女は裏切りますし、ずっと日陰者なのです。たとえ、彼女が日に当たりたいと言っても」


 マズワインは口をにやつかせて語り、ワインも再びメイドに注いでもらっていた。


 ここで、アムリスからの視線が俺に向けられる。


「ねえ、照日」


「大体予想が出来る。こっからは俺が言った方がいいか?」


「お願い、あのマズワインに言って」


 アムリスからの言いたいことを俺の口から言う。

 視線をマズワインに据えて。


「おい、マズワイン、俺はまだミュサを救うつもりだぞ」


「そうですか。彼女はもう倒れている……そういえば、光に包まれていませんね? どうしたことか?」


 俺のやったこと、成功みたいだな。

 ミュサごと貫かれたあの時、スキルコピーを試したが、それは成功と見える。

 本当に死ぬようなことがあれば、今頃は光に包まれているはずだから。


「魔法は無効化された。でも、俺はまだスキルが使えるんだよ。スキルコピーというやつがあるんだ」


「スキルコピー、そんなものが。しかし、それがどう役立つと?」


 マズワインの小さい驚き。


「俺は自然治癒があるんだよ。そのスキルを彼女にコピーさせた。試しにやったが、光に包まれてないようだし成功だろうな」


 ミュサにコピーしたスキルは自然治癒。

 スキルコピーはなにも敵に嫌なスキルを押し付けるための物ではない。

 こんな方法だって使用法の一つなのだ。


 アムリスがミュサの元へと飛んで行く。

 近づいて触ってから、俺に向けて頷く。

 生きているということだ。


「ほほう。やりますね。ですが、彼女はまだ日陰者として生きますよ。また裏切ってでも」


 マズワインの感心の言葉の後にジャバウォックは俺に向けて酸性のブレスを吐く。


「それでもだよ。俺はそれでもミュサに救いの光を照らす。裏切るって言うのならば、それよりも前に裏切る要素も消し飛ばしてやる」


 言葉と同時に俺は掌をブレスの前に出す。

 その掌で空気を粘着化させた。

 念じる形は円形の盾。


 その円形の盾にブレスは阻まれた。

 だが、それで終わりではない。

 このブレスだって、俺の武器となるんだ。


 遠隔の粘着化を酸性のブレスにする。

 粘着化した空気を経由して。


 その粘着化したブレスを逆に飛ばし返す。

 目標はジャバウォックに。

 目標はやばいと感じて避けようとするが、そのブレスは俺が操作して追わせる。


 煙と音、それとモンスターの悲鳴が響いた。


「な、ジャバウォックが……!」


 マズワインの驚き声。

 どうも効いているようだ、あの固い体表にも。

 ジャバウォックは悶えている。


 ならば、攻撃のチャンス。


 俺はマズワインの方へと見据えて駆けていく。

 アムリスも急いで俺の中へと入っていった。


「マズワイン、覚えておけ」


「はっ……ならば、ノームよ!」


 マズワインは指輪を光らせて、新たなモンスターを出す。

 そのモンスターは黒い三頭身のモンスター。


 俺は移動しつつ、それを横薙ぎにして払う。

 さらに追い打ちと、俺から出てきたアムリスはモンスターを蹴り飛ばしてどかせる。

 そして、再度俺の中へ。


「どんな日陰者だってな、光に照らされる資格はあるんだ! ミュサだって!」


「あ、ああぁ……」


 俺の刀はもうマズワインの射程範囲内。

 斬撃を放つと、命中。

 再度の斬撃も命中。


 そして、最後の斬撃も放つ。

 それも命中して、マズワインは後方へと倒れる。

 斬撃を三回受けて、相手は光に包まれ始めた。


 その光はゆっくりと包まれていき、全身を包むころになって消失し始めた。

 同時にジャバウォックもメイドも光に包まれて、消失しかけていた。


 少ししてからマズワインもジャバウォックもメイドの光も消えていったのだ。

 その消えるタイミングは同時であった。

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