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2 スキルの試運転とダンジョン

三行あらすじ

・オレンジの柄池さん、ありがとう

・照日、ステータスを見る

・佐波さん、ゴブリンに誘拐される

 公然と行われる人さらいに俺はすぐ反応した。

 痛みは感じるが、なんとかゴブリン二匹を追えるくらいに走れた。

 でも、このまま走っても、今の状況じゃ追いつけそうにない。


 だったら、あのスキル、試してみるか。


(え、どうやって?)


 こうやってさ。

 俺はゴブリン目がけて、掌で突きを放つ。

 当然あちらには当たらない。

 が、空気には当たる。


 空気を粘着化。


 空気は白い半透明の形で崩れた正方形へと変わる。

 その正方形はゴブリンの足元へと飛んで行った。


「ヒギョ!?」


 ゴブリンの足に命中し、当たったゴブリンは片足を固定された。


 粘着化スキル、初めて使ったけど、イメージ通りの使い勝手のようだ。

 粘着化したものは触れた者の自由を拘束する、あのゴブリンのように。

 そして、俺が触れた物は空気も粘着化できるということだ。


 おそらく、粘着化できるものは無機物だけだろう。

 物質粘着化ってスキルだし。


「追いついたぞ! そら!」


 俺は突きを放った。

 ゴブリンは突然足を拘束されている上、女性を両手で担ぐ状態。

 防御できずに、突きは命中。


 相手は攻撃を受けて、女性を担ぐ力が弱まる。

 光に包まれていき、消滅も間近のようだ。


 光に包まれたゴブリンは消滅し、女性が落下する。

 このままコンクリートに落下するのは痛い。

 なので、俺は落下する女性の背に手を差し入れた。


「あっ……」


 落下する女性の声。

 結果としては脚が道路にぶつかっただけだが、女性の背中は道路にぶつかることはなかった。

 両手を使いたかったけど、俺は片手に剣を持っていたから仕方ないよね。


「ごめん。できれば、足もぶつからないよう、すくえればよかったけど」


 さらわれた女性に謝る。

 あと、俺は戦闘もしたことないし、力に自身がある男じゃないんだ。

 女性は紺色の上下ジャージで、三つ網の髪型をしていた。


 周りを見ると、いつの間にかゴブリンはいなくなっていた。

 片方が倒されて、逃げ足の速度を加速させたか。


「いえ、こうして助けてくれただけで……もしかして、同じ高校なのですか?」


「俺は真希勢(まきせ)高校の生徒だけど、もしかして、君も?」


「はい、私もその高校の生徒で……それと、さらわれた子も同じ高校で、佐波って友人なんです」


 やはり、片方のさらわれた子は佐波さんで間違いない。

 二人で一緒にいたところをさらわれたってところか。

 こちらも急いで助けないと、だな。


「でも、どこへ向かったか見失ったからな。倒したときにはすでにいなかったくらいに足早かったから」


「それなら、近くのダンジョンへ急がないとってあの緑色の生物が言っていましたから、おそらくそこかと」


「ダンジョンね……そこに潜ったってことか」


 ダンジョンに行けば分かる、か。

 とにかく探さなきゃだな。

 少し探してだめなら、サキュバスの女性に空から探してもらうか。


「本当にありがとうございます。何もできないんですが、申し訳ありません」


「いや、礼には及ばないよ。後、俺も急いでいるんで、申し訳ないけど、一人で帰ってほしい」


 佐波さんを連れ戻さないといけないから、今は急ぎたい。

 本当は帰るまで護衛についてあげたいけど、ごめんね。


 俺は足早に道路を走る。

 ダンジョンなんてどこにあるか分からないが、とにかく足を動かさないと。

 と、そうしているうちに見つかったのだ。


「有ったよ、ダンジョン……すぐに見つかってよかった」


 ダンジョンの入り口付近で足を止め、見上げながら呟く。


 ダンジョンはデカかった。

 高さは二階建ての家が三個くらいか。

 見た目は土でできた直方体だけど、その上に三軒くらいの家がのっかってもいたのだ。

 奥までは見えなかったが、家が集まっているところから、ダンジョンが道路を突き上げるように出来たって分かる。


 俺の中からサキュバスの女性が出てきた。


「ここがダンジョンね。それと、自己紹介が遅れたけど、私、サキュバスのアムリスって言うの。よろしく」


「俺もしなきゃか。俺は天川照日。長い付き合いになりそうだし、こちらこそ、よろしく」


「色々話したいことはあるけど、私はとにかく、ゴブリンみたいなモンスターをたくさん倒してもらえれば、それでいいから。とりあえず、今はそれだけ分かって」


 お互いに簡素な自己紹介。

 色々とこっちも聞きたいが、まずは佐波さんの救出が優先だ。

 お互いに利害もほぼ一致しているので、サキュバスのアムリスが変な妨害をすることはないだろう。


 俺はダンジョンを再度見上げる。

 そして感じたことがあった。


「っていうか、こんなダンジョンいつの間にできてたんだよ!?」


「反応おっそ! さっきの地震で道路から突き上げてきたのよ!」


 こちらは急に奇想天外なことが起きて、割と処理が追い付かないんだ。

 あと、たまにリアクションが遅れているとも他人に言われるんで、それは悪いとも思っている。


「そうなんだ。まあ、このダンジョンに佐波さんはいるはずだし、とにかく急ごう!」


「ええ、あと、あなたの中に入るから」


「分かった。頼む」


 俺の肩へとアムリスが飛び込むと、彼女は俺の意識の中に入る。

 そして、ダンジョンの入り口へと走るのであった。

 まだ、不良からの暴力のダメージはあったが、慣れなのか、今では気にならなくなっていた。


 入口の傍には松明がかけられていて、周囲を照らす。

 現代からは松明の使用なんて考えられないものだ。

 ダンジョンに入ると、下へ続く階段があり、それを降りていく。


 すると、脳内にアムリスの声が響く。


<ゴブリンのダンジョン、潜入開始>


 契約していると、システムボイスみたいにアムリスの声が響くんだな。

 ゲームって感じでわくわくが掻き立てられる。


 下りた先の部屋は岩の壁で出来ていた。

 松前が広く部屋を照らし、一階建ての家も入る広さだ。


 そして、潜入して階段を下りたからには敵もいた。

 先ほどと同じ、ゴブリンが二匹。


「もう来た! 冒険者、もう来た!」


 片方のゴブリンは言葉をしゃべると、もう片方はこちらに威嚇の声を出す。

 喋れるのと、喋れないゴブリン、種族としては両方いるということか。

 更には戦闘態勢とこん棒を握って、こちらを見ている。


「まあ、こそこそ移動する余裕もないしな。さっさと戦闘を終わらせるか」


 こちらも剣を構えて、応戦の姿勢を見せる。

 部屋の広さは剣を無作為に回しても、壁に当たらない広さ。

 気兼ねなく暴れられるのは何よりだ。

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