5 特殊なダンジョン
<レベルアップ! レベルアップよ!>
アムリスのシステムボイスが寂しく響く。
いつものように言ってくれるおかげか、彼女から無理を感じる。
まあ、このシステムボイス自体、どんな時でも全く同じように言うから、録音したのを流す感じなんだよね。
今更思ったけど、部屋の窓を粘着してトラップ扱いにしてもよかったかもな。
でも、結果的にダメだったしな、今回は役に立たないかも。
「なんか騒がしいと思ったら、何だったの?」
突如の声、それはシュンのものだ。
彼は俺の上っている屋根の下、そのブロックで囲った細い一本道から声を出す。
今の姿は茶色の髪で制服、人間の姿だ。
「敵襲でな。部屋の外で戦っていたんだ」
「寝相が悪くて、天川君がつい部屋から飛んで行っちゃったのかと思ったよ。僕は」
「めちゃくちゃなこじつけだな。寝相が悪いって言いたかっただけか?」
俺はシュンに突っ込みを入れる。
まあ、ここで話していてもあれだから、俺も下に降りるか。
俺は飛び降りて、シュンの元へと着地した。
着地の衝撃もあったが、痛いとは感じなかった。
表情は平然としての行動。
でも、割と高くて不安もあったのは内緒にしておく。
「でさ、戦っていたようだけど、何かあったのかい?」
「ああ、それは俺から話す。アムリスからは話しづらいことがあるからな」
俺はグラーソとの戦闘のこと、ミュサの裏切りについて話した。
アムリスの友人の裏切りだ、彼女から話すのはつらい感じだしな。
俺は事情を話した。
その前に靴も履かずに外に出たので、靴を履いてから外で話す。
ちゃんと家の鍵も閉めているので、急な外出にも備えている。
「なるほど……そんなことを」
シュンは事情説明に納得を話した。
神妙な表情をしているが、驚きとか怒りはその表情には感じ取れない。
話したのは裏切りのこともだが、ミュサの不可解な行動についてもだ。
自然治癒についてはグラーソに話していなかった。
だからと言って、彼と俺の勝負は加勢することもなかった。
本当に俺を倒すつもりであれば、話しておくし二対一で来るべきだった。
それをしなかったのはどうしても不可解でしかない。
ミュサが俺のスキルを知らなかったというのであれば、その可能性もある。
ただ、粘着化についてと優勝候補になったことをグラーソは知っている。
情報源が彼女というのに、それを知らないのはおかしい気もする。
「で、ミュサのことについてはどう思う? シュン」
「そりゃ、裏切ったなんか思わないよ。事情があって敵に回っているとしか考えられないでしょ」
シュンの意見。
俺もその意見に同意だった。
これまでの行動、そして、俺に見せた悲しそうな表情と謝罪。
事情があるって言うのは想定できること。
それに俺はアムリスの友人が裏切るなんて思いたくないから。
「じゃあ、アムリス。君に意見を聞いておきたい。それと、今回はどうするかも」
心の中のアムリスに意見を求める。
彼女はしばらく沈黙していた。
(私も裏切ったなんて思わないし、今回のこと、裏がある気がするから探りたい。これでも私の少ない友人だもの)
「分かった。アムリスも裏切ったと思わないし、真相を探りたいって」
アムリスの意思を俺の言葉経由で伝えた。
シュンも頷き、俺達の方向性が定まる。
ミュサを追うという方向性に。
でも、どうするか?
彼女を追う手掛かりは今のところない。
さっき部屋を見たけど、部屋に裂け目らしいものは消えていたからな。
緑色で大きいものだったから、部屋を少し見れば分かるんだけど。
「あ、それでさ。探すのは僕に任せてくれる? これでも探すのは得意なんだ。目もいい方だし、気配を察知する力もあるよ」
お、それは助かるな。
ミュサを探しやすくなる。
でも、モンスターの形態は割とごついのに、補助の力充実しているな。
(そうよ、あんなんでもシュンは補助の方が得意だからね。気配察知のスキルもあれば、視覚強化のスキルもあるのよ)
そっか。
まあ、これで無暗に探すよりかは見つけやすそうだ。
すると、シュンはすぐに俺とは別の方を見る。
表情は少し険しく、その先は通路の奥。
俺もその奥を見ると、そこには何もなかった。
「あ、ちょっといい。今、何か見つけたんだよ。付いて来てほしいんだ」
早速の手掛かりか?
見つかるといいんだけど
シュンはその方向へと走り出し、俺もその後を追う。
通路を曲がってみると、何やら小さいものが奥の曲道へ行ったような気がした。
よく分かんなかったけど、あれに気づいたってのか、シュンは。
で、通路を曲がったり直進をして、しばらくついて行くとある場所にたどり着く。
一方通行の道で行き止まりの場所。
そこに人形が真ん中に立っていた。
この人形、もしや。
俺がそう思った時に横の電柱に隠れていく。
シュンと俺は追うと、そこには何もなかった。
「なんだ? どこへ行ったんだ?」
「ははー、こういうことか」
シュンの理解した言葉。
なんだ? こういうことって?
すると、シュンは壁の方に手を入れる。
壁に手が触れると、周りが波打って、手が侵入していく。
まるで、壁の奥に何かがあるようだ。
「え? 腕、大丈夫なのか?」
「ダンジョンってね。何も入口は穴だけじゃない。こういうふうに普通では見えない入り口になっていることもある。今回は結界が張られていて、一見、穴はないように見えているけど」
シュンの話では奥がダンジョンのようだ。
あと、普通に話しているから、手も大丈夫なんだろう。
隠しダンジョンって言うやつみたいだ。
「でもって、あの人形って……ミュサからの差し金ってやつだよな」
「そういうこと。少なくともこの先に進めば、真相は分かるはず」
やはりあの人形って、ミュサが操っていたということか。
こうやって丁寧なご案内をしてくれるのは嬉しいが、やはり不安はある。
罠という可能性は脳から警戒として出てくるんだよな。
とはいっても、入るしかないというのも事実。
このままではミュサのことも分からないまま。
ならば、行くしかないだろう。
「行こうか。その奥に」
俺は言葉と共にアイテムボックスにしまっていた剣を引っ張ってくる。
「だね。あ、僕は戦闘は得意でないから。任せるよ」
「そっか。分かった、俺が戦闘を引き受ける」
「僕に危機が迫ったら、颯爽と助けてくれることを願うよ。僕をヒロインのように扱ってくれると期待して、ね」
笑いつつ、シュンは語る。
また、しょうもない冗談を言うのか、シュンは。
「悪いがヒロイン扱いする気はないからな。お前は男だし」
俺はそう言って、奥の方へと進んでいく。
波打つ結界をくぐると、その先に広がっていたのは部屋。
暗いワインレッドの壁で覆われていて、綺麗な印象だが、不気味な印象も残している。
<ガムラーの隠れ家 潜入開始>
<難易度 不明>
名前:天川照日
種族:人間
LV:54
職業:優勝候補の冒険者
所属:なし
撃破ポイント:256 + 10ポイント
10ポイントはグラーソ撃破分
耐久力:7400
魔法力:5200
攻撃力:3400
防御力:3000
機動力:3000
技術力:5400
魔法威力:3200
スキル、魔法レベルアップ欄
変化のあったもののみ記載
フレイムショット:LV6
粘着圧縮:LV4
粘着化操作高速化:LV4
(回収用)
フレイムサークル:LV4
アクアシールド:LV6
スキル、魔法欄(新規獲得)
フレイムフォール:LV1




