3 ミュサという女性
家への帰路を俺達はゆっくり歩む。
組は二つに分かれていて、アムリスとシュンの組、そして俺とミュサの組だ。
俺はミュサという女性と隣り合って会話をしていた。
シュンとアムリスは仲良く会話しているから、間に入るのは良くないな。
せっかくの久しぶりの友人との会話だし。
「シュンは男の体だけど、中身は女の子。アムリスとも小さいころから仲良しだったわ」
ミュサからの解説。
シュンとの声は対照的でこちらには起伏がなく、声から感情の変動があまりない。
こういう人、クールな女性って言うんだろうな。
まあ、シュンがこうして女性と仲良くできるのは分かる。
あの男、中身が女の子で、女性の友達が多そうだし。
「あいつ、他の男にも俺と同じことやっているんじゃないのか?」
「ええ、そうよ」
肯定の言葉。
ああ、俺はあいつの常套手段に引っ掛かったわけか。
やっぱり恥ずかしいし、悔しい。
アムリスの言葉がなければずっと俺は騙されていただろうな。
そんぐらい、女性だと思わせる要素があのシュンにはあったから。
「そっか……」
「ところで、あなたの名前は天川照日でいいのよね?」
俺の名前を知っているってことは、優勝候補最有力に駆け上がった結果なんだろうな。
シュンも知っていたようだし、あっちの世界への影響はでかそうだ。
「ああ、そうだが」
「あなたは王様になって、どうするつもりなの?」
王様になって、か
このままいくと王様になりそうなんだよな。
王様になって何したいってイメージはない。
アムリスのことが優先だしな。
でも、おぼろげな物はあるにはある。
「王様になった後は考えてない。なりたいのかも分からないけど、俺は王様になるなら、みんなに光を照らしたいとは思う」
「光を……照らす」
「俺はアムリスのおかげで、日陰者から脱却できたんだ。他にもきっと光を照らしてもらいたい人はいるし、そんな人に光を照らしたいんだよ」
「そうなんだ……」
アムリスが俺にやったことを救いを待っている人達にもやりたい。
それは俺の中である。
王様になれるかは分からないけど、まずはアムリスの追う真相が先だ。
そんな会話をしつつ、俺達は家へと着いた。
会話と言ってもあんまり弾まなかったよ。
相手があんまりしゃべる様子がないし。
俺から話すこともそんなになかったってのもある。
俺達、計四人は家に着いた。
母さんからの許しも出ていて、シュンとミュサの滞在も問題がなかった。
で、今の母さんはホットケーキの材料が足りないということで、外出中。
そして、俺は一人部屋の中でベッドに横になっていた。
昨日のアムリスの件で疲れはもう取れていたよ。
でも、学校での対応は少し疲れた感じだし。
少し休憩という訳だ。
特にやるべきことはない。
ダンジョン捜索は少しゆっくりしてからでも大丈夫そうだ。
せっかくの客人だから、俺がせかせかやっても二人には申し訳ないってのもある。
佐波さんや幸前からの連絡もないし、周りが騒いでいる様子もないから。
ちょっと撃破ポイントを確認しておくか。
どれくらいになったか確認しておきたいし。
とここで、俺の部屋のドアからノックが聞こえる。
「入ってもいい?」
その声はミュサか。
「ああ、どうぞ」
その受け入れにミュサは部屋に入ってくる。
「その、少し……話したいことができたから」
「あ、うん。構わないけど」
「その、あなたは私たちが来て迷惑でない?」
「俺は大丈夫だよ、母さんに至っては俺が友達読んでくるなんて今までないから、かなり嬉しいってさ」
「それなら……うん、よかった。……どこに座ればいい?」
「ああ、俺のベッドの上でいい」
そう言って、俺は手招きする。
ミュサは俺のベッドに座る。
で、その座り方が少し気になった。
床に足を付けるわけでなく、俺のベッドの上に足の裏を付ける。
彼女は俺の方へと体を向けて、足を折りたたんでいた。
膝は真上へ向く、俗にいう体育座り、ミニスカートでだ。
そんなことをすると、太ももとか尻が俺に見えるわけなんだよ。
しかも下着は脚で隠していて、見てみたいという欲を掻き立てる。
彼女の肌は綺麗で、どうしても俺の目をくぎ付けにする。
こういうことして、彼女に迷惑だよな。
でも、こんなことめったにないせいか、目が足の方へと向いてしまう。
俺は情けない。
「その、もしも迷惑をかけてしまったら……あなたはどうする?」
「気にしなくていいよ。アムリスの友達なんだろ? 俺から騒ぎ立てることもないさ」
でも一つ迷惑があるとすれば、俺を惑わす座り方はやめてほしい。
足を少し動かして、下着が見えるようなじらし方もだ。
本当にこんなことして、割と羞恥心のない人なのかな、ミュサって。
「大きな迷惑でも?」
「まあ、そうだな。助けてほしいことがあったら、俺はシュンでもミュサでも助ける。救いの光が必要なら言ってくれ」
俺もここまで強くなって、いろいろできることが増えた。
だから、自信を持って助けるとも自然に言えるようになっていた。
ああ、あの時の俺から見れば、口に出るとは思えないな。
自分でも驚きだが。
「ありがとう……でも……」
礼を言ってミュサは顔を下げる。
前髪まで垂れ下がって、目の表情が見えない。
「どうかした? 気に障ったか?」
表情の変化に不安が生まれた。
俺もこんな風に話すのは慣れないからな。
ましてや女性との会話なんて今までなかった。
俺は彼女に近づいて、様子を探ろうとした。
が。
急にミュサは俺に手を伸ばしてきて、俺を押し倒す。
俺は抵抗できずに成すがままだった。
今の状況はミュサが四つん這いの姿勢。
俺は仰向けの姿勢。
「ごめんなさい、私を許して」
ミュサの懇願する声。
俺が彼女から初めて聞いた感情のこもった声であった。
直後に二人の唇が重なる。
このキスは分かる。
アムリスに受けた生命力を奪うものと。
そして、やばい状況だと。
*撃破ポイント
第二章 6時点での撃破223ポイント
以降の撃破した敵と加算ポイント
デンジャラスビー*5 5ポイント
ビートルウルフ 3ポイント
エルメイノ 20ポイント
ケットシー 5ポイント
223ポイント + 33ポイント
現時点での天川の撃破ポイント 256ポイント




