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2 モンスターの罠は甘く香る

 俺は戦う現場へと向かった

 アムリスの俺の中へとすぐさま入る。

 アイテムボックスから剣も出した。


 近づいて再確認したが、やはり、どっちもモンスター。

 で、思った。


 これはどっちに加勢すればいいのか?


 一見は鎧のモンスターが制服の子を守っているように見えるし。

 でも彼女はただ部外者なのかもしれないしな。


(照日、助けて。鎧のモンスターと後ろの子を!)


 了解した、アムリス。

 もしかして、鎧のモンスターと制服の子ってアムリスと関係ありそうか?


 で、猫は鎧のモンスターから一旦、距離を置く。

 そしてすぐに飛び掛かると体を丸めて、鎧の方に回転して突撃する。


 早い回転アタック。

 俺はその間に入って、攻撃を剣で防ぐ。


「ここは俺が何とかする! 後ろの彼女と離れてくれ」


 俺からの助太刀に、鎧は頷いて、制服の子と一緒に離れる。

 受け止めて思ったが、前の俺だったら押し切られていただろうな。

 でも、幸前を倒した今ではこっちが押し切れる。


 回転アタックを俺は剣の一振りで、押し返す。

 猫のモンスターは離れたところで、着地した。

 猫とは言うが、骨格は人間に近く、大きさは俺よりも少し大きいか。

 顔は猫なので、猫のモンスターと判断できる。


(あいつ、ケットシーよ。どこかのダンジョンから出てきたのかしら?)


 まあ、モンスターがいるってことは、ダンジョンありそうだよね。

 出所はダンジョンぐらいしか知らないし、俺。


 で、早速、ケットシーは俺に向かってくる。

 爪を立てて、振り下ろす攻撃だ。


 俺はそれに対して、避けつつ、剣の突きをお見舞いする。

 突きは相手に当たったが、体の脇に当たって、いまいちな感じ。

 とっさで相手が避けたからだ。


 なかなかの身体能力をお持ちだ、相手は。

 というわけで、片手で空気を粘着化させて、相手の片腕に付着化させる。


 相手は俺を通り過ぎて、着地後、再度こちらへと振り向く。


「そうだ、どれくらいのHPか確認したいし、両者HP公開!」


 その言葉で何の反応もない。

 あれ? 冒険者にしか効果ないやつなのか?

 モンスターでは今のところダメみたいだし、LVがもう少し上がってからまた試すか。


 その言葉の中で相手は再度突っ込んでくる。

 猫だけど、可愛くないやつだな。

 体格も人間に近いし、猫のコスプレした男性と言っても通じる感じだもん。


 相手の突撃に対して、俺がやるのは粘着化の操作。

 操作対象は相手に付着した空気。

 念じるは俺の方への引き込み。


 不意の引っ張られる力に相手は姿勢を崩す。

 こんなことが出来るのは遠隔物質粘着化スキルのおかげだ。

 これのおかげで粘着化したものが俺の手に触れないでも操作できる。


 で、引っ張られる相手に今度こそ突きをお見舞いする。

 防ぐことも出来ずに、相手の胴は剣で貫かれた。

 これで相手を倒したと思ったが、まだ光に包まれない。

 しかも相手の目はまだ敵意が灯っている。


 なかなかにやるね。

 で、相手は片手で俺に爪で突こうとするわけだ。

 それはダメだ。

 粘着化空気を付けた相手の腕で、それを防ぐ。


 結果、自分の爪攻撃は自分の爪で防いでしまう訳だ。

 俺は剣を引き抜き、今度は横の斬撃を繰り出す。

 防げなかった相手は今度こそ光に包まれた。


 ケットシーはコンクリートの道に落下して、包まれた光は消えていった。

 戦闘終了。


「終わったわけだが、さて……と」


 俺の目に見えたのはモンスターの仲間割れ。

 それも初めて見た光景。

 なんか事情があるのか、実は冒険者なのか?


「戦っちゃだめよ、あの子たちとは」


「ああ、話は聞けそうだし。戦わないよ」


 こっちに攻めてくる様子はないからな。

 戦う意思はないってことだろ。


 俺は剣を下げると、アムリスは俺の元から離れる。

 それから、ゆっくりと彼女と鎧のモンスターが歩み寄ってくる。


「アムちゃん、久しぶり!」


 鎧のモンスターの挨拶。


「シュンも! どうしてここに?」


 アムリスの疑問。

 話しぶりを見るにお互い仲は良さそうだ。

 鎧のモンスターってシュンって名前なのか。


「僕たちもこっちの世界に送られちゃってね。アムちゃんのサポートに来たわけだよ」


「ありがとう。助かるわ」


 あのシュンってモンスター、割と可愛い声をしている。

 結構ごつい外見なのに。


 そして俺に気になることがあった。

 ちょっと聞いてみよう。


「もしかしてさ、二人とも冒険者の組? 片方は人間のようだけど?」


 俺からの疑問。


「いやいや、違うんだよね。僕もモンスターだし、こっちのミュサもモンスターなんだ」


「え? 女性の方はどう見ても人間だけど?」


「よし来た! 僕の正体を見せるときが!」


 シュンは俺から一歩引いて得意げに話す。


 彼女は手で反対側の肩を叩く。

 すると、白い光に包まれる。

 光が消えると、そこには茶色の髪の女性が現れる。

 アムリスと同じ黒と白の服で、髪は肩までの長さ。


 その姿はどう見ても人間。

 まじか。


「な、モンスターが人間に」


「ミュサも僕と同じだよ。モンスターの姿もあるんだ」


 藍色に近い長い髪の制服の子は頷く。

 あの子もモンスターの姿があるってことか。

 あと、名前はミュサみたいだな。


 すると、シュンは近づいて俺の顔をじっと見ていた。

 直後、俺に抱きついてくる。


「な、何を……?」


「お・れ・いってやつだよ。助けた男性にはこれくらいしなきゃね」


 俺の胸にシュンは顔をうずめる。

 そして、ゆっくりと頬ずりをしていた。


 香りは女性の物。

 アムリスの香りとも似ている。


 やっぱり、こうやって感謝されるって悪くない。

 たぶん、俺の顔は変ににやついているだろうな。


「シュン、そんなことやってからかうのはやめなさい。あなた男でしょ?」


 アムリスからの制止言葉。

 焼きもちを焼く時期か。

 シュンもモンスターの姿から小さくなったし、女性としての魅力もある人だ。


 ……ん? 今、なんか変な言葉が聞こえたけど?

 男?

 そう思ってから、シュンは俺から距離を置く。


「ははは、天川く-ん。騙されちゃったね? 僕は男なんだよ。スカートの中まさぐって調べるのは、なしだぞー!」


 ま、まじでかよ。

 騙されたし、俺、男でいい気分を味わっていたという訳か。

 なんだか急に恥ずかしくなってきた。


「私のシャンプーまで使っているんでしょ。その髪の香りは分かるわよ」


「ごめんね。やっぱり、あのシャンプー使わないと調子狂うから、今もアイテムボックスに入れているよ」


 あのアムリスの香りも同じシャンプーを使っていたという訳か。

 なんだか、急に恥ずかしさが二倍増しになってきた。

 うわーって言葉が脳内に連呼している。


「で、どうしよっか、照日? 二人も家に連れてきて大丈夫なのかな?」


「……あ、そ、そうだな。母さんならきっと受け入れてくれるんじゃないかな?」


 アムリスからの問いかけに俺は慌てて、言葉を返す。

 でも、いい話題転換になったのでよしとするか。

 彼女、あの時の俺の顔をどう見ていたんだろ?

 とにかく、変なこと考えて無ければ、俺はそれでいいんだけど。


「じゃあ、ここで立ち話もあれだし、家に戻りましょ」


 アムリスからの一声。

 そこから、俺は家へと戻ることになる。

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