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0 幕間 板田秋根のダンジョン冒険

 ここはガムラーの隠れ家、そう言われるダンジョンだ。

 暗いワインレッドの壁でおおわれていて、そこそこいい暮らしをしていたように思わせる。


 俺はここで三頭身で兜をかぶったモンスターをスコップでなぎ倒した。

 このモンスターは緑色の体表ではなく黒い肌なので、きっとゴブリンではないだろう。


<レベルが上がったぞ。更なる一歩だ>


「よし、またレベルアップだ」


 俺はレベルアップの喜びを味わう。

 前回のダンジョンでは苦戦したがそれを乗り越えて、俺はこのダンジョンへとやってきた。

 今回のダンジョンは相方によれば特殊らしく、消えることなく何度もモンスターが復活するって話だ。


 でも、こっからモンスターは現れないって話なんだ。

 なんでも、入口には結界があって、普通のモンスターは出れないとか。

 それに難易度も現れない。


秋根(あきね)よ。私と契約したのだ。王への道は楽々と進むだろう」


 俺の相方、ジェインが俺をほめる。

 こいつはランプから出てくる黒色のターバンを巻いた魔人だ。

 姿は青い服を着た上半身だけで、下半身はランプから煙として出ている。

 実態は煙のモンスターだが、殴って物理攻撃も出来るなかなかに優秀な相方だ。


 ランプと言っても大きさは小さいもの。

 パソコンのマウスくらいで、腰にアクセサリーとして付けられるくらいだ。


「へへへ……俺も王に成れれば、こんな生活なんておさらばだぜ」


 俺の名前は板田(いただ)秋根(あきね)

 黒い髪に顔立ちは普通、服装はジャージにパーカーを羽織った姿。

 20代で、はっきり言えば、ニートだ。


 ニートと言われるが、これでも新卒で正社員として入れたんだぞ。

 まあ、入った会社は辞めてしまったがな。


 そのニート生活から脱却するために俺はこうして冒険者となったわけだ。

 ジェインという相方に会ってな。

 どうせこのままニート生活なんて先が知れているし、おふくろも俺に冷たくなってきた。

 だから、異世界の王に成ったって、周りは困ったりしねえ。


「さあ、秋根よ。お前の願いをかなえるために道を進もう。心配するな、お前は強く、私も強い」


「そうだな、この先どんなことがあろうと、絶対に王への道が」


 俺はジェインを相方にして、絶対に王に成れると確信がある。

 そいつはそれくらい強いからだ。


 自由に飛び回る魔法のじゅうたんで防御や相手を捕縛など細かく手が回る。

 ジェインは煙で自由に体を変化できる。

 それこそ、腕を伸ばしたり縮めたり、上半身も巨大化、縮小化も自在だ。


 そして、俺だってここのダンジョンに入ってからLVが10に到達。

 絶対早い方だ。

 このLVに達した奴はきっと俺くらいだろう。

 それくらい前回のダンジョンは修羅場だったんだよ。

 あんなダンジョン二度と潜りたくないくらいにな。


 で、次のフロアへと移動すると、黒い帽子をかぶった人が現れる。

 そいつは俺にこう言う訳だ。


「ハッハ。王へなりたいんだね?」


「誰だ?」


 俺は質問する。

 声からしてあの帽子をかぶった人は成人男性か。

 黒いスーツをまとうが、肩から先は切られており、代わりに腕を覆うのは白いシャツであった。

 あと、子供の大きさくらいの緑色のハサミも持っているな、あいつ。


 まあ、よく分からなかったらこう聞くよな。

 答えてくれないかもしれないけど、聞きたい意思だけは表したいよ。

 意外と答えてくれるかもしれないし。


「僕はレアなモンスターさ。僕を倒せばさらにレベルアップするよ? それも今の何倍ものレベルに……」


「何? だったら早速倒すまでだ! 覚悟!」


 さらにレベルアップをすれば、王への道は近づくしな。

 相手はどんな奴だか知らないが、俺だったら倒せる、間違いなく!


 という訳で、俺はさっそくスコップを振りかぶる。

 武器としての見た目はあれだけど、これでも便利なんだぞ。

 斬突攻撃、それに土で目くらましや落とし穴作成とかなり使い勝手はいいんだ。

 馬鹿にしたやつはこの武器で倒していったんだからな。


 相手は後ろのハサミをとると、持ち手を二つに分けて、二刀流の戦闘態勢に変える。

 ここで、相手の素顔が分かったんだが、見ただけなら成人男性だな。

 というか、普通に顔も整っているし。

 本当にモンスターなのか? こいつ。


 とにもかくにも、俺は相手に振り下ろしをお見舞いだ。


「お、LVは高そうだね?」


「俺のLVは10だ! 最もお前を倒すころにはさらに変わるがな」


 相手の疑問に俺は答える。

 更に相手はハサミで受ける。

 スコップとハサミが当たり、俺は力で押す。

 状況は俺の方が有利。


 その状況で相手は後方へ下がると、まず、先に魔法のじゅうたんが相手に向かっていく。

 相手の捕縛が目的だ。


 それに相手は刃の振り下しを空ぶらせる。

 何の目的があるかは分からないが、そのまま捕縛へ行こう。

 魔法のじゅうたんが包もうとする。


 すると、魔法のじゅうたんは弾かれて、地に落ちる。

 しかも、その先には緑色の切り口が出ていて、相手はいない。

 なんというか、空間を切って逃げたようだ、そんな風に思わせる。


 どこだ、どこへ行ったんだ?

 俺は周囲を見渡して、ジェインも見渡す。


「ハッハ! ここだよ、ここ!」


 相手が俺の後ろから聞こえる。


 俺は振り向く。

 相手は笑って、二つの刃を振り下ろそうとする。

 突然の背後への奇襲。

 防御なんてできなかった。


「うわっ!!」


 俺は斬撃を受けて、飛ばされる。

 そして、うつ伏せの姿勢になって、体勢を整えようとする。

 そう思って力を籠める。

 だが、それは出来なかった。


 なぜだ、なぜたちあがれない?


 力は感じるんだよ。

 でも、肩を固定された感じで、立ち上がれない。

 何かあったのかと肩を見るとだ。


 緑色の空間の切り口が俺の両肩にひとつづつ張り付いていた。

 俺を固定させるのは、それが原因だ。


「どう? これが僕の能力さ。めっちゃ便利だよ」


「お前……まさか俺と同じ冒険者なのか? 人間のように見えるし……」


 モンスターだというが、全然違う気がする。

 むしろ俺のように力を得た冒険者の方がまだ分かるよ。


 その上、状況がヤバイ。

 ジェインは俺を立たせようとしても全然立てる様子もない。

 かなり力込めているってのに駄目だ。


 まだ手はある。

 魔法のじゅうたんを動かせば。

 よし、そっちは動かせるな。

 俺はじゅうたんの動きを確認する。


 密かに相手に近寄らせる。

 距離はそう遠くない。

 十分な距離を詰めてから、魔法のじゅうたんを飛び掛からせる。


 しかし、その行動も予想出来ていたのか。

 相手はハサミの斬撃で落としてきた。

 しかも緑色の裂け目が発生していて、それにくぎを刺されたようにじゅうたんの自由も効かない。


「やだなあ? 僕、嘘は言ってないよ。これでもモンスターだし、倒せればぐーんとレベルアップは間違いないんだ。おっと、今、侵入者を歓迎しているところです。お騒がせしましたか?」


 男は後ろを見て、声を出す。

 男の後ろの通路から、別の白いシルクハットの男性が歩いてくる。

 白い燕尾服と青いマントで、貴族を思わせる風貌。


「構わない、グラーソ。様子を見に来ただけだ」


 シルクハットの男性が伝える。

 黒帽子の男の名前はグラーソって名前みたいだ。


「後はあれですか?」


「まず、ワインだ。そろそろ切れるから持ってきてほしい」


「分かりました。後で確保を」


 グラーソは俺をそっちのけで会話をする。


 隙が出来ている。

 ならばと、ジェインは黒い帽子の彼の方へと攻撃にいく。


 拳を握り締めての攻撃。

 しかし、それは相手の二連続の斬撃で、返り討ちにされる。

 ジェインは倒された。


 普通の斬撃であれば、ジェインは煙となって受け流せるはず。

 だが、それも無理だったようだ。

 斬撃の軌跡らしきものが、残るようなハサミだ。

 ただの斬撃をしないことは予想は出来た。


「くっ」


「ごめんね? 用事が出来たんで、今すぐ君を倒すことにするよ」


 俺を見下ろしての言葉。

 そしてハサミの切っ先を俺の背に向けている。


 もう対抗手段もない。

 相手はハサミを上に持ち上げた。

 鋭利な刃が光る。


 グラーソの刃は俺に向けて振り下ろされた。


「う、うわあ!!」


 俺の冒険者としての終わりはここで迎えたのだ。

いつも読んで頂き、ありがとうございます。

ブックマークや評価も大変嬉しいです。


それと今回の章から、ヒロインを増やしますので、お待ちください。

一応、前回のエルフもヒロインですが、大きく絡むのはもう少し後です。

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