9 ギルドに所属する
「ガンワークだ。これに所属する」
「んー……パパの所属するギルドじゃない」
「悪いな、アムリス。でも、俺が所属して一番いいギルドがここなんだよ」
俺は気を落としているアムリスに謝る。
何で選択したかって言うと、これが精製のギルドだからだ。
ポーション等のアイテムや特殊な武器を精製するギルドでな。
つまりは俺の粘着化の対象が増やせるギルドなんだ。
他のギルドよりも一番相性のいいところと俺は踏んで、ここに決めたのだ。
リーダーはガンデンっていう、見て分かる頑固じいさん。
他にもサキュバスの女性がギルドのリーダーってところもあったけど、やっぱりこっちの方がいい。
「そこを選択か。では、ステータスオープンしてから、ギルドに入ってくれ。やり方はオープンすればわかるはずだ」
幸前の解説。
にしては、ざっくりすぎるだろ。
オープンしただけで分かる気はしないぞ。
まあ、文句はやって見てわからなかったらだな。
で、オープンをする。
名前:天川照日
種族:人間
LV:52
職業:優勝候補の冒険者
所属:ギルド選択可能
ダンジョンにいたときはなかったよな、ギルド選択可能って。
ギルド選択するって念じれば、行けるか?
割と幸前のざっくり説明でもなんとかなる雰囲気。
<ギルドを選択するわよ。私のおすすめはエルドシールダーだけど、どうする?>
脳内に響くアムリスのボイス。
本当にごめんよ、俺そこじゃないんだよ、選択は。
で、おれはガンワークを選択すると念じた。
<そこで、本当にいいのね?>
ネットとかでの登録でよく見るワンクッション。
間違っての登録を防ぐようで、気が利くね。
うん、本当にいいんだ。
<じゃあ、あなたはこれからガンワーク所属よ。ギルドと協力して、優勝できるといいね!>
<所属連絡もギルドに行ったわよ。今から魔法の手紙が贈られるから>
これで正式に所属となったわけか。
魔法の手紙って何だろう?
そんなことを思っていると俺の目の前に青い光が現れる。
光が収束して薄い長方形に変わり、落下するそれを俺は掌にそれを収めた。
魔法の手紙はこれのようだ。
で、それが勝手に開くわけだよ。
その後に真上に光が射出され、長方形の薄い平面が俺の真上にでる。
大きさはワイドなテレビとおんなじだね。
異世界のテレビ電話っぽい。
直方体の画面にはどこかの光景が映し出されていたのだ。
「おお、こんなに早くにウチのギルドに所属か。ありがたいし、さらには優勝候補じゃねえか」
若そうな女の人の声。
でも、こっちに姿は見せないね。
その後に画面に若い女性の姿が映し出される。
その女性は木製の椅子にすわって、画面の中心に位置した。
「俺の声、聞えるのか?」
「ああ、聞こえるよ。心配するな。で、ウチのギルドに所属してくれて感謝だ。ありがとな」
俺からの質問に女性は答える。
よくみると彼女は作業着として、赤いつなぎをまとっていた。
作業中だったみたいで、なんかの工具を持っていて、髪は赤色だ。
「そちらの方が一番相性がいいと思ってね」
「嬉しいね。今、決定戦でウチのギルドに所属した第一号だ」
「早かったからな。決定戦が始まってから所属まで、一日みたいだし」
「まあ、ウチ人気ないってのもあるんだけど。あんたが入ったのはやっぱり嬉しい。ウチの名はガティークって覚えてくれ」
その後に女性から自己紹介をしてくれた。
女性の名前はガティークで、リーダーガンデンの孫娘。
聞くところによると、ガンワークには決定戦中で王になった者が所属したことはないという。
人気ないって話だけど、王の所属がないことも原因なのか。
正直言うと、リーダーも頑固で融通利かなそうだし、他のギルドのリーダーと違って、受け入れやすいってイメージ無いんだよな。
あ、スピースチームは一部の人に大きく受けると思うから除外。
自己紹介の後には所属特典として、アイテムもくれた。
魔法の小包で送ってくれたアイテムで、なんでも、アイテム精製辞典だって。
量産しやすい消耗品としてのアイテムをこれで作れると聞く。
例えばポーションやダガー、ちょっと頑張れば、一時強化アイテムも作れるのはいいね。
材料は良くダンジョンでとれるものを使えるようで、ありがたい。
精製辞典そのものでアイテムは作ってくれるから、俺に精製する知識はいらないってことも聞く。
辞典ってよりも加工機械だな、ここまで便利なのは嬉しいところ。
「ありがとう、辞典は大切に使うよ」
「おう。じゃあ、ガイアスの石があれば、さらにギルドも協力するよ。石との取引になるが、代わりにアイテムや武器、スキルや魔法なんかを渡すから。期待していてくれ」
「そっか、今、ガイアスの石は八個あるな」
「八個か、じゃあその中で取引できるものを提示するよ。待っていろ、てるやん」
ガティークは画面から外れた所へ移動した。
ガイアスの石ってここで使う訳か。
天界の羽もここで使えるのか? それとも別のギルドでなのか?
後で聞いてみよう。
というか、俺、てるやんって呼び名にされてる。
俺は別にいいけど、あの女性、自分よりも偉い人にもあんなことしないよな?
なんかしそうで不安だ。
で、画面に提示された文字があった。
・ストーンゴーレムの魔法書 石*4
・フレイムソード 石*4
・アースメイル 石*3
・エマージェンシーポーション 石*3
・ストーンエッジの魔法書 石*2
・ハイポーション 石*1
魔法書か。
良さげな物がある。
話を聞くにストーンエッジは攻撃用の土魔法。
鋭利な岩を発生させて、相手に一直線に向かわせる魔法。
ストーンゴーレムは岩を発生させて、ゴーレムを精製させるようだ。
そのゴーレムで攻撃や防御と言ったように使えるのだと。
これ、ガンワークのメンバーがよく使う魔法だってね。
ゴーレムのすごさも競い合ってるとか何とか。
「なあ、アムリス。魔法を覚えてみる気はないか?」
アムリスに話を振る。
「何を?」
「提示されている二つを」
「え? 私が? 魔法書は魔法を覚えられるけど、一回使ったら消えるわよ?」
アムリスの言うことも一理ある。
でも、俺は魔法を持っているし、使う機会は粘着化のおかげでほぼないからな。
ならば、アムリスにという訳だ。
幸いにも彼女は1Mくらい離れていても、今は粘着化のスキルを使えるわけだし。
「アムリスだって、俺の中に入ってなくても戦えるんだぞ。だったら、君が使った方がいい」
「……そうね。それもそうだわ。分かった、私がそれを使うから」
よし、アムリスの許可も得たわけだ。
ということで、俺はさっそく魔法書二つとの取引をすることにした。
取引と決まって、石と魔法書はすぐにトレードされたよ。
魔法の力で石が光に包まれると、すぐ魔法書が転移させられたんだよ。
魔法ってすごいな、本当に。
その魔法書を使って、アムリスに魔法を覚えさせた。
外の誰もいない場所で試しに使ってみると、魔法は話に聞いていた通りのことを行った。
関係ない人へ巻き添えは勘弁だしね。
一応、人目につかないようにもしたよ。
魔法遣っているのが人目にばれると、面倒かもしれないし。
でだ、使って見てわかったけど、ストーンエッジは目の前に岩を出現させる感じだ。
下から岩を出すってよりも、茶色の光が現れた後に土が光から出るってとこ。
上手く使えば防御としても利用できそうだ。
あと、ストーンゴーレムも発生はさっきの魔法と同じ感じ。
発生した後はごつごつした岩が人型の形に形成されて出てくる。
大きさは大体、子供くらいの大きさ。
ゴーレムとは言うけど、大きさがこれくらいであれば、形は特に定まってはいないようなんだ。
なので、アムリスは犬型のゴーレムというのも作ったぞ。
犬が好きなのかな?
後、俺もステータスは確認もした。
新しく獲得したスキルはないが、スキルと魔法のレベルはこんな感じで上がった。
ダンジョン解析:LV6
攻撃魔法広範囲化:LV4
フレイムサークル:LV3
ブラストボム:LV2
アクアバレット:LV7
フロストビーム:LV2
そして、俺はまた大きく動いた一日を終えようとしていた。