8 俺は優勝候補最有力に、それとギルドの話
俺はダンジョン攻略を済ませて家への道を歩む。
そうそう、穴の周りに人もいなくなっていたんで、襲ったりさらわれる心配もなさそうだ。
警戒しておいた甲斐があったもんだな。
学校はどうしたって?
そっちには行かずに直接帰宅だ。
ダンジョンから出てスマホを見ると、佐波さんからのメールが入っていたんだ。
そしたら、高校への登校はしばらく自由にするって話だと。
大学入試などのセンター試験も一月遅らせるって話だ。
ありがたい。
俺は高校三年生だし、勉強に力を入れないといけない時期だ。
志望大学はある程度決めてはいるけど、どうなることやら。
とりあえずは、ダンジョン攻略が優先だけどね。
モンスターをほっといたままなんて試験どころじゃないからな。
でも、俺ってさ、佐波さんのメールアドレスとか知らないんだけど、なんであっちから送れたんだろ?
今日の朝は家電の方に連絡があったから、不思議ではないけど。
そんな疑問の中、家への道を変えることになった。
家に帰ってのこと、早速驚くことがあった。
「やあ、天川君。お邪魔しているよ」
幸前がいたんだよ、リビングに。
しかもさわやかな顔して、いかにも前々からの友人と言わんばかりに。
会ったの今日が初めてだぞ。
しかも、フェリアもだ。
倒して帰還したんだろ?
「なんで、幸前がここにいるんだ?」
「それはだね。用件を先に言うと、君の配下に就きたいからだよ」
俺からの疑問に幸前は答えた。
で、細かい話になるが、冒険者が負けると力を失うか、勝った方の配下に就くか、そのどちらかを迫られる。
幸前は後者を選んだわけだ。
でも、配下を選んでも、勝った方の許可はないとダメだってね。
勝手に俺の許可なく配下になられてもね、俺は確かに困るしそこはそうだよね。
あと、俺のメリットもあって、配下が倒したモンスターは俺に加算されることになるってね。
極端な話、俺は戦わなくても王になれる可能性がある。
ホントに幸前は強かったしね。
俺はニートのままで幸前の力で決定戦優勝、なんてこともあり得そうだよ。
で、後は俺の意思決定待ちだと、幸前は。
王への道はともかく、幸前が俺の配下に加われば、心強いしな。
アムリスも聞いていて不満はない顔をしている。
そりゃ、フェリアも配下に加えるって意味だしな、彼女の元に。
馬鹿にしていた強い相手を自分の配下なんて、そうそうない好機だもん。
不満はないだろうよ。
「よし、俺はそれでいい。というわけで、これからもよろしく頼む」
「ああ、僕の力、存分に発揮させてもらおう、君のために」
こうして俺は幸前とフェリアという頼りになる味方を配下に付けた。
アムリスからの反論もなくだ。
流石にニートになる気はないからな。
俺は俺で危害を加えるモンスターを倒していきたいから。
で、ここで一つ気がかかりなことがあった。
「で、フェリアはここでなんか言っておいた方がいいんじゃ?」
フェリアに俺は声をかける。
アムリスにあんなことを言ってはな。
涼しい顔で配下になるってことは出来ないよな?
俺はあの件でやることはやったから、今の状況で苛立っていることはないけど。
「あ、その……」
という訳で、フェリアに謝罪を促進したわけだ。
どうするのかな?
沈黙の間が流れる。
ただ、あちらさん申し訳ない顔をしているようだし、俺は待っておこう。
やろうとしているときに水差すのは悪いもんな。
「言っておきたいこと、あるの?」
「その、私が悪かったわ。ごめんなさい、アムリス」
聞いてきたアムリスにフェリアは頭を下げる。
「……まあ、これ以上あなたに文句言っても仕方のないことだし、許してあげるわ」
「その、ありがと……」
フェリアからの礼。
よし、二人の間もこれでいい方向に向かうだろうね。
やっぱり、いがみ合い見せつけられるよりかは全然いいよ。
外野の俺も見ていて嫌になるから。
後な、密かに聞いた話もついでにあってな。
幸前が耳打ちで教えてくれたんだが、配下になる提案はフェリアからだってな。
なんだかんだ、謝りたい気持ちは家に行く前からあったみたいなんだよ。
その後、幸前は俺に今後のことを話した。
幸前もフェリアも母さんのホットケーキを食べて話をしていた。
彼も満足気味の顔だったし、フェリアもアムリスが食べたときと同じ反応をしていたぞ。
で、まず一つは俺の地位についてだ。
なんでも、俺は優勝候補最有力になるとの話だ。
話によれば、俺に負けるまで彼の組は撃破ポイントがダントツトップだったようだ。
まあ、開始一日目に200ポイントだもん。
俺だってあんなに稼げなかったし、彼以外に稼げる人はいないだろうよ。
トップだと分かったのはアムリスの世界から魔法の手紙が届いてらしいんで、それで分かったってね。
俺にも後ほど届くみたいだ。
しかし、よく幸前はあんなにポイントを稼げるもんだよな。
凄いダンジョンでも突入したのか。
「俺が優勝最有力候補ね……」
「まあ、現時点での、と付くが、それは間違いない」
幸前からの補足。
そういえば、ステータスにも優勝候補ってついていたはずだし。
決定戦の上位に来たことは間違いないな。
ということで、注目はされるわけなんだよな。
いい意味でも、悪い意味でも。
俺を狙って下剋上なんてこともあり得るんだよ、こういうときって。
お前を倒してトップになるんだ、って奴はきっとくる。
どこまで、俺のことを知っているかは知らないけど、いずれ来る相手だ。
「有名勢とも言えるか、これから起こる不都合は」
「だが、LVもかなり上がったということは間違いないだろ? だから、それでの恩恵もある、それがギルドの所属だ」
「ギルドの所属か? っていっても現実にはそんなのないだろ?」
「フェリアたちの世界のギルドだ。エルドシールダーのギルドも聞いているだろ? あそことかさ」
なるほどね、メイルオンさんのギルドの。
ギルドに所属するとそのギルドで使える魔法やスキル、その他アイテムや加護の授与もあり得るってことだ。
後で聞くと、厳密には所属よりも協力が近いって感じだ。
この大会でそこそこの強さの冒険者とモンスターをスカウトする意味もあって、ギルドが協力できる形だ。
大会を勝ち抜ければ、そいつは戦力としても優秀だろうしな。
ギルドが手を伸ばさないってのはもったいないだろう。
ちなみに、幸前の所属はマーヴェケアーズだとか。
医療をつかさどるギルドでなかなか強力そうだ。
何でも幸前の所属しているギルドは回復魔法も使える上に、戦闘も出来るという回復、攻撃をあわせるギルドだ。
「まあ、俺も所属するべきだろうな」
幸前が以前渡されたパンフレットがあって、俺も見る。
異世界からの贈り物だけど、日本語で書かれていたよ。
というか、モンスターとか日本語分かっているって、今更だけどすごいことじゃね?
まあ、ギルドへの所属しない手はないよな。
で、見ていて目についたギルドがある。
うわ、このスピースチームって言うのリーダーが脳みそだけだよ。
他は人間の姿なのに、手足は機械感漂うアームだ。
絶対、頭おかしいギルドだ。
「あ、照日。私のパパはエルドシールダーと親しいのよ。そっちなら融通利くかも」
アムリスからのおすすめはエルドシールダー。
こっちは護衛をつかさどるギルドで、こちらは守備に重みを置く感じだな。
シールダーって名前で分かりやすい。
そして、俺はパンフレットを見て考えていた。
「よし、決めた。俺の所属するギルドは……」
決めたギルドを口に出した。
お待たせしました。
ようやく、主人公が最強となります。