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エピローグ12

 ペンダントが破損し、ゼルティアは降参した。

 これでもう戦闘の続行もないだろう。


 アムリスは兄、ゼルティアに視線を向けていた。


「お兄ちゃん……」


 アムリスの思案の声。

 それに耳を貸さずにゼルティアは視線から目をそらしていた。

 悔しさは見て取れるが、その深くに何を思うのか。

 俺にはそれが分からないでいた。


「まあ、アムリスとゼルティアの問題は俺がどうこう言えるもんでもない。で、まだ放置できないものもあるからな」


「これで終わりってわけじゃないの?」


「そうだよ。マーガジオって魔王の力、まだ残っているならこのままにはできない」


「そうだけど……それはどうする?」


 アムリスの疑問。

 周りを見て見ると、欠片には黒い瘴気が漂っていた。

 欠片の色から見て、あれが壊れたペンダントに違いない。


 まずは一つ回収しようと、見える欠片へと粘着化した空気を放つ。

 どういうことになろうと、この欠片を野放しにはできない。


「俺からはどうもできないからな。という訳でここはガティークに話を通してみる」


 俺のとる対策はガティークへと頼むことだ。

 ガティークのことを念じると、指輪が光って声が響き始める。


「おう、てるやん。王様に成ったんだってな! これからもウチのガンワークをよろしくな」


「それで早速お世話になりたいんだが、話を聞いてくれないか?」


「なんだ?」


「ついさっき、マーガジオって魔王の封印されたペンダントを破壊したんだ。それで、そのペンダントの破片にまだ力が残っていて、どうしようかとガティークに相談をな」


 俺は別のペンダントの欠片に空気を飛ばして、さらに一つ回収する。


「なんだかすっごい話が飛び飛びだな! しかも、はしょられている部分がとんでもないことのように聞こえるんだけど!」


「まあ、そうだな。省いたけど、俺の記憶もなくなっているから、今では元通りになったけどな」


「おう! すっごい出来事はしょったな!」


「とりあえず現場に召喚するから。それを見て判断してほしいんだけど」


 俺はガティークの召喚を試みた。

 魔法陣が俺の足元に現れて、彼女は出てくる。


「おっし、到着と。おい! なんでゼルティアさんが拘束されているんだよ! 何があった!?」


「簡単に言うとマーガジオの力を強くさせようとした張本人だ。はしょったことは悪いけど、とにかくマーガジオのペンダントをなんとかできないかな?」


「やっぱはしょったこと、とんでもなさそうだな。でも、まずはペンダントの方か……」


 ガティークは俺が回収した欠片へと顔を近づけた。

 省略した部分も説明したい。

 しかし、すぐにでもマーガジオが復活するとなれば、その回収と対策も早めに打っておきたい。

 細かい説明は後回しにしたい理由はそれがあってだ。


 ガティークは見ている間に俺は欠片の回収も進めた。


「で、どうだ? ペンダントってこのまま放置したら、魔王の力が強まったりしないのか?」


「ああー……そうだな。今は分離して弱くなっているけど、そのままだときっと強くなるな。新しいペンダントを作って封印しないと」


「そっか。どうすればいいのか分からないんだけど、任せてしまってもいいか?」


「ああ、アタシがそこは何とかする。力自体は弱くなっているから、エルドシールダーに協力してもらえれば行けるはずだからな」


「ありがとう。一応、俺も封印には立ち会うつもりだから。不味いことが何があっても対応できるようにな」


 俺からの礼。

 これでマーガジオの力を抑えることには成功となる。

 悪用されることはひとまずないだろう。


 会話の中で、アムリスは疑問のまなざしで俺を見ていた。


「でも、このペンダントは封印したらどうするの? またヴェルナに持たせたとしても、それは彼女のためにならない気も……」


「そこは俺が一時預かる予定だ。ヴェルナにも了承を貰うつもりだけど」


「預かってどうするのよ?」


 このペンダント自体がヴェルナの冷遇の原因なのは分かっている。

 なので、俺が管理すれば彼女だって普通に迎えてくれるはずだ。

 亡き父の形見であろうと、それを拒みはしないと考えている。


 そして、このペンダントの魔王についてもやることは考えていた。


「このマーガジオって魔王と和解の話を進めようと思っている」


 この俺からの返答、アムリスは一瞬で驚きへと変わった。


「ええ!? 魔王とよ! そんなことが出来ると思っているの!?」


「まあ難しいし、不可能に近いかもな。でも、俺は光の当たらない人にも光を当てたいんだよ、それが魔王であってもな」


「照日……」


 光の当たらない人に光を当てる。

 それが俺が王に成った目的でもあるのだ。

 その意思は魔王に対しても曲げたくない。


「まずは魔王と話し合いをしてみたいとは考えているよ。ともかく、封印したままって言うのも俺は申し訳ないと感じてしまうからな」


「まあ、あなたらしいわね。その考え方」


「ゼルティアの件もそうだ。こんなことはしでかしたけど、アムリスと和解が理想だと思っているんだよ。俺から出来ることはほとんどないかもだけど、少しくらいは協力するからな」


「……そうね。このままの関係でいるのも嫌だから、ここからは私が頑張って解決してみる」


 アムリスからの理解。

 兄の処遇と魔王の和解、これについて反対意見もなかったので何よりだ。


 俺は周りに欠片がないことを見て、回収を終えたと確認する。


「さてと、まだまだやることはあるからな。周りの皆も怪我をしているし、ゼルティアの処遇もこのままではいけないから」


 俺はやることを思い浮かべて言葉にした。


 回収が終わったのなら、後は後始末だけだ。

 幸前達やレックスたちのケガも直したいし、協力してくれた皆にも礼を言いたい。

 それとゼルティアの身柄も放置するわけにいかないので、ここは国の人たちと相談だ。


 そして、俺達はゼルティアとの戦いの事後処理を進めるのであった。

これにてエピローグは終わりです。

次からは真のエピローグに移ります。

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