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エピローグ1

 俺はマーシナルさんと話してから闘技場を後にした。

 メイルオンさんいわくは国の重臣から指示があるまで待ってほしいということだ。


「これで王様になるわけか、俺も……」


 俺はアムリスと共に闘技場内の細い通路を歩んでいた。

 召喚したヴェルナとトルーハさんも一緒だ。


「元の世界には未練はないのか? 天川よ」


 歩みながら声をかけたのはヴェルナだ。


「未練らしいものはないな。せめて言うなら、母さんが週一くらいに会いに来てくれってことくらいか」


「それくらいか、ならば問題のないことだな。少しくらいは元の世界に行くことも可能だと聞く」


「そっか。なら安心だな」


 歩みながらの俺からの言葉。

 ヴェルナも王族だし、こちらの事情も少しは耳に入っているのも分かる。


「モヤシ炒めはさ、天川君の世界でごちそうになったものなんだよ。こっちの世界にもあるのかな」


 トルーハさんは人間の状態で歩きながら呟く。


「それはさすがに知らないですよ」


「無ければ、俺がもやしを栽培するしかないか……」


「周りの迷惑にならない程度なら勝手にやってください」


 俺は諦めのような投げやり言葉を返す。

 こうして食べたいと言っているので、人間のままで待っていればそのうち出てくるだろう。


 俺達が歩いていると闘技場ほどのスペースはないが、広い部屋へとたどり着く。

 そこから男性の声を聴こえた。


「やあ、天川照日君。見事な戦い様だったよ」


 その部屋に声をかけたのは男性、ゼルティアさんがいたのだった。


「ゼルティアさん。見ていたのですか?」


「ああ、王として任せられる戦ぶりだ」


「褒めてもらってありがたいです。けど、仲間に頼った戦いでしたけどね」


「いや、ルールとしてはありだ。それに期間中に頼れる仲間を従えるのも王としての力でもある」


 ゼルティアさんからのフォロー。

 マーシナルさんとの戦いはいまいちあれでよかったのかとも思っていたが、王族からの言葉はフォローとして力がある。


「そう言ってくれて、助かります」


 俺は礼を言うと、ゼルティアさんはヴェルナの方へと目を向けていた。


「さて、ヴェルナよ。私の元へ来てくれるか?」


「え……?」


 ゼルティアさんの言葉にヴェルナは戸惑いを見せた。


「来てくれないのか?」


「……」


「そういう対応をとるのであれば……」


「わ、分かりました! 向かいます!」


 ヴェルナの急な丁寧語。

 この雰囲気は妙な物でしかない。


「何だ? そのやり方は疑問が出るんだけど?」


「そうだ、こっちに来てくれるといい」


 その間にもヴェルナはゼルティアさんの元へと歩んでいくが、俺の声は聞く様子もない。


「さっきのやり方は無駄に圧力があるって聞いているんだけど?」


 俺の再度の問い。

 ゼルティアさんは答える様子もない。


 ただ、ゼルティアさんの手元にヴェルナが寄ってくると彼は口を開く。


「しかし、ダンジョンを出すのは中止になったが、こうも事が運ぶのは好都合だった。天川照日君」


「ん? 何を言って……?」


「こういうことだ」


 すると、ゼルティアさんは強引にヴェルナのペンダントを引きちぎる。

 更には同時に彼女を突き飛ばす。


「ヴェルナ!」


 俺は粘着化した空気をヴェルナに飛ばし、床と体がぶつかる前に空気を間に差し込む。

 彼女の体は空気をクッションとして、床との衝突は免れた。


「か、返してください! そのペンダントは父の形見ですから!」


 ヴェルナが倒れた姿勢のまま呟く中で、俺とアムリスは駆けよった。

 さっきから俺の分からないところで事が進み過ぎている。

 嫌な方向へと。


「そ、そうです! ヴェルナの父親の形見です。いくらそれがいわくつきの物であろうと、強引にはがすなんて」


 俺からの訴え。

 ヴェルナのペンダントは待遇を悪くする原因ではある。

 だからと言ってこんな強引なことあってはいけない。


「それに……私の国の生き残りを、カイエンとヒョウゲン達も人質にして、事を進めようなんて……!」


「え? 人質に!? どういうことなんだ? ヴェルナ」


 俺は思いもしなかった語句が出て驚く。

 まるでゼルティアさんが人質を取っているかのような言葉にしか聞こえない。


 そのゼルティアさんは俺の視線を向けられると、手を伸ばす。


「こういうことだ、天川照日君」


 ゼルティアさんの腕の下から黒い何かが急速に伸びる。

 とっさの判断で俺は暗黒操作化を念じて、ドーム状の影を作った。

 それは俺とアムリスとヴェルナを包み、黒い何かを弾く。


「分からないですよ……こんなことをして、まるで用済みだから消すといっているようで」


「そういう訳だよ。このペンダントとトルーハさえ近くにいれば」


 今度はゼルティアさんはペンダントをトルーハさんへと向ける。

 すると、急速にペンダントから引き込む力が出てきた。

 俺とアムリスとヴェルナは操作した影で耐えれたが、トルーハさんだけは耐えられず引っ張られる。


 だが、その引っ張る力もおかしい。

 俺達に加わる力もそうだが、それの何倍もの力をトルーハさんは受けているかのようだ。

 俺はトルーハさんへとさらに影を伸ばして、こちらへと引っ張ろうとする。


 俺の影は間に合わず、トルーハさんは引き込む力に負けて、足が浮く。

 結果、彼は床の踏ん張りを失って、ペンダントへと吸い込まれてしまった。


「あんりゃーー!!!」


 トルーハさんは声を上げて、ペンダントの中へと入ってしまった。

 その後に引き込む力も収まった。


「トルーハ! なぜ、なぜこんなことをするの……お兄ちゃん!」


 今まで起きたことにアムリスも困惑の声しか出ない。


「アムリス、急なことで分からないか。だが、もうここまで済んでしまえば、ネタばらしでもいいだろう」


 ゼルティアさんの言葉。

 俺は戦闘の予感を感じて、剣をアイテムボックスから出す。


「俺の中に入ってくれ、アムリス。もう分かるだろ? 戦わないといけないことは」


 俺の言葉にアムリスは少し渋ってから頷くと、中へと入っていく。

 彼女へと向けた視線を今度はゼルティアさんへと向けた。


「天川照日君、何故私がダンジョンが人さらい目的だと分かったか、分かるかい?」


「なぜって、ゼルティアさんは王族でしょう? 決定戦の運営に関わって、探る権利ももっているからじゃ」


「まあ、それは間違っていない。だが、私はそれだけではない、もっと上の権利があるのだ」


「上の権利……まさか、今回のダンジョンを目立つように出したのって……!」


 ここまでの言葉、行動で俺は理解をした。

 そしてゼルティアさんは手のカバーにペンダントをはめて、次の言葉を放つ。


「そうだ、私の指示だ。そして、ヴェルナや他のモンスターに人さらいを指示したのも。いわば今回の騒動の黒幕と言える」

エピローグとサブタイトルを付けましたが、嘘です。

本当はゼルティアの偽りというサブタイトルです。

もしかしたら、そのうち直すかもしれません。

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