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10 上位互換ではなかった

 荒峰は俺の上位互換でない、そう俺は告げる。

 その言葉に荒峰は動揺の色が顔に出てきた。


「ま、まだ……分からないでしょ? スキルがちょっとうまく使えたからって……」


「それもその通りだ。スキルがうまく使えれば勝てるわけでもないから、だから俺はこうする」


 俺は結晶の刃を荒峰に伸ばした。

 対して相手はその場で拳を後ろに引く。


「私に反射化ってスキルがあること、忘れてない!?」


「ああ、知っている。だからこの方法をやったんだよ」


 荒峰が拳を刃に向けたところで、俺は結晶の刃の伸びを止める。

 拳が空ぶったところで、再度拳を避けるように伸ばす。


「え? 止まって……きゃあ!」


「反射化って思ったより扱いが難しいんだ。タイミングが合わないとうまく跳ね返せないし、こうもずらされると反射できない」


 俺は結晶の刃を荒峰に巻き付けた。

 反射化のスキルの欠点は俺も知っていることだ。

 なので、タイミングをずらして反射化を防ぐことも出来た。


 伸ばした結晶へ更に魔力を注いで、傍にいた人魚に向けても枝のように結晶を伸ばす。

 人魚は避けようとするも、伸びる速さの方が上ですぐに捕まる。

 これで、水の防御は出来ない。

 最も、水で防御してきたらフロストビームで対処するつもりだが。


「うう……動けない……」


「悪いがこれで決めるぞ」


「でも、ダメージがあったって、私には自然治癒があるから……」


「そうだけど、それに頼り過ぎない方がいい。なにせ、後ろの存在に気付いてないみたいだから」


 俺からの注意をすると、荒峰は後ろを向く。

 そこには霊がいたのだから。

 かつて御銅が俺に憑りつかせた霊降下で出した霊だ。


「後ろ……きゃあ! お化けが! お化けがぁ!」


「俺はその霊に自然治癒を無効化されてな、疲れが出てきてないのか? 自然治癒は体力が落ちているとほとんど効果を発揮しないんだよ」


「そういえば……いつも以上に疲れているような、今までこれくらい戦ってもこんなに疲れなかったのに……」


「お前の自然治癒は発揮しないと思った方がいい。それじゃあ、決めるとするか」


 俺は荒峰と人魚をまとめて一つの拘束にして、真上に飛ばす。


「や、やめて! こんなことしたら……お化けさんもやめてぇ! 後ろで笑わないで! 怖いからぁ!」


「炎魔法、ブラストボム」


 俺は剣にブラストボムの効果を乗せて、さらに結晶に魔力を注ぐ。

 剣のイメージは剣で、軽量化もさせてだ。

 上にいる荒峰と人魚に伸ばした結晶の刃の斬撃を20回お見舞いする。


 斬撃が終わった後、荒峰は宙にとどまった。

 俺が斬撃とともに結晶を糸のように伸ばして、天井の壁に荒峰ごと固定させたのだ。

 その結晶全てにブラストボムの効果が乗っている。

 今の荒峰は蜘蛛の巣にかかった獲物のようだった。


「ああ……」


 荒峰から声が漏れた瞬間、大きな爆発がした。

 荒峰と人魚は爆発の煙から落下するように抜けていき、地面にぶつかる。

 高いところから地面に落ちたので、しばらくは動かないはずだ。


「そういえば、両者HP公開していなかったな、同じ耐久力だから要らなかったけど……しておいたほうがいいか」


 あれほどのダメージを与えたから俺の勝ちだと思いたい。

 もしも立ち上がるようであればやりようはあるが、決着が望ましい。

 その決着かの確認のために俺はスキルを発動させようと考えていた。


 ここで、荒峰でもアムリスでもない声が響く。

 メイルオンさんの声だ。


「その必要はありません。この様子は戦闘続行不能と判断しました」


「……ということは?」


 俺からの疑問にメイルオンさんはこちらへと手を伸ばす。


「勝者、天川照日」


 俺の勝利の宣言。


 瞬間、観客の声が沸き上がった。

 予想以上に凄い歓声だが、あまり聞かない方がいい気もする。

 まともに聞くと次の試合で歓声に飲まれそうな気もしてだ。


「よし、戦闘前は不味いと思ったが、何とかなったな」


 俺は緊張を解くように一息ついた。

 俺の上位互換と聞いて危ういと考えてはいたが、ふたを開けてみればこの結果だった。

 最初の危機感は取り越し苦労で何よりである。


 ふと俺が聞いたことある声を聴く。


「天川君! やったね! 楽に勝ててよかったよ!」


 佐波さんの声。


「天川さん! これくらいで苦戦もないのはさすがです!」


 そして三木島の声だ。

 二人は観客席から手を振って声をかけていた。


「ああ、ここにいたんだ二人とも」


「あ、うん。天川君が入ってきたときも声をかけたんだけど。反応なかったから集中してたみたいね」


「そうか、ごめん。あの時は観客の方に意識を向けてなかったから」


 俺は謝ると、佐波さんは特に怒る様子も見せない。


「次の戦闘は幸前君とだよね?」


「そうだ、あいつも強くなっているだろうけど、俺は負けない」


「頑張ってね。勝つと信じて応援するから」


「ああ、ありがとう」


 次の試合は幸前との再戦だ。

 彼は一度負けてチャンスを失い、再びのチャンスを得ている。

 きっと必死に勝ちを掴みに来るだろうから、俺もいつも以上に気を引き締めないといけない。


「俺も精一杯応援します! 勝つことだけに専念してください!」


 次に声をかけたのは三木島であった。


「三木島もありがとうな」


「大波先生も忙しくて来てないですけど、俺達の世界で試合を見て応援してるって話ですよ」


「そっか、先生も応援しているなら、なおのこと負けられないな」


 俺の言葉の後に頭上から光が注いできた。

 冒険者との戦いの後に振る回復の光だ。

 俺は傷は特にないが、癒しの効果を肌で感じる。


「試合の後の回復は済みましたので、次の試合まで待機室でお待ちください。荒峰三咲については私の方で対応します」


 メイルオンさんからの話に俺は頷く。


「分かりました。俺はそっちの方へと向かいます」


 その後に俺はこの場を後にした。

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