3 母さんとの話
家に戻ってから、俺は先にガティークさんに指輪を通して話をした。
剣の強化についてを。
今回、ガティークソード・サードタイプを使って、この力をベルガルドエンデスにうまく合成してもらいたいからだ。
結果を言うと、それは可能な上に重量を逆に上げることも可能という話だ。
更には今回の依頼の礼として装備品も作ってくれるというので、それも頼むことになる。
持っているだけでスキルが追加される装備品をだ。
他にもレックスの寿命を伸ばすこともトルーハさんに聞いた。
それも問題なくできると聞いたので、そちらも問題解決となる。
あとはそれをレックスと飼い主が受け入れるかどうかの問題だ。
それらの事が終わって俺は別のことで話をしていた。
母さんに王に成ることについての話を。
「王様にね……照日が……」
母さんがソファーに座って話を聞いていた。
今まで起きたことをすでにかいつまんで話している状況となる。
シュンやミュサ、トルーハもモンスターだということも、今までモンスターと戦っていたことも。
そして、王に成ればきっと家を出ていくだろうことも。
「その、急な上に情報量が多いことで申し訳ないけど……」
俺は申し訳ない表情で話す。
アムリスも俺の隣にいた。
「ああ、それはいいのよ。今回のことで現実にあり得ないことがたくさん起きたわけだから、今更驚くことでもないわ」
「それはそうだけど……」
「ともかく、お母さんにこの事を受け止めてほしいのでしょ? なら受け止めるしかないわ」
「本当に母さんは肝が据わっているよ。すごい慌てている様子なんて見ないし」
アムリスとの初対面も動じることはなかった。
これだけ動じない母は本当にすごい。
「それにしてもダンジョンが出てから、照日は大きく変わったわね。友達を作るのが苦手だと思っていたけど、友達どころか戦友を作っているもの。ミュサちゃんやシュンちゃん、トルーハちゃんも照日のために戦ってくれるのでしょ?」
「まあ、そうだな」
「そしていまでは別の世界の王様になるんだって話を聞いたものよ。何倍にも成長してくれたわよ、照日」
「そっか……ありがとう」
俺は素直に言葉を返した。
母さんに褒められたことになるけど、不思議となれないときの感情はない。
褒められるのにも少しは慣れてきたのか。
「お母さんはね、王様になることには意義はございません。なので、お母さんのことは遠慮なく頑張ってきてよ」
「ありがとう、母さん」
「でも、定期的にお母さんに顔は見せに来てね? 週一回でも月一回でも構わないから」
「ああ、そうするよ」
俺まで出て行けば、家に母さんを一人ということになる。
それはさすがにさみしいことになるので、顔出しはしたい。
「それと、アムリスちゃんにも私から一ついい?」
母さんはアムリスを見て、言葉をかける。
「あ、はい」
「どうなの? 照日のこと、好きなんじゃないの?」
母さんの質問。
それにアムリスは固まっていた。
「……え?」
「好きなんじゃないの? というかその反応は好きだと取られてもおかしくはないわよ」
「……あ、その、ちょっとどういうことか分かりませんけど? 私、反応らしい反応もしてないので」
「お母さんが聞いてから、顔がすごく赤くなっているのよ。好き以外の感情はありえないでしょ」
母さんの言葉の後に俺はアムリスの顔を見る。
確かに赤い。
「……!」
「それに照日とぴったりくっついているし」
「……あ、そ、その……!」
アムリスは顔をそらして言葉を返す。
言われてみればアムリスは俺にぴったりだ。
話し始める前は距離が開いていたはずなのに、いつの間にか接近していたのか。
「それに最近は良く照日の部屋に行っているわよね? サキュバスだし求めちゃうの?」
「えっと、それは……!」
「孫の顔を見るのもそれほど時間がかからない感じね、これなら」
「……! ま、孫って……!」
申し訳ないけど、俺に向けての質問ではないので、俺からはノータッチを貫きたい。
ここまで突っ込んだ話をするのは予想外だったし、変に墓穴を掘る反応もしたくはないので。
「後は照日の方からも話はなさそうだから、お母さんは外に行くわよ。この状況だから買い物に行けるかも分からないし、それの確認のために外へ行きたいのだけど」
母さんが俺へと話を振ってくる。
「俺からは他にないよ。モンスターももう出ないって話だから」
「あら、それなら安心ね。一応、シュンちゃんとトルーハちゃんもつれていくけどいい?」
「構わないよ。二人がいるなら安心だろう」
シュンもトルーハも今は外の様子を見ている最中。
ちなみにミュサはまだ寝ているようだ。
母さんは外出の用意を済ませて、玄関へと向かう。
「それじゃあね。そんなに時間はかからないと思うから」
そう言って母さんは出ていく。
今は俺とアムリスが一緒のソファーで座っている状況。
「お母さん、行っちゃったね……照日」
「ああ、後は俺もやることはないけど、なんかやること思い返してみるか」
俺は天井を見て呟く。
ダンジョンが目立つように出来たことは現状探れそうにはない。
もしも探るのであれば、それはアムリスの世界に行ってからの方がいいだろう。
あとはそうだ、早乙女から回収したスキルの確認もある。
これは少し休んでからでも構わないか。
大波先生のところでスキルを使ってみたい。
「私たち二人だけね」
「起きているのはな、ミュサは今寝ているようだし。昨日のは結構負担だったみたいだな」
「……照日」
「えっと、どうしたんだ?」
俺は気になって何かと聞いてみる。
アムリスはうつむいた様子で、声の調子もいつもと違う。
体調でも悪いのか。
「私、お母さんの孫作りたいから」
隣にいる俺の膝に手を置いてアムリスは声をかける。
体調が悪いことはないようだ。
でも、この状況はいいことではないのも分かる。
「……いきなりそんなことを……どうしたんだよ?」
「そのさ、私……照日が王様になってくれるのも嬉しいし、お母さんもああいうから」
「そう言ってくれるのはいいんだけどさ……」
「それに……昨日の夜は一緒に寝れなかったから……その、代わりに今……」
アムリスは意見を押し付けるように言葉を話す。
更には俺の首へと片手を回した。
「あのさ、一応ミュサがいるんだから……」
「いいでしょ? 話聞いていろいろ考えちゃうと……我慢したくなくて……」
更にアムリスは俺と向かい合う形で密着して座る。
黒い翼と尾も彼女から出ていた。
もう、することも予想がつく。
「だめだって……母さんもミュサもいつこっちに来るかわからないから……」
「やだ。いろいろあなたから奪いたいから……」
アムリスは俺の上から唇を奪ってくる。
赤味がかったオーラも出てき始めて俺は結局抵抗できなかった。
それから母さんが来るまで、俺はアムリスから生命力から何やら奪われるのであった。
異性隷属化については何とか死守した形で。




