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1 ダンジョン出現での周りの変化

 俺とアムリスが家に帰ってから、休んだ。

 そして、俺はアムリスと朝食を摂った。

 サキュバスだとも言っていたから、普通の食事ではないのかと思ったが、普通に俺と同じもの食べるんだな。


 ちなみに、アムリスの朝食は母さん特製のホットケーキ。

 大変気に入ったらしく、顔が幸せになってもいた。

 うちに来たお客さんもこれを食べて、口をそろえて好評というほどだ。

 俺もたまに食べているし、評価も頷ける。


 で、あんなダンジョンが出来てから、普通は高校も待機という方が自然だろう。


「なんで、俺はこんな日にも高校へと行くんだろうな……?」


 俺は不満を呟く。

 佐波さんから連絡が来て、高校にはできるだけ来てくれと言われたのだ。

 これを聞いて、驚いたよ。

 なんでも、もう高校には先生が来ているのだとか。


 サボっていいんじゃないか?

 正直、サボる理由がないんだ。

 周囲に他のダンジョンが出来たって情報も今のところないし。

 そんな中でいかないっていうのもおかしいし、周りに何か言われそうだったから。


 時刻は朝、そんな俺は制服姿、そして腕時計を付けて通学路を歩んでいく。

 朝のこの時間は冷える。

 流石に、いつもよりも登校している人は少ない。

 俺の隣には翼と尾を消したアムリスと制服姿の佐波さん、二人といっしょの通学だ。


「まあ、これからのことについての連絡もあるだろうし、一応、登校した方はいいと思うよ」


 佐波さんは移動しつつ、フォローの言葉を話す。


「俺達は日本人なのだと悪い意味で思い知らされたよ。今日のニュースを見て、本当に思った」


 俺は今日のニュースの感想を呟く。

 なんでも遠くにダンジョンが現れたって話だが、そのダンジョンの上に家を構えた人は普通に通勤したって話だ。

 ニュースで話題になっていたけど、彼は社会人らしく、会社からいつも通りに会社に来いと命令されたとか。

 テレビで会社への不満をぶちまけながら、彼は急いで行ったっても聞いた。


 なんかいろんな意味でひどい話だよ。

 会社もだけど、彼もサボっていいんじゃないのか。


 でもよく考えれば、俺も彼のことは笑えないか。

 こうして高校に行こうとしているわけだし。

 あと、昨日突入したダンジョンはいつの間にか消えていた。


「しかし、あんなことが起きても普通にできるのも意外だね。水とか電気も止まるかと思ってたよ」


「まあ、そこは助かったな。でも、それが逆に高校へと行けるようにしてしまったのか?」


 俺は笑いつつ話す。

 昨日のダンジョン周囲の人も電気と水は止まることなく使えるって話だ。

 電車も動いている。


「でも、不思議よね? こんなことが起こっても自衛隊は動く様子がないのも」


「あ、そういえば。なんだか自衛隊はだんまり決め込んでいるから、周りも不安が出ているってね」


 これも朝のニュースで聞いたこと。

 県庁のお偉いさんに対する不満が住人から出ているって。

 警察はさすがに対処できる許容を超えているし、そもそも自衛隊でも対処できるレベルかは分からないけど。


「私のお父さんもあんなことが起きて、偉い人に相談しに行っているのよ」


「佐波さんのお父さんも大変だな。周りからの不満と相談も来ているんじゃ?」


「あ、うん。それはお母さんが対応している。お母さんも私に高校へ逃げなさいっても言っていたから」


「それで佐波さんは高校へと向かう訳か」


 まあ、佐波さんも家にいれば、非難とかもそっちに行くからな。

 大人からの非難は彼女も大変だろうし。


「まあ、不満もあるけど、周りに元気な顔を見せるって意味でも、高校に行った方がいいと思うよ」


 佐波さんは再びフォローをする。

 彼女なら元気な顔を見せる利点はあるだろうな。

 まあ、俺にその利点はないと思うけど。

 俺の顔見て喜ぶ他の人は高校にいるか疑問だから。


 と、そんなことを考えているときにだ。

 地震があった。

 それも昨日の夜にあったような、突き上げる地震が。


「うわあ!」


「きゃあ!」


 俺と佐波さんの悲鳴。

 共に、姿勢を崩す。

 ちなみにアムリスはとっさに翼を生やし、浮いて対応した。


 地震から察するに、これはダンジョンの出現か。

 俺は周りを見渡す。

 近辺には大きな変化はない。


「ダンジョンが来たと思うけど……さて、どこか?」


 姿勢を整えた俺の疑問に対して、アムリスが口を開く。


「どうする? 私が飛んで、周囲を探ってくる?」


「いや、少し歩いて探した方がいいな。アムリスの正体がばれて悪い方向へ行くとよくない」


「ん、そう? じゃあ、歩いて探すことに」


 アムリスは俺の指示に理解を示した。

 彼女がモンスターだと分かって、非難の的になること、それが悪い方向。

 俺だってそんな扱われ方はつらいし、避けたいことだ。


 と、ここで、黒い髪の女子生徒が急いでこっちに向かってくる。

 制服は佐波さんと同じ、俺と同じ高校の生徒だ。

 花の付いたヘアバンドを身に付けて、寒がりなのか、女子生徒はマフラーをしていた。


「佐波ちゃん! どうしよう? なんだか近くの道路に大きな穴が出てきたんだけど?」


 息を付きながらの女子生徒の動揺の声。

 その息は走ってきたのか、荒い。


「え? 大きな穴?」


 佐波さんの疑問。

 彼女は父親の立場もあってか、友人も多く、顔も広い人だ。

 俺との扱われ方は真逆とも言っていい、人気者だ。

 こうやって頼られるのも頷ける。


「となったら、ダンジョンか。だったら、俺が行くよ」


 俺からの言葉。

 ダンジョンかは分からないけど、少なくとも俺が対処すべき出来事ではある。

 武器や回収した縄はアイテムボックスに入っているので、向かって準備を整えることは可能だ。


「あ、そうだけど……大丈夫なの? 天川君」


「それは行ってみなきゃわからないさ。でも、佐波さん、俺は無事に帰ってくるつもりだけどな」


「……分かった。高校に行ったときの話は私が聞いて、あとで天川君に報告するよ」


「ありがと、それは助かる」


 佐波さんの対応はありがたい。

 無事に帰ってくるのは母さんとの約束でもあるから、守るつもりだ。

 あと、高校に行く必要がなくなったのはちょっと嬉しかったりする。


「天川君。前と違って、頼りがい出ているよ」


「え、そう? 前が頼りないのは同意だけど」


 不意の佐波さんの言葉に俺は反応する。

 佐波さんは再び笑顔になった。


「頑張ってね! 私は出来ることを探して、出来るだけ協力するから」


「ありがとう。じゃあ、俺は穴へと行くから。穴の場所はどこかな?」


 向かうと言っても、穴はどこだ。

 穴の場所も分からないから、やみくもに動いてもダメだろう。


「それじゃあ、私が道案内するから。えっと、本当にあなたで大丈夫なの?」


 その俺の疑問に走ってきた女子生徒が答える。

 俺のことは知っているようだ。

 だからこその疑問だろうが、ならばこうしよう。


「まあな、これでも昨日、ダンジョンは攻略したんだよ」


 俺はアイテムボックスオープンを念じる。

 そして黒い穴からアムリスの剣を取り出した。


「え? 何、その穴……?」


 女子生徒の驚き顔。

 初見じゃこんな対応するよね。

 でも、戦闘できるってことはこれで分かるよね。


「深く説明はしない。でも、対抗する力はある事が分かればいいよ」


「えと、分かった。じゃあ、私についてきて」


 女子生徒は走っていき、俺とアムリスはその後について行く。

新章です。

ブックマークや評価して頂き、ありがとうございます。


この章から主人公のレベルをぐーんと上げる予定です。

お楽しみを

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