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【言音】(ゲノン)  作者: 墨
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6;知らず杜

■知らず杜


 A県K市のとある大企業の敷地には、鎮守の森に囲まれた小さな社がある。


 それだけならば商売繁盛や安全祈願のためだと考えられるが、妙なことに従業員はおろか役員でさえその場所への立ち入りが禁じられているというのだ。

 雇われている警備員の巡回すら禁止という徹底振りである。

 年初など行事のときは地域にある別の神社に参るのが通例で、さらには広い敷地の片隅にあるため、この社の存在自体を知らない社員も多く、何のために建てられたのか誰も知らない。


 夜勤の警備員のなかには、真夜中に森の奥に揺れる提灯の灯りを見たとか、真っ暗な森の中から呼ぶ声を聞いたという者もいるが、企業側の指示で報告や日報への記録は許されないそうだ。

 噂によれば、そうした怪異は決まって雨の晩に起こっているという。


 あなたの会社にも、そうした誰にも語られない場所があるかもしれない。

 いちど敷地内を散策してみてはいかがだろうか。


 できるなら雨のそぼ降る晩をお勧めする。


 ≪出典≫ 「隣の流行り神.net ご近所板」 より転載




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