4:手倣い
■手倣い
「肉サンドバッグ事件」というのをご存知だろうか。
以前ここでも取り上げたが、シーツを被せられて首吊りにされた遺体が、某社敷地内で見つかった事件である。
手足を釘で貫かれて吊るされた遺体の様子から、オカルト界隈では「肉サンドバッグ事件」と呼ばれているそうだ。
被害者の身元がわからず、くわえて情報が殆ど公開されなかったため、当時、あまり世間の関心を引かず、現在では地元でも忘れ去られている未解決事件であるが、近年になってそっくりな事件が起こった。
事件は前回と同じ会社の敷地内。
ただ、今回の事件は被害者の身元も犯人もわかっている、解決済み事件なのでご安心頂きたい。
被害者がこの会社に長年勤めていた役員だったので、ご記憶にあるかたもおられるかもしれない。
犯人のほうは、犯行の翌日に自首してスピード解決となったが、逮捕後の言動があまりに支離滅裂であり、自傷行為も見られたことから現在は精神病院に収容されている。
皮肉なことに、犯人は過去の事件を捜査した刑事であった。
精神病院に収容されたのち、ある雑誌記者の取材で動機を聞かれた彼は、「殺すために顔を描いた。 失敗した」と述べている。
事実、今回の事件では白いシーツに福笑いのような崩れた目鼻口が被害者の血液で書きなぐられていたそうだが、彼は何に失敗したのだろう。
顔を描くために殺した、ではないことをみると、いつか三度目の悲劇が起こるのかもしれない。
≪出典≫ 月刊「メガラニカ」6月号 著:波風 夜 より抜粋