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月のふる街  作者: 楠羽毛
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 一週間後──

「……もう行ってしまうんですか」

 名残惜しそうにそう言う草薙に、カラスは言った。

「最初からの約束だからな」

「お世話になりました」

 少女は、ぺこりと頭をさげて、そう言った。

「こちらこそ──街を滅ぼさずにすみました」

「まあ、半分、滅んだようなものだけどね」

 稗田がそう言って、ふふ、と笑う。

「でも、これでやりなおせるわ──ウナさん。あ、今はなんて呼べばいいの?」

「ウナでいいです」

 少女は──ウナは、そう言って、にっこりと笑った。

 彼女の体には、もう呪符は埋め込まれていない。

 いかなる運命も、彼女は背負っているわけではないのだ。

「そう。ウナさん。……頑張ってね」

「ええ。──それじゃ」

「さよなら。元気で」

「元気で!」

 ウナとカラスは、街を離れて歩き出した。

 それを見送る草薙と稗田の間に、小さな姿がひとつあった。


 あのときの少女。

 今は、名前を、月子といった。


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