伝えたかったんだ
ゲームに呑み込まれて。
テレビに呑み込まれて。
インターネットに呑み込まれて。
活字に呑み込まれて。
呑み込まれて。呑み込まれて。呑み込まれて。
いつしか、僕は、自分の中ばかりに、「言葉」を押し止めていたみたいだ。
「助けて」って、伝えられない。
「愛して」って、伝えられない。
「ごめんね」って、伝えられない。
いやな、いやなこ。
みにくいこ。
明るく、楽しく過ごした一日が終わって。
目を閉じて、浮かび上がるのは、伝えられなかった言葉達だ。
『信じてたのに』
『どうして?』
『伝えられるのは、貴女しか居ないのに』
『うそつき』
その言葉達の叫びに、僕はただ。
「ごめんね、ごめんね」
って、叫び続けていた。
愛して欲しかった。
信じて欲しかった。
傍に居て欲しかった。
本当はずっと、伝えたかった。
本当は、ずっと、誰かに伝えたかったんだ。
「頭がおかしいんじゃないか」
「変わってる」
「嘘つき」
「大嫌い」
「死んじまえ」
「お前なんて必要ない」
「役立たず」
「根暗」
「デブ」
沢山の、「言葉」が塊になって
僕の、喉を、胸を、頭を押さえつけて。
「呼吸」が、出来なくなって。
切り裂かれた心なんて、もう痛みも感じなくて。
「何で僕は生きているんだろう」なんて。
「何て役に立たない生き物だろう」なんて。
「醜い子」「汚い子」「役に立たない子」「駄目な子」「できない子」「死んでしまえばいい子」「おかしい子」
そんな言葉が、ずっと背中に貼り付いていたんだ。
「僕はできない子」
「役に立たない子」
「死んでしまえばいい子」
「駄目な子」
「汚い子」
「醜い子」
「おかしい子」
だから、消えてしまいたい、なんて。
苦しい、なんて。
目の前で微笑む貴方に、叫んだ。
叫んで、泣いて、喚いて、馬鹿みたいに笑った。
貴方も言うのかな。
「できない子」「役に立たない子」「死んでしまえばいい子」「駄目な子」「汚い子」「醜い子」「おかしい子」
また、あの真っ暗な沼の中に落ちなくちゃいけないのかな。
傷つけてしまったのかな。
嫌われてしまうのかな。
「いらない子」って、「役立たず」って、そう言われてしまうのかな。
そうしたら、僕は、どうすれば良いのかな。
役立たずで、できない子で、いらない子で、醜い僕は、どうすれば良いのかな。
「出来る子じゃないと、いけないんですか?」
なんて、貴方の声が聴こえて。
「必要な子じゃないと、いけないんですか?」
「役に立たなければ、いけないんですか?」
「綺麗な子じゃないと、いけないんですか?」
「あなたが生きていてくれるだけで、嬉しいと思うのは駄目ですか?」
そんな言葉は、言われたことが無かったから。
嬉しくて、温かくて、けれど、それ以上に戸惑って。
「出来なくても、役立たずでも、醜くても、貴方は「私」を見てくれるんですか?」
なんて、少し、意地の悪い質問をしても。
「出来なくても、役立たずでも、醜くても、貴女が、どれだけ「貴女」を嫌いでも」
「貴女が生きていてくれるだけで、僕は嬉しいんですよ」
ねぇ、先生。
出来なくても、役立たずでも、醜くても、それでも、貴方は、こんな醜い「私」を、「私」だと認めてくれたから。
ゆっくり頑張れば良いって、一緒に頑張ろうって、そう言ってくれたから。
いつかまた、貴方に逢えたら、私は貴方に伝えたいんだ。
「認めてくれて、ありがとう」って。
ずっとずっと、伝えたかったんだ。
此処にいる、ただの「僕」の言葉を。