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作者: なかじ

ある日、担任からクラスのみんなに友達が交通事故で死んだと知らされた。

みんなに動揺の声が広がった。中には、嘘だと笑う人もいた。私もその報告を信じられずにいた。だが、先生の目は真剣だった。

死んだと報告された人は、クラスでは人気でいつも明るい女子であった。彼女は高校入試の後期試験を控えていた。それなのにどうしてと、私は泣きながら訴えた。涙が止まらなかった。

彼女とは中学三年で初めて同じクラスになった。小学校の時から一緒というわけでもない。だが1年近く、クラスメートとして共に長い時間を過ごした。彼女のたくさんの顔を見てきた。怒っている顔、ふざけている顔、笑っている顔。だが、思い出そうとするとなぜだか笑った顔しか出てこなかった。そしてそれは、彼女の机と椅子に重なるように私の目の前に現れる。それを見ると、どうしても涙がながれてくる。とても辛くなる。

その夜、私は塾に行かずただ夜道を歩いていた。車が横切るたびに記憶が自然と再生され、苦しんだ。また泣いた。このなんとも言えない悲しみは私にはどうしようもできなかった。私には初めての体験だった。友達を失うというのは。身近な友達を失うことを受け入れられるわけがない。ましてや、長い時間を共に過ごした友達だ。

そんな思いをしながら歩いていたら、ひとり公園のベンチで座っている少年がいた。私の友達だ。私は彼のところに行き話かけようとした。だが彼の顔を見てやめようと思った。

彼は泣いてはいなかった。いや、泣けなかったのだろう。目がはれていた。もう、出る涙がないのだ。いつも真面目で笑顔な彼が、こんな顔をしたところは見たことがない。彼は、ようやく私に気づいた。だが、表情は変わらず悲しい顔をしていた。私は、彼の目から目をそらした。そしたらあることに気づいた。彼の手には、何かの薬が入った青いケースがあった。彼は、それを見ていた私にこう言った。楽にならない?瞬時に悟った。これは、違法ドラックだと。いつも真面目な彼がこのようなことをすることが信じられなかった。やめさせよう。心ではわかっていた。だが、気づくと私は彼が手にしていた薬を手にとっていた。すぐに開けようとはしなかった。だがその時、あの記憶がまた再生された。また泣いた。今度は涙が止まらなかった。拭っても、拭っても出てくる涙。本当に辛かった。すると私は、フタを開けて薬を手にとっていた。自然と口に運ばれる。口に入れた。飲み込もうとした。だがその瞬間、目の前が急に真っ白になった。

気がついたら、私は自分の部屋の布団で横たわっていた。そして、泣いていた。気づくまで数秒かかったが、今のは夢だと理解した。別に彼女のことが好きというわけではない。ただのクラスメートだ。友達だ。だがその友達を失った悲しみは、ここまで人を変えるものなのか。そう思うと恐ろしくなった。手が震える。

人は恐ろしく、周りの影響を受けやすい。それは、流行などの雰囲気や言葉だけではない。周りの悲しみまで、自分に影響する。それを今回実感した。今回の経験は少しきつかった。朝から体力の半分を消耗した気分だ。だが、一つだけ嬉しいことがあった。

それは、彼女が今生きているということだ。

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