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第十八話~依頼完了~


第十八話~依頼完了~



 街道沿いにある馬車が駐車出来る場所で初めて夜を明かしてから数日後、ルデア国の国境の町サデルへと到着した。

 さてこのサデルの町だが、元からこの場所にあった訳ではない。 というか、そもそも国境に町は存在していなかった。 始めにあったのは、国境を守る兵の詰め所と門だけである。 そしてこの国境の門だが開いているのは太陽が出ている間だけであり、夜は危険が多いのとよからぬ不法侵入者を防ぐ意味合いもあり門は閉ざされてしまうのだ。

 その為であろうか、夜は間違いなく旅人が居るという環境から自然発生的に宿屋や店などが門の周りに出来始める。 それが何時の間にか大きくなり、結果として町が出来たというのがこの場所の成り立ちらしい。 そしてこれは、隣国のアデル王国にある国境の町ロデアの成り立ちと同じとの事だった。


「いつの世も、需要に対しては供給が現れるって訳よね」


 それぞれの国の国境の町であるサデルとロデアの成り立ちについて教えてくれたアローナが、最後にそう言って説明を締めくくった。

 因みに今話してるのは、サデルの町にある宿屋の一階だ。

 理由は知らないが、どの町でも大抵宿屋の一階は食堂兼酒場となっている。 まだ夜にはなっていないが、日暮れが近い事もありボツボツと酒を飲んでいる客もいた。 そんな宿屋兼食堂兼酒場に居るのか言うと、今夜はこの宿屋に宿泊するからだ。

 折角町に入ったのだから、ちゃんとしたベットで寝たいのは当然の心理である。 その上、宿代は必要経費として依頼者であるギルドが払ってくれるのだ。 こんなチャンス、利用しない理由が無い。 町に入ってすぐに宿を取った俺達は、こうして食堂兼酒場に顔を揃えたのだ。

 そこで何とはなしに町の成り立ちを尋ねたところ、アローナが先の回答をくれたという訳であった。 


「ふーん。 需要と供給……そんなもんなのか?」

「そんなものよ。 それはそれとして、注文しましょう。 折角の人の財布だし」


 そしてここの食事代も、アローナが言った通り必要経費となる。 ヤーゴッヒからその話聞いた俺達が喜んだのは、当然の結果であった。


「ところでヤーゴッヒさん。 この町からの出立は明日ですか?」

「え、ええ。 その通りです、エムシンさん」


 ヤーゴッヒが、やや頬をひきつらせながら質問に答えていた。

 何故に頬をひきつらせているのかよく分からなかったが、何も言ってこないので関係は無いだろう……多分。


「じゃ、明日に備えてさっさと寝ますか」

「そうね」


 食事の終えた俺が、誰ともなしに漏らした言葉にミリアが反応する。 その会話を期に、皆も席から立った。

 因みに宿屋に到着した時、部屋は二つ確保している。 男だけの部屋と、女だけの部屋だ。 どちらの部屋も、三人部屋である。 ヤーゴッヒを含めると丁度三対三となるので、都合がよかったのだ。


「あー食った食った」

「満腹満腹」

「あれだけ食えば、そうでしょうね」

『御馳走様です』

「はははは……」



 翌日、朝食を終えて宿屋を出ると、ヤーゴッヒに従って先ずギルドに向かった。

 何でもギルドで運送を行う際は、町に付いた場合は必ずギルドの支部に立ち寄るのが暗黙の了解らしい。 絶対に寄らなくてはならないという訳ではないらしいが、余裕がある場合はまず寄るのだそうだ。

 そんな理由もあり、ヤーゴッヒはギルド支部の建屋に入っている。 その間、此方は馬車の近くで待っていた。


「ミリア、時間が掛かると思うか?」

「さぁ」


 何とはなしに、近くに居るミリアに尋ねる。 するとミリアは肩を竦めて、分からないといった態度だった。 よくよく考えてみれば、確かに分かる訳が無い。 どれぐらい時間が掛かるのかなど、ヤーゴッヒは言っていなかった。

 ただヤーゴッヒの態度から、そう時間が掛かるという雰囲気ではなかったのだが。


「あ、ヤーゴッヒさんが出て来た」


 それから待つ事少し、噂をすれば影でもないだろうがアローナの言葉通りヤーゴッヒがギルドから出てくる。 すると彼は、そのまま真っ直ぐ此方にやって来た。


「お待たせしました。 さ、行きましょうか」

「少し時間が掛かってたいましたが、何か問題でも?」

「まぁ、ちょっとした書類上のミスです。 国境にある兵士の詰め所に出す書類で間違いが一か所、偶々見付かったのです。 それの修正を行っていたので、余計に時間が掛かりました」

「それは、大丈夫なんですか?」

「大丈夫ですよ、ウォルスさん。 その為の修正ですから。 さて、行きましょうか」


 ヤーゴッヒは、そう言うと馬車に乗り込んだ。

 彼が問題ないというのならそれでいいだろうと、特に何か言うでもなく黙って従う。 やがて俺達は、街道上の国境にある門の前まで向かう。 そこでヤーゴッヒが馬車を降りると、書類を持って詰め所に向かった。

 基本彼の書類があれば、ヤーゴッヒ以外の者が詰め所まで行く必要は無い。 彼の持つ書類には、俺達の事も記載されているのだ。

 詰所の前には、ヤーゴッヒの他に数人ほど並んでいる。 詰め所での手続きには少し時間が掛かるとヤーゴッヒから聞いているので、気長に待つ事にした。

 なお今回の出国方法だが、個人で出国する時とは少々手続きが違う。

 普通、個人で出国するか入国する場合、ギルドに所属している者はギルドカードを提示するだけでいい。 ギルドカードが身分証明の代りになるからだ。

 しかし今回の様に個人所有以外の荷を運んでいる場合、その荷に関しての書類が必要となる。 その際に提出される書類は公文書に当たる為、書類上に記載されていると逆にギルドカードが必要なくなるのだ。

 程なくして手続きが終わったらしく、ヤーゴッヒが馬車まで戻って来る。 彼が馬車の御者席に乗りこんで手綱を操ると、馬車がゆっくりと動き始めると、その動きに合わせて此方も動き始めた。

 さて国境の門だが、当然この時間は開いている。 ルデア国と緩い同盟関係にあるアラル王国との間にある国境の門が、昼間に閉じられる事などまず無い。 両国にまたがる事件などがあれば別だが、少なくともここ暫くは夜間以外閉じた事は無いとの事だ。 

 だが、国境は国境である。 そこにある詰め所に駐在している兵士からは、警戒心と緊張感が滲み出ている。 その警戒は、今まさに国境を越え様として居る俺達にも向けられていた。

 「うっとしい」と思いつつも「仕方無い」と割り切り、気にしない事にする。 やがて国境の門を潜り、俺は初めての外国に入った筈であるが……何でもう一つ門があるのだろう。

 大きさは、今さっき潜った門と殆ど同じくらい。 そんな門が、少し先に扉を開けた状態で鎮座しているのだ。


「何で門がもう一つあるんだ?」

「あれは、アラル王国側の国境の門です」


 思わず声に出していた疑問に、御者台の上からヤーゴッヒが答えてくれた。


「アラル王国の門?」  

「ええ。 先ほど潜ったのは、ガアル国の国境の門。 そして先に見えるのが、アラル王国の国境の門です。 つまりあの門を潜りそこで入国の手続きをすれば、アラル王国に入った事になります」

「へー。 門を潜れば、そこはアラル王国だとてっきり思ってた」

「ガアル国とアラル王国は隣接しているとされてますが、厳密に言えば国境沿いに僅かですがどちらの国にも属さない場所があります。 最も他の国々に比べれば非常に近いので、隣接していると言ってもほぼ間違いではないでしょうね」



 そうこうしているうちに、馬車はアラル王国側の国境の門を潜った。

 そこにある詰め所で、御者台から降りたヤーゴッヒが入国の受け付けを行っている。 ガアル王国から出国する時と同様に馬車の周りで待っていると、受付の終わったヤーゴッヒが戻って来た。


「もういいのか?」

「ええ。 恙無く終わりました。 では、このまま町を出ましょう。 次の町へ到着すれば、そこが目的地トナルです」


 ヤーゴッヒの言葉に従い、そのまま町を出る。 元々町で補給する必要もないので、滞在する理由もないのだ。

 そのまま街道を進む事四日、町と町の間にある村に立ち寄りつつも街道を進んでいく。 遭遇する確率は低いが、一応懸念されていた盗賊の襲撃もないまま無事にトナルの町に到着する。 その足で、トナルの町のギルドに向かった。

 最後の最後で運んで来た荷に何かあっても困るので、ヤーゴッヒがギルドの建屋ないに居る間も馬車周りで警戒していると、やがてヤーゴッヒと共に数人の人間がギルドから出て来た。 

 ヤーゴッヒが気軽に話しているところを見ると、同行者はギルドのスタッフだろう。


「お疲れさまでした。 これで依頼は無事終了です」


 ヤーゴッヒがそう言うと、彼と共に来たトナルの町のギルドスタッフと思わしき男がが馬車をギルドの裏手に引いていく。 そんな馬車を横目で見ながら、ギルドの建屋内へと入った。

 トナルの町のギルド内部の作りは、ガアルの町のギルドとあまり変わり映えはしない。 ほぼ同じ様な構造をしている、そうと言っていい。 するとヤーゴッヒは、ギルドに置いてある椅子に座ると依頼書に仕事終了のサインを記した。

 その依頼書をギルドのカウンターに持って行き、確認をして貰ってから報酬を貰う。 それから再びヤーゴッヒの元に行って別れの挨拶をしてから、彼にお勧めの宿に心当たりが無いかを尋ねてみた。

 すると少し考えた後、彼は一件の宿屋を紹介してくれる。 その場所は、このギルドからそうは慣れている訳では無い。 彼に礼をいうと、俺達はギルドを出てその宿屋へと向かった。

 そこは、ガアルの町で定宿として居たところよりも少し大きいぐらいである。 中に入ると、作りもあまり変わりが無い様だった。

 受け付けをするカウンターがあり、奥は食堂兼酒場がある様子である。 右手には階段があり、そこから上に上がれば宿泊する部屋になるのであろう事が想像できた。


「いらっしゃい、ご宿泊ですか?」


 カウンターの奥から三十代後半かなと思われる女性が出て来た。


「部屋二つ。 二人部屋と三人部屋、明日には出る」

「えーっと……あ、大丈夫ですよ。 代金は、前金でお願いします」


 女性の言葉に従って、ディアナが管理している共通の財布からお金を出す。 これは一緒の行動する様になってから用意した物で、宿代など供用性がある物の代金を払う為に予め全員からお金を集めておいたものだ。

 ディアナが管理している理由は特になく、強いて言えば僧侶だからだと思う。 何となく、ディアナで決まっていたのだ。

 それはそれとして、宿代を払った俺達は宿の人と思われる女性に従って階段を上がる。 やがて三階まで上がると、それぞれ部屋に案内された。

 部屋は通路を挟んで、両側に幾つかある。 そして二人部屋は階段に近い場所にあり、三人部屋は二人部屋よりやや奥まったところにあった。 一応、三人部屋の位置を確認する。 それから部屋に入ると、荷物を降ろして武装を外した。


「あー、これで一息つける」

「そうだな」


 俺は籠手を外して、部屋に備え付けてある机の上に置く。 そしてウォルスは弓を籠手の隣に置くと、剣を腰から外して立て掛けていた。


「今日はゆっくり食事と睡眠を取って、明日出発か……そういえば、ダンジョンに到着するまでって結構日数が掛かるのか?」

「確か、ダンジョン最寄りの街までこのトナルから二日ほど掛かった筈だ。 だから明日、町で食料と買い込んでそれから出発だな」


ご一読いただき、ありがとうございました。

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