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第九話~決着~


第九話~決着~



 アローナの言葉に、声を上げたアローナは勿論だが他にミリアも一先ずその場から離れようとする。 そして勿論俺も離れようとしたが、人一人抱えている為か機敏に動けなかったウォルスがディアナという名の女性を庇うかのような行動をしている姿が視界の隅に入った。


「ちっ!!」

「フレアスピア!」


 俺がウォルスと女性の前に立ちはだかるのと、敵の男が生み出した槍の形をした炎が数本ほどこちらに目掛けて放たれたのはほぼ同時だった。


乱散拳らんざんけん!」


 気の力を込めた拳の乱撃、それが乱散拳だ。

 本来、相手に多数の打撃を当てる技だが、敢えて迎撃に使用した。しかし幾ら何でも、全て迎撃など出来る筈もない。それでも大多数は迎撃・相殺したが、俺は片足に一撃を食らってしまった。直後、一撃を食らった当たりの足が炎に包まれたが、痛む足を強引に振り抜く事で火を消して見せる。だが、一撃は一撃。痛むこともあり、片膝をついていた。


「大丈夫か! エムシン!!」

「お、俺のことより、彼女を安全な場所に!」

「あ、ああ!」


 痛みを堪えながら声を掛けると、ウォルスは慌てて死角となる場所に助けた女性を移動させている。そして俺はというと、片膝をついた為に機敏に動けない状況だった。そんな様子が分かったのか、魔術を放った男は嫌らしい笑みを浮かべている。しかしその直後、男が視線をうしろへと向けたかと思うと慌てて距離を取っていた。


「食らいなさい、アイスボルト!」


 その理由は、アローナだった。

 彼女が、魔術を発動させたことによる物である。恐らく魔術語マギ・ワードを聞き咎め、アローナが魔術使いであることを認識した。そこで慌てて回避に移った、というところなのだろう。彼女が放った短い矢のような形をした氷のようなもの、それが敵に向かって行く。そのお陰で、俺と男に更なる距離が空いた。

 まさにその時、俺に近づく気配を感じる。それは、ミリアの気配だった。


「今癒すわ……リ・フレッシュ」


 ミリアの精霊術が発動すると、すぐ近くに姿は見えないが確かに精霊の気配を感じた。

 その直後、足の火傷ができるまでを逆回しで見るかのごろく回復していく。それは気による回復より、遥かに効果の高い回復なのが実感できた。

   

「助かった、ミリア」

「どう致しまして」


 ミリアに礼をいったあとで、再び身構える。すると視線の先では、男が舌打ちしていた。


「まさかこんなところで、高等精霊術を操るエルフに会うとは」

「あら。ならば、降伏する?」

「中々に面白い冗談だ!」


 ミリアの軽口に答えた男は、恐らく魔術語と思われる言葉を紡ぐ。俺は一気に踏み込み、一撃を与えて邪魔しようとしたがそれは叶わなかった。突如現れた何かに、遮られたからである。それは、石で出来た大きな手だった。


「確か……ゴーレムってやつか?」

「石で出来たストーンゴーレムね!!」


 あえて深追いせずにすぐに離れてから、誰ともなしに尋ねる。すると聞きとがめたアローナが、すぐに俺の疑問に答えをくれた。


「弱点は?」

「術者を倒すか、ボロボロにするかね。タイプによってはコアがあったりするゴーレムもあるけど、今あたし達の目の前にいるゴーレムに対しては気にすることはないわ」

『つまり、ぶっ壊せばいいんだな』 


 助け出した女性を死角に置いたらしく戻って来たウォルスの言葉と、俺の言葉が重なる。するとアローナは、苦笑を浮かべつつ頷いていた。


「簡単に言えばそうよ」

「なら、話は早い。ウォルス」

「ああ、エムシン」

『推して参る!』


 直後、同時に飛び出したのだった。



 二人して肉薄すると、ゴーレムが拳を振りまわす。その拳が当たればかなりのダメージを負う一撃だと思われるが、肝心のゴーレムの繰り出す攻撃が遅いのだ。肩を並べて突撃した俺とウォルスは、ゴーレムの腕を掻い潜る事で避けて見せた。


「乱散拳!」


 結構大きい姿のゴーレムであるから、的には困らない。放った拳を全て命中させて、ゴーレムを足止めする。その隙をついて、ウォルスがバスタードソードでゴーレムを攻撃した。するとその衝撃のせいかそれとも別の要素かは分からないが、ゴーレムにヒビが入る。それを見て飛び上がると、そのヒビ目掛けて技を仕掛けた。


鷹襲脚ようしゅうきゃく!」


 一撃を受けて、ウォルスのつけたヒビが更に大きくなる。そのヒビへ、今一度乱散拳で攻撃を加えるとゴーレムのヒビは更に大きくなる。そこにウォルスが放った大振りの一撃がとどめとなったようで、ゴーレムは音をたてて崩れ落ちていった。


「ば、馬鹿な! あの方より力を授けられたこのわたしのゴーレム……しまった!」


 こちらとしても、悠長にゴーレムが崩れるさまなど見ている気はない。まして、敵の口上も聞く気はなかった。一気に敵へ肉薄するとみぞおちを、ウォルスはバスタードソードのがない場所で男の頭を強かに打ち据える。すると男はその攻撃で床に倒れ伏すと、ピクリとも動かなくなった。

 俺は残心とばかりに油断なく様子を見たが、男が動きだす様子は見えない。そこで構えを解くと、一安心とばかりに息を吐いた。


「何とかなったな」

「だな」

「それと……俺とディアナを庇ってくれたこと、礼を言う」

「気にするな。一時的であったとはいえ、共闘したんだ。助けられるならば助けようとするのが、人情ってやつだろう?」

「……ふ、そうだな」


 俺とウォルスは、微笑を浮かべながら軽く拳をぶつけた。


「ところで彼女……」

「ディアナか?」

「そう。そのディアナさんは、大丈夫なのか?」

「見える箇所に、目立った怪我などはなかった。服の下とかは、流石に確認できないしな」


 確かにこんな場所で、いきなり服をはだけさせて確認という訳にはいかないだろう。ましてやこの場所は、敵のアジトだったのだ。


「どちらにせよ、確認はあとだな。下手に見付かると騒ぎになる」

「あっ! 確かに」


 するとアローナが、ウォルスの言葉に同意した。


「ならばどうする」

「潜入はもういいと思うわ。ここからはこの遺跡の制圧、でしょ?」


 アローナの言う通り時間を置けば、潜入が相手に発覚するだろう。その前にこの神殿遺跡を制圧出来れば、それに越したことなどないのだ。それに、神殿遺跡に潜入して暫くは内部の捜索をしている。そのお陰で、残りの未探査エリアはそう多くない。ならば、早々に残りの場所も制圧するのが最短の道だと思えた。


「なら手分けしていこう。ディアナさんに関しては、ウォルスたちに任せる。俺とミリアで、残りのエリアを抑えていこう」

「分かったわ」

「危険だよ、二人だけで何て」


 アローナが忠告して来るが、ディアナを放っておく訳にもいかない。またしても捕えられて、人質とされるかも知れないからだ。そうならない為にも、彼女は押さえておく必要があるだろう。


「だが、仕方無いだろう?」

「ううん。あたしも行くわ」

「アローナ!」

「兄貴は、ディアナと捕えられていた人たちを守ってあげて」


 アローナの言葉で、捕えられていた人がいたことを思い出す。ならばアローナの言う通り、その人たちを放っておくという訳にもいかないだろう。


「しかし、アローナ……

「兄貴、論じている暇はないの。 時間との勝負なんだから」

「……それは分かるが」

「だから兄貴は、ディアナを抱えて捕えられていた人たちがいたところに向かって。いいわね」

「はぁ……分かったよ」


 半ばあきらめたかのような声を漏らしたウォルスは、ディアナを抱えて部屋を出ていった。

 残った俺たちは、気絶させた男と共に敵の頭領らしい男を拘束して部屋に転がしておく。それから二手に分かれて、神殿の制圧に向かった。しかし俺が担当した範囲には敵は数人しかおらず、そして彼らの強さもたいしたこともない。さらに言えば、既に事情を聞きだす者は確保をしているので、生かして捕える必要性も余り感じなかった。

 気配を殺して近づくと、後ろからいきなり手加減なしに頭を蹴り飛ばして首の骨を折る。それから倒れ伏した者を死角になりそうな場所に移動させるという対応を、出会った敵全員に行った。やがて俺の担当した範囲内にいた者たちを倒してエリアを抑えると、敵の親玉が居た部屋へ戻る。するとそこには、ミリアとアローナが既に戻って来ていた。

 

「そちらは終わり?」

「ああ。そっちは……って聞く必要もないか。ここにいるってことは、そっちも終わったんだよな」

「ええ、そういうことよ」


 こうして神殿遺跡内部の制圧と探索を終えた俺たちは、いまだ気絶している敵の二人をウォルスが居る筈の建物に運び入れる。するとそこには、ウォルスの他に数人程がいるのが分かった。


「あー、重い。意識のない人間ってのは、重くて叶わん」


 気絶している二人を運び終えると、肩を回しつつ愚痴をこぼす。するとミリアが「お疲れ様」と、いたわってくれた。


「で、どうするの?」

「いつまでもこのまま、って訳にもいかないよな」

「考えられるのは、二つね。一つはこの場所に留まり、誰かを連絡役にガアルの町へ派遣する。もう一つは、気絶している二人と攫われていた人たちと共にガアルの町を目指す」

「一長一短だよね、それ」


 アローナの言う通り、ミリアのいった二通りの手段は一長一短だ。

 ここで待てば安全かもしれないが、しかし倒したやつらの仲間が他にいないとは限らない。もしいた場合、相手の規模にもよるが俺たちも含めて捕えられてしまうかもしれなかった。

 だからと言って、戦いに慣れている気配もない人たちを連れていくというのも不安が残る。魔物避けの香もまだあるので、魔物に遭遇する危険度は下げられる。だが、魔物避けの香の効果を無視して襲って魔物もいる。何より、魔物除けの香は野生動物には効かないのだ。


「さてと、どうするか。待つか、それとも町へ全員で向かうか……あ、因みに俺は町へ行くに一票な」


 物のついでとばかりに、軽く意見を添えておく。するとその言葉に、ミリアもアローナもウォルスも苦笑を浮かべていた。

 なぜかは知らないが。


「軽くいうなぁ、エムシン。まぁ、俺も同意見だが」

「そうか。それで、ミリアとアローナは?」

「私たちも同じね。もっとも、あの人たちが同意するかは分からないけど」


 ミリアが視線を向けた先にいるのは、攫われた人たちである。俺は後ろ頭をかくと、攫われた人たちへ今後の方針を告げた。すると意外なことに、不安そうな表情を浮かべながらであるがそれでも全員がついてくる気である。一応その理由を尋ねると、一番の理由はこの神殿遺跡からさっさと離れたいかららしい。攫われて監禁されていた事実を考えれば、その理由は納得出来た。

 それともう一つ、俺たちが町へ向かうからというのもあるらしい。この場に残って、もしかしたらいるかも知れないと敵の仲間の到来を怯えるより、敵を倒す強さを見せた俺らとともに移動する方がいいと判断をしたらしかった


「そうですか。分かりました、一緒に町へ行きましょう」


 このあと、神殿遺跡に残されていた敵の物資や食料を、不測の事態を考慮して人数分以上拝借すると、捕えた敵の二人も連れてガアルの町へ出発したのだった。


ご一読いただき、ありがとうございました。

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