匂いと幼馴染
彼女のベッドの上でゴロゴロと転がりながら、思わずにやける顔。
「レリアのいい匂いするー・・・」
人はそれぞれ体臭と呼ばれるものがあって、
それがいい人もいれば残念な人もいる。
この人の匂いは好きだけど、あの人はちょっと・・という風に。
ちなみに、私は彼女の匂いが大好きだ。
そんなことを口走ろうものなら、まあ、
私は変態という大変不名誉な称号を与えられてしまうだろうから言わないが。
彼女の匂いは、なんというか・・・・
「落ち着くんだよなぁ・・・」
「・・・・」
ほら、戻ってきた彼女から早速侮蔑の視線が。
グサリ。
「レリア、おかえりー」
「何してるの、人のベッドの上でにやけて」
気持ち悪いわ、と一蹴された。
またまた、グサリ。
「小心者で傷心者の私は、再びベッドに倒れ伏すのであった。続く・・」
「なにが続く、よ。まったく・・。もしかしてまだ酔い覚めてないとか?」
さらに痛そうな目でこちらを見やる彼女。
頑張って彼女を見つめ返し続けている、私。
それもそろそろ居たたまれなくなり、先ほどの台詞通り、
再び私はベッドに倒れ伏した。
「なんだよー・・長い戦から無事に生きて戻ってきた幼馴染のか弱い女の子に優しくするという心はないのかよー・・」
「まだ殉死したほうがましだったわね」
「ひどい!」
「それに、あなたか弱くないわ、むしろ逞しいぐらいね」
「うっ・・」
「しかも、女の子じゃなくて、もう立派な大人よ・・あ、心のほうはどうか知らないけれど。」
「・・・・もう・・そこまでいわなくたって・・いいじゃん・・」
駄々をこねると、それ以上の言葉攻めがもれなく返ってきます。
辛いです。
そこで少し拗ねた私は、ぶっきらぼうに彼女へこう尋ねた。
「じゃあ、私が死んじゃってもいいんですかー?」
幼馴染なら、ここは『そんな!あなたが死んでしまった未来なんて・・想像できない「ええ」わ!』
とか言ってくれるものだと「ええええええええ!?」
彼女のこのたった二文字の返事は、
私の心にに計り知れない程の深い闇を与えてしまった。
「なにさめざめと泣いてるのよ?」
「だって・・・私が死んじゃってもいいんでしょう・・?私はいらない子なのね・・」
「子、じゃないわ。人間よ」
「どうでもいいよそんなこと・・・」
「あなたって本当面倒くさいわね」
「それ・・今日の会話の中でも一番傷ついたかも・・」
なんて幼馴染を持ってしまったんだろう。
少しの心配もしてくれないだなんて。
・・ん?待てよ。
(確かに態度は悪いけど、でも、酔った私をここまで運んできてくれて相手をしてくれていたのは・・結構優しいことなんじゃ・・?)
そう考えると、彼女のこの態度も友愛の裏返しのように思えてきて。
気が付くと私はにやけた顔で彼女を見つめていた。
「な、なによ・・?」
顔になんかついてるの?とでもいうような目で少し狼狽える彼女が、今は少しだけ愛おしい。
・・・・少しだけ。
「・・むふふー」
「え、気持ち悪」
「へへー、ありがとー」
「いや、本当に気持ち悪いんだけど・・」
それに、悪態をついている彼女もそれはそれで結構面白い。
しばらくそうやって彼女を見つめて狼狽えさせた後、
心配事のなくなった私は完璧に気が抜けていて、
長かった戦の疲れと睡魔とに襲われていつの間にかまた眠りに落ちていた。
まだまだ続く予定です(*´ω`*)
あぁ、終わりが見えない(笑)