プロローグ
「あ、ドングリだ!ねぇ、ママ。ドングリだよ?」
ここはとある公園の通り道。母の手を取って歩く男の子は母に道端に落ちたドングリを指差し物欲しそうな目を向けています。
そんな男の子に母は言いました。
「ああいうところに落ちたものは汚いものだから駄目です。しょう君ももう6歳なんだから分かるわよね?」
「え~。でも~。」
「甘えた声で言っても駄目なものは駄目です。さ、いきましょう。」
母に引っ張られながら納得いかない声を上げるしょう君でしたがやはり母親には適いません。
しょう君と母親はそのままその通路をあとにしていきました。そしてその通路に人がいないなったあとのお話です。
ムクッ
誰もいなくなったその通路では確かに何かが動く姿がありました。
それはとても小さくよく見なければ気がつかないほどでしょうが確かに動いています。
「僕の………何がいけないんだ。」
茶色の皮から一筋の滴が流れ落ちます。
それは自然発生的に起きたものではなく何かの意思を感じさせました。
取って付けたような薄橙色の四肢で状態を上げながら彼は言うのです。
「それでも僕は人気者になってみせる!」
野望を掲げるその彼の名前はドングリ君。
ドングリの中のドングリになるために日々奮闘するただそんなドングリです。
ここまで読んでいただきありがとうございます。