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光と闇の少年  作者: リグレッド
1.光は日々を過ごす
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ハユラとアイン

四人がコートの中心で衝突した瞬間、爆音とともに煙が巻き起こった。衝撃波と煙が、コートの周りにいた生徒たちの視界を一瞬奪う。そして以外にも、その煙からすぐに飛び出してきたのはエドとシルヴァだった。


後ろに飛びのいたその二人を追いかけるようにして、ハユラとアインも煙の中から飛び出す。



衝突した瞬間、エドは額に銃口を、シルヴァは顔の目の前に拳を突き付けられていた。あまりに素早く突然の事に防御が追い付かないと判断し、二人は反射的に後ろに下がったのだ。



「イチ……」


「ニッ……!!!」


飛び出したアインとハユラが『作戦』においての合図であろう言葉を口にする。


その掛け声とともに、二人は同時に左右に分かれそれぞれのターゲットに攻撃を仕掛けた。


アインはエド、ハユラはシルヴァに向かって。



エドとシルヴァからすれば予想通りの展開で、ハユラがシルヴァに勝ったことがある事と肉弾戦のエドに対しアインの銃は有利であるためこの組み方になったと誰もが予想した。


だが、ハユラとアインはその『予想』を利用し、『作戦』をたてていた。



ハユラがシルヴァに向かってナイフを二本投げつける。シルヴァはその攻撃を後ろに下がりながら避け、自身も同じナイフをハユラに向かって振り下ろした。


ハユラは投げつけたすぐ後に腰のベルトからナイフを取り出しており、シルヴァのナイフを間一髪で受け止める。


コート内に金属音が鳴り響いた。


「よく受け止めたわね、ハユラ」


「シルヴァも、後ろに下がりながら私のナイフを避けるなんてすごいじゃない。この前の戦いで私があなたのバランスを崩して勝った、だからバランス感覚でも鍛えたのかしら?普通なら避けたときにバランスを崩して転びそうなものだけど」


ギリギリと、シルヴァはナイフに力を()めた。


「そうね、確かに鍛えた。そこは否定しない。でも、鍛えたのはそこだけじゃないの……よっ!!!」


シルヴァはナイフを傾け、刀身でハユラのナイフの持ち手をひっかけてそのまま勢いよく振り上げた。ハユラの手からナイフが弾き飛ばされる。


「なっ………!!?」


「残念だったわね、ハユラ」


そう言って、シルヴァはハユラに向かって再びナイフを振り下ろした。


「本当はもっと戦ってもよかったんだけど、勝つために手段は選ばないからっ!!」


だが、ナイフがハユラの肩にあたる直前、そのナイフがシルヴァの手から弾き飛ばされる。


そして、それがナイフをはじかれたのだと気付くのに、シルヴァは数秒の時間が必要だった。


「……え?」


シルヴァの思考が停止する。


目の前のハユラはシルヴァの攻撃に対し、防御も避けることもしていない。


「良かったわね、まだ戦えるわよ?」


ハユラが得意げにシルヴァに声をかけた。


「……何したの?」


「あら、状況判断力を鍛えるのも『戦闘訓練』の大切な目的よ?まあ、さすがにこれは分からないと思うから教えてあげるわ」


そう言うと、ハユラは後ろを指さした。目の前のハユラを警戒しながら目を向けると、そこには戦っているエドとアインがいた。銃と拳で戦っている。


分けが分からずにいると、ハユラはにっこりほほ笑んだ。


「やっぱり分からない?じゃあヒント。アインの動きにご注目くださーい」


言い方にイライラするが、それでもシルヴァは言い返さずアインの動きに集中した。


さっきナイフを飛ばされたのは、アインとハユラの『作戦』が成功したということだろう。それくらいは分かる。


ならばその『ナイフを飛ばされた理由』を解析することが出来れば、二人の『作戦』を知ることが出来るし、それを逆手にとって反撃をすることが出来ると考えたからだ。


もちろん、ハユラもシルヴァがそのように考えると分かっていて『作戦』を教えているのだが。



シルヴァは、アインに全神経を集中させた。指先の動きすらも把握し、異変があればすぐに気付けるようにする。だが、それでも目立ったことはしていない。


エドの素早い拳をうまくかわし、時には銃で受け止めている。


訳が分からないわ……。


シルヴァのそんな姿を見て、ハユラは楽しそうに笑った。





◇◆◇◆◇◆◇





ハユラがシルヴァにつっこんでいった頃、アインはエドに向けて銃を撃つのではなく、あくまで銃を『鈍器』として使っていた。


「?何で撃たないんだ」


エドの素早い攻撃を紙一重でかわしながら、アインは顔色一つ変えずに答える。


「『作戦』ってやつだ」


「………そうか」


(こっちはシルヴァが一人で突っ走ってるみたいなもんだしな………)


相手チームの即席で作った作戦がどんなものかと考えながら、エドは相方であるシルヴァの方に目を向けてみた。


もちろん、目の前に敵がいる状態でその敵から目をそらすのは自殺行為と言えるが、相手が打ってこない以上銃を専門で扱っているアインより、エドの方が接近戦には慣れているので、一瞬なら大丈夫だろうと判断したのだ。


だが、アインはその一瞬を見逃さない。


エドは銃を扱ったことがないので知らなくて当たり前だが、本来銃とは一瞬の攻撃。普通の銃でもその弾丸は音速を超えて標的に向かっていく。


そんな一瞬を扱い、手になじませ、使いこなせるようになったのがアインという少年だ。


瞬間の出来事。そしてそれを扱う銃の腕前。


これに関しては、学園内でもトップを狙えるほどの実力を持つ。




エドがアインから目を離した瞬間、アインは銃に込められた弾丸に魔法を発動し、そして発砲した。本来の音速を超え、弾丸が音もなく飛んでいく。


ただし、標的はエドではない。


ハユラに向かって振り下ろされている、シルヴァのナイフだ。それを弾き飛ばすため、アインは動いているナイフの持ち手……ちょうど人差し指と親指の少し上あたりを正確に打ち向いた。


シルヴァのナイフが、視界から消えてしまったと錯覚するほどの速さでコート外に飛んでいく。


「………………」


「はっ?!」


そして、それを偶然見てしまったエドは、突然の出来事に思わず声をあげていた。


(普通、相方の方の敵を攻撃するか!!?しかも、2センチもないあんな細いところを!!?)


「おい、アイン!今お前の……っ!!」


エドは声をかけたが、アインはそれを遮るように銃で攻撃を仕掛けてきた。


「………く…そっ!!」


アインの四肢を使った打撃。拳二つで戦うのが基本のエドにとって、タイミングが計りずらい。


「あれがお前らの作戦ってやつか?アインは俺、ハユラはシルヴァを攻撃すると見せかけて、もう一人の方を攻撃する……」


「それだけじゃないぜ?」


アインは腰のひねりを利用して体を回転させ、その遠心力でエドの頭に自身の膝を叩き込んだ。


「ぐっ…!!」


とっさに腕を上げなんとか頭だけは守るが、体勢を崩して後ろへと転がってしまう。


「大丈夫エド!」


シルヴァがエドのもとに駆け寄る。


「ハユラは?」


「向こうも合流してるわよ」


何の事か分からなかったが、10メートルほど前にアインとハユラが並んで立っていた。会話などは一切しておらず、合流したというよりは『動いていたら、たまたま相方が近くにいた』というような印象を受ける。


やっぱり何か作戦を立てた方がよくないか?


と思うエドだったが、ハユラを倒せればそれでいいと思っているシルヴァには何を言っても通じないだろう。


「……お前のナイフ、アインが打ち抜いてたぞ」


だがとりあえず、ナイフがはじき飛ばされた理由だけは教えておいた。


「はあぁっ!!?打ち抜いた?振り下ろしてる最中のナイフを?」


「しかも持ち手の部分を」


「………」


アインの銃の腕前を改めて認識したシルヴァは、思わず黙り込む。


「その弾丸、避けられる?」


「音速で飛んでくる弾丸を?無茶言うなよ。俺はスピード強化の魔法だけど、音速ほど早くないぞ」


「そうよね………避けられたら作戦を立てられたのに」


もしもエドのスピードがアインの弾丸のスピードに勝っていたら、何か『作戦』を立てようと思っていたらしい。


その時点で、先ほど試合が始まる前との態度の違いに驚きを隠せないエドだったが、そもそも弾丸を避けられないのではどうしようもない。


「おい、Aコート何やってんだ!!ちゃんと戦え!」


Aコートの様子を見たアバラス先生が、四人に声をかけた。


うち二人にとっては、弾丸を避けるためにはどうしたらよいかという最大の壁を打破するための大切な時間だったりするのだが、他人から見れば、その二人がただしゃべっているようにしか見えない。


エドは立ち上がると、何の解決策も見つけられないままとりあえず構えた。


「避けられないんじゃあ、どうしようもない。戦いながら活路を見出すしかないだろ」


「見出せなかったら?」


「負け、敗北、大敗、全敗、完敗……『白旗』」


「白旗は上げてないでしょうがぁ!!あんたあたしを怒らせたいだけでしょ!!?」


「ばれたか―。ついでに言うと、怒った拍子に何か思いついてくれないかなという淡い期待もしてみたんだが……」


「そんなに都合よく事が運ぶわけがないでしょうが」


危機感のない相方にシルヴァは半分呆れながら、自身も攻撃に備え構えた。


「やっと準備オーケーみたいね」


ハユラがやれやれというように言った。


「あなたたち二人はアインの銃ばかり気にしているようだけど、私だってレベル7の風魔法使いなのよ?少しはこっちにも警戒心を持ってほしいのだけど」


「残念ね。私とエドはレベル8と9。魔力以外にとりえのないあなたは、はっきり言って眼中にないわ」


それでも、お前負けたんじゃねえか。とエドは呟いたが、シルヴァには聞こえなかったようだ。


「それなら、その目に私も脅威(きょうい)になる人物だということを見せてあげるわ」


ハユラは、ずっと握っていた左手を開いた。突き出されたその手の中には、弾丸が3発入っている。


エドは首をかしげた。


銃に入っていない弾丸は、はっきり言ってただの鉄の塊同然だ。それをハユラはどうするというのか?


「これをこうやって……」


ハユラが弾丸の一つをコインのように指ではじいた。


ピン、という音をたてて弾丸が回転しながら上に上がっていく。


「そんなことをして何する気?弾丸は気体の圧力によって発射されるものでしょ。指ではじいた程度では……」



ズバンッ、と。


シルヴァが言葉を発している最中に、落ちてきた弾丸はハユラの親指によってはじかれた。



「え……………」


シルヴァの頬かすめ、轟音と共に後ろの壁に穴をあける。


コートの外側でシルヴァ達の試合を見ていた生徒たちはもちろん、Bコートで戦っている生徒までもが何事かと振り返った。


シルヴァは頬から流れる血にも気付かずに、ハユラを凝視する。


『信じられない』。


それだけが、かろうじて頭の中に浮かんだ言葉だった。


一方で、クラス中の視線を集めているハユラは、楽しそうに笑っている。


「そんなにびっくりすることかしら。まさか、指ではじいた弾丸がそのまま弧を描いて床に落ちるとは思ってなかったでしょう?」


「……………っ」


「種明かしをするとね。指ではじくときに、弾丸に魔法を発動させただけよ。いえ、正しく言うと、本来ならゆっくりと落ちていく弾丸を『風で操った』……かな」


つまり、ハユラは自身の風魔法で起こした強風に弾丸をのせて、発射したのだ。


「そんなの在りかよ!?」


「ありよ」


わずか三文字でエドの言葉は否定された。


「どう?これで私も脅威になったかしら」


シルヴァは奥歯をかみしめた。ギリギリと、あごに力が加わっていく。


「アインの銃だけでも大変なのに、これじゃあハユラも銃を持ってるのと同じじゃない!!!」


「このままじゃ、本当に負けるかもな」


先ほどまでの気のゆるい声とはまるで違う緊張感を感じさせる声でそう言うと、エドは魔力を高めた。それを見たアインとハユラも、同じように魔力を高めていく。




「そろそろ始めるか……」


アインは右手に持っていた銃をエドに向けると、そのまま引き金を引いた。バンバンバンッと連続して弾が発射されていく。


発射された弾は全部で六発。だがその弾は、全て空中で停止していた。


(自分に向かってくるはずの物が止まっているっていうのは、なんだか時間自体が止まったみたいだな)


頭の中でそんなことを考えていたエドだったが次の瞬間、空中に浮いていた弾丸にハユラが発射した弾丸が当たり、合計七発の弾丸が四方八方に飛び散った。


ビリヤードの球のようだと言えば分るだろうか。


そんな、本来ならあり得ない発射のされ方をした弾丸たちは、もちろん本来のようにまっすぐには飛んでくれない。


まるで、コートの白線の上に壁があるようにそこで跳ね返っていく。おそらく、ハユラが風の魔法で白線の上だけに『コートの内側に向かって吹く風』を起こしているのだろう。


結果、エドとハユラは7発の自由に飛び回る弾丸に囲まれてしまった。



しかし。


これで終わりではない。



ハユラはスカートのポケットから新たに弾丸を取り出し、アインは銃に新しく弾を込めた。


そう、飛び交う弾は7発だけではない。


「それじゃあ」


ハユラとアインは笑った。


「「作戦開始」」


その言葉を合図に、ハユラとアインは自身の魔法を最大限に生かした『作戦』で、『予想』や『反撃』、『レベルの差』、全てを無意味にしてエドとシルヴァに攻撃を仕掛けた。



誤字などを教えていただけると嬉しいです。

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