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夜更けのルミエール〜花と珈琲を愛する年下の店主が淹れるハーブティーは、忘れかけていた恋の味がした〜  作者: 寝不足魔王


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第66話:未来を予約する、カレンダー

お読みいただきありがとうございます。

第66話。多忙な二人にとって、最も貴重なのは「時間」です。

「空いた時間に会う」のではなく「会うために時間を空ける」。

大人の恋を長続きさせるための、現実的で愛おしい工夫を描きました。


 『ニュー・ルミエール』のオープンは大成功を収めた。

 メディアの取材、フランチャイズ化の打診、そして統括部長としての日常業務。私のスケジュール帳は、数分刻みの予定で真っ黒に埋め尽くされていた。

 それは瀬尾さんも同じだ。アドバイザーとして全国を飛び回り、店主としても現場に立ち続ける。


 同じ屋根の下に住んでいるはずなのに、ゆっくりと顔を合わせて言葉を交わすことさえ、贅沢なことになりつつあった。


「……志保さん、これ」

 ある深夜。疲れ果てて帰宅した私の前に、瀬尾さんが一冊の真っ白なカレンダーを置いた。


「なに、これ?」

「僕たちの、三ヶ月先までの『予約表』です。仕事の打ち合わせじゃなくて、二人で何もしないための時間を、今ここで予約しませんか」


 彼はペンを手に取り、私がまだ把握もしていない三ヶ月後の日曜日に、大きく花丸をつけた。

「この日は、どれほど大きな案件が入っても、絶対に二人で代々木公園に行く。……そう決めないと、僕たちはすぐに『プロフェッショナル』に飲み込まれてしまいますから」


 私は、思わず目頭が熱くなるのを感じた。

 成功を求めて走り続けた結果、一番大切なはずの「彼との時間」を後回しにしようとしていた自分に気づかされた。

 

「……そうね。予約しましょう。三ヶ月先も、半年先も。……一年先の、私たちの記念日も」


 私は彼の隣に座り、ペンを受け取った。

 「温泉に行く」「一日中寝る」「新しい豆を試す」。

 真っ白だったカレンダーに、私たちのささやかで、けれど絶対に譲れない未来が書き込まれていく。


 三十八歳と三十四歳。

 若さゆえの勢いではなく、お互いの人生の重みを理解しているからこそできる、戦略的で、かつてないほど切実な愛の予約。


「……これで、明日も頑張れるわ」

「ええ。この日のために、今は精一杯戦いましょう」


 未来を予約する。それは、私たちが「自分たちの幸せ」のハンドルを、決して仕事に明け渡さないという、強い決意の証だった。


第66話、いかがでしたでしょうか。

未来の予定を先に決めてしまう。忙しく働く読者の皆様にも共感していただける解決策かもしれません。

二人の絆は、もう何があっても揺らぐことはありません。


いよいよ最終回まであと4話。物語は旗艦店完成、そしてフィナーレへ向かいます。

評価やブックマーク、ぜひよろしくお願いいたします!


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