四国一周の旅、あとがき
先日、年末年始に行ったスーパーカブでの四国一周の旅行記を書き上げることが出来ました。総文字数は39,466文字で、400字詰め原稿用紙に換算すると丁度100枚くらいの分量になります。この文章を書くにあたって必要だった期間は16日でした。平均すると、一日に2500文字くらい書いてきたことになります。
スーパーカブでの旅行でも、登山でもそうなのですが、僕はそれらの旅を文章化してきました。数えてみるとそうした旅行記をこれまでに、ネット上で10本発表しています。僕が文章を書きネットで発表を始めた切っ掛けそのものが、スーパーカブでの旅行記だったので、これが僕の基本的スタイルなんだと思います。
振り返ってみて感じることですが、一つの旅に対して、僕の場合は三つの段階があります。一つ目は計画段階。実をいうとこの段階は、アドレナリンが分泌されていて最も楽しい状態になります。そもそも、旅に行きたいという思いそのものが、心の衝動。つまり、心が動いています。今回であれば、四国一周というテーマそのものに僕は興奮しているわけです。妄想爆発。
計画段階では、エクセルを使い、一日のスケジュールを細かく設定しました。この時に便利なのがグーグルマップのルート検索です。目的地を設定することで、そこまでの距離と時間が算出されます。僕の場合は、ルート上の遺跡や博物館に立ち寄ることが多いので、目的地に応じて細かく細かく設定しました。この作業が、パズルのようで面白い。実際に旅に出ると、想定外のことが起こるので予定通りにならないことが多いのですが、それはそれで楽しんでいます。
第二段階は、実行段階です。計画にそって行動を起こしているのですが、この状態のときは案外と興奮していません。どちらかというと瞑想に近い。黙々と予定を消化しています。考えてもみてください。スーパーカブで100や200kmという距離を走っている間、ずっと興奮しているなんてありえません。今回の旅では、高知県の安芸市周辺では、運転しながら完全に寝落ちしてコケてしまいました。今でも憶えています。目が覚めたら、スーパーカブと一緒に僕が道路を滑っていました。ケガもなく、巻き込み事故も起こさなくて本当に良かったと思っています。
ただ、現地に赴かないと分からないことはあるんですよ。特に、自分の想像を超えたものに出会えると、涙が出ます。今回であれば、足摺岬にある唐人駄馬遺跡、佐田岬、そして今治で見た初日の出です。この三つは、四国一周の旅で、最も思い出深い場所になりました。
あと、計画していたのに変更せざるを得ない……という状況も大好きです。計画は立てますが、計画通りというのはとてもつまらない。予定調和は心が動かない。想定を超えた瞬間は、良くも悪くも心が動きます。今回であれば、エンジンの焼け付きでした。現地でオイルの入手が困難な状況が出来てしまい、かなり慌てました。登山においてもそうです。実力不足から予定通りに進めなかったり、高所に張り付きながら「怖い~」と叫んでいる時は、心が動いています。興奮しています。というか慌てています。
第三段階は、旅行記の執筆。僕はスマホで多くの写真を撮っているので、そうした写真を眺めたり、また事前に作った計画表や、グーグルマップを見つめながら、僕が経験してきた旅の事柄を脳内で再生します。そして、文字に起こします。文字を書いている時というのは、僕が二人に分裂します。実際に旅を体験している僕と、それを客観的に見つめる僕。更には、文字に起こした内容を読んで、第三者がどのような反応をするのかも想像しています。とても多次元的な世界で、僕という自我があっちこっちに行き来します。旅での出来事を追体験している時もあれば、ある意味自分が自分でないような感覚に陥ることもあります。それが、とても面白いな……と思います。
若い頃に日記を書いていたのですが、僕の旅行記は日記ではないのです。日記は、どちらかというとマスターベーション。とても自己満足な世界になります。対して、今回の旅行記や小説は、第三者が読むことを想定して文字を起こします。明らかに第三者の目を意識している点で、セックスに近い。ちょっと下ネタで申し訳ないのですが、良いセックスって、相手への思いやりの仕草が大事だと思います。そこには、会話のようなお互いの想いの交換があると思うのです。
とは言いつつ、全ては僕の思い込みになります。僕の文章を読んで面白いな……と感じて欲しいのですが、それは僕が決めることではありません。読んだ方が決めることです。面白くない……と思われたのなら、それは僕の力量が未熟だったということになります。ここまで読んでいただけたのなら、少しは面白いと感じてもらえたのだと思っています。とても嬉しい。ありがとうございました。




