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神の国  作者: 五十鈴カッシーワ


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5/6

強敵を前にした時に

最初から心が通じ合うことなどない。

結果が全てであるのと同時に、過程にも多大な意味がある。

そして、人が重要にするのは、どちらが大切とかではなく、それがどのような運命を辿るかである。



ウィータとムラクニは強敵の前に一つの道を見つけていた。

 角にヒビが入った。しかしサイは怯む様子もなく、また構え直す。


「効いてないのか?」


そう思った。だが、サイの前掻きが少し遅くなっている。加減しているのではなく、動きが重たくなった感じだ。

そして、今度はムラクニの方へ向かっていった。先程とは比べ物に成らない速度で、まるでワープしたかのようにムラクニへ接近する。ムラクニは咄嗟に巨木の裏に隠れたが、サイが触れると、巨木は抉られ、吹き飛び、轟音とともにムラクニの方へ倒れる。

彼は避けようとした。だがすぐに気付いた。この木の向こうに奴がいる。


黒々とした太い幹が、音を伴ってこちらへ倒れ込んでくる。

地面が揺れ、空気が押し潰されるようだった。

身体に、脳に、この手の(シワ)一線一線一に刻み込まれた妙技を今この瞬間にこじ開ける。

刀を静かに下段へ落とす。切先は地面すれすれ。まるで土を指しているかのような低い構えだ。

迫り来る巨木の影が、男の身体を覆う。枝が風を裂き、葉が雨のように舞う。

それでも男は動かない。

腰を落とし、半身に構える。

両足は地を踏みしめ、重心は静かに沈んでいる。

幹が目前まで迫った。


空気が唸る。


その刹那。


沈んでいた腰が、一気に弾けた。地を指していた刃が跳ね上がる。鋼が、下から空へ駆け上がった。大地をすくい上げるような軌道で、刃は巨木へ食い込む。鈍い衝撃が腕を伝う。だが刃は止まらない。腹を裂くように幹の中心へ走り、繊維を断ち、芯を割り、

そのまま一直線に天へ抜けた。

真ん中から二つに割れた幹が、男の左右へ大きく開く。その中央に、男は立っている。

振り上げた刀の先から、砕けた木片がぱらぱらと落ちた。

未だ空中に残る割れた巨木の間に、細い空が見えていた。そして、もう少し見下ろせば、何が起きたかを理解していないサイがこちらを向いている。剣の先が届いていたのか、角に縦に裂いた傷が入った。


「すごい…」


ウィータはムラクニの剣技に魅入って、動きが止まった。しかし、まだサイが倒れないことを確認すると、そのムラクニと敵のいる方へ走り出し、石を拾って強く掴んだ。


「ハァ…ハァ…これを、またやれば…」

ムラクニはここまでの芸当が出来たことに自分で驚いている。そのためか、集中が一気に切れて、サイの立て直しを許してしまった。サイはまた土を崩して地面をならしながら構えを取る。そこへ、その獰猛な動物の目へめがけて石が飛んできた。それはウィータが走りながら思いっきり投げた物だった。


「こっちだッ!こっちに来い角野郎!!」

敵はウィータの方へ振り向いた。そして軽く貯めてからウィータへ走り出した。だが明確にスピードは落ちている。ウィータは森の中を周りながら、サイの攻撃を上手く躱していった。そしてウィータが走った先にいたのはムラクニだ、


「ムラクニ!!頼んだ!!」


そして、ついに、今度こそ、ムラクニはスピードの落ちたサイの正面に立つ。シチュエーションは上々。後は先程の技を合わせるだけ。

右足を一歩引いた構えを取り、これで攻撃に少し違和感があろうと対応できる。

その巨体まであと10m…7m…3m…


ムラクニが完璧に振り下ろしたその時、ムラクニの脳へとてつもないノイズが走り、顔をしかめながらグラついた。剣のグリップが外れてまとめに掴めない、足で踏ん張るのが精一杯。

巨大な図体が激突し、人の身体を粉々にするまで後一秒もない。


「何だ…これ……記憶が、頭の情報が…雑音になって……剣を振るのを止められた…!?」


困惑し、少しばかり考えることしか叶わない


「申し訳がない、ウィータ…拙者が戦いを選ばせなければ…こんなことには…!」


ムラクニは覚悟を決めて目をつむろうとしたが、風を少し感じて横を見る。ウィータだ。ウィータが声を荒げ、とてつもなくスピードで向かってきていた。


「ムラクニィィィィ!!」


危険をまったく顧みずに飛び出して、身体をつかんで横へ倒れた。ウィータはサイの強靱な角やざらざらの巨体に足を削られながら紙一重で回避した。ムラクニはあっけにとられて、口をパクパクする。


「ごめん…ウィー…」

「いいからッ!!いいから逃げるぞッ!!」


死を覚悟して沈みきった脳と心に、その言葉だけが響いた。ウィータはムラクニを担いで走り出す。痛む足など頭に入らないほど必死に逃走する。

サイはやっと身体の崩壊後に気付いたのか、深追いはしてこなかった。

ムラクニはウィータに担がれながら、恥ずかしさはなかった。それどころか、自分より低いはずのウィータの背に安堵感を感じていた。

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