諸刃の剣
謎の巨大空間に落ちたノス・ウィータとムラクニ。そこは緑の空気に満ちた不思議な森だった。
この世界について、彼はまだ何も知らない。彼はなぜ生き、なぜここに居るのか。この旅路でその答えが見つかることを祈ろう。
「すまないが、腰がそろそろ限界だ。降りてくれると助かる」
僕の下敷きになっていたムラクニが辛そうだったので一旦立ち上がった。
「あぁ…ごめん」
出口らしきものは見当たらない。とにかく、事態が良い方でないことは確かだ。どこに行けば良いかも分からないが、とにかく歩いてみる。
数分歩き続けた後、ムラクニが太いパイプラインらしきものを見つけた。その巨大な管は地面を這いながら一直線に伸びている。明らかな人工物。これを辿らなければいったいどこを目指せばいいのだろうか。ムラクニと顔を見合わせて頷く。二人とも同じ気持ちだ。
パイプは歩けば歩くほど大きくなっていく。その高さが自分たちの背丈に達するあたりで、木々の隙間から壁らしき物が見えてきた。それとうっすら建造物のようなのも壁の付近に見えた。僕らはまだ希望を感じられた。そろそろだ。もう少しだけ信じて進めば、きっと何かある。そしてこの巨大な空間から出るための鍵になるに違いない。
そう思っていた矢先、少しずつ地響きが聞こえてきた。巨大な動物の足音にしては地響きが重たい。そして、その地面をビリビリ言わせてる地響きはこちらに近づいてきている。どこから来るか分からず、僕らは剣を握りしめ、いつでも抜刀できるように構えを取り、あたりを目で探る。
木々をなぎ倒す音が聞こえ、後ろへ振り返ると、そこには仰々しい特大の角を持ったサイに酷似した生物がいた。常識外れの巨軀を揺らしてこちらにゆっくりと近づきながら様子をうかがっている。
一瞬の静寂が訪れ、その溜まりに溜まった緊張を爆発さてサイが壁のような図体で突進してくる。僕は受け流そうと構えたが、すぐに諦めて右へ飛んだ。
「ッ!?」
幸い紙一重で避けきることが出来た。だが、この突進に身体がかすりでもしたら、その拍子に身体の大部分が抉られることを至近距離で直感した。僕はすぐにムラクニへ声を上げた。
「逃げるぞ!全力で!!」
しかし、ムラクニは構えを解かず、数歩しか動かない。
「逃げるのは悪手だ!逃げれば最後…後ろから刺されてしまう!」
「かといって立ち向かってもどうにもならないだろ!!」
意見が合わない。最悪だ。
そんなちっちゃい言い争いをしている内にまたサイがこちらへ突進してくる。しかし今度は僕への直線を逸れてムラクニへ向かう。ムラクニは木に手をつき、全力で避けてサイの攻撃を木に命中させる。しかしその威力は想像を超えていた。木は大部分が抉られ、大分大きかった幹がメリメリと音を立てながら倒れた。轟音を響かせながらサイは向きを変えて、何事もなかったかのように構えを取りながら前掻きする。ムラクニが僕の方へ近づいてきた。
「拙者は多分、昔かなり強かった。何というか、剣の型のような物が染みこんでいて、今はそれを無意識に取り込んだ構えになっている」
「…要するに?」
彼は刀をゆっくり抜いて、手首を捻りながら切っ先を下に向け重心を下に下げた構えを取る。
「あいつを斬れるかもしれない…!」
本当にそうかは置いておいて、その圧倒的な自信に欠けようと思った。
「条件は?」
「あぁ、出来れば真っ正面から斬りたいがそれはリスクが有り過ぎる。相手の速度が落ちていれば、多少攻撃されながらでも切り伏せられそうだが…」
「それならアイツを見てみろ」
僕は一つ気付いていた。さっき木に激突したとき、あいつの角から破片のような物が舞った。木の粉末でも葉でも砂埃でもない。確実に角から落ちていた。
「ヒビ…つまり…あいつの突進には限界があるってことか?」
「うん。あいつが残基とかを気にしないってことを入れても弱点になり得る。…これでもし無理そうだったら、一緒に逃げるからな」
「おい!前!」
会話を挟むようにサイがまた突っ込んできた。二人は左右に別かれる。僕は後ろに走る。とてつもない速度で背中を追ってくるサイを見続けてタイミングを計る。あと数メートルという所で上へ飛ぶ。木の枝を掴み、地球回りをする。足の先が擦るスレスレで避けたおかげでサイの視線は僕にしか向いていない。何のブレーキもかけないままサイはまた巨木へ激突した。
強靱な鬼角に縦にヒビが入った。
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