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エピローグ
――一週間後。
帝国領内を進んでいたエルシアの乗る馬車は、正体不明の賊による襲撃を受けた。
護衛一同は強力な睡眠魔法により即座に昏倒。異変を察する者は一人としていなかったという。
混乱の只中、エルシアの姿は忽然と消え失せた。
随行していた侍女は「王国の騎士に攫われた」と証言したが、物証は一つも見つからず。王国側も「該当する騎士は存在しない」との回答を示した。
この訴えは、やがて誰からも顧みられぬまま、静かに闇へと沈んでいく。
――時を同じくして。
王国と帝国、その境を越えて大陸全土へと広がり始めた噂があった。
曰く、稀代の女錬金術師がいる。
曰く、常にひとりの騎士を伴い、各地を巡り歩いている、と。
彼女がどこから来てどこへ向かうのか。知る者はいない。
ただ、その足跡の先々で、奇跡にも近い錬金の噂だけが残された。
(終)




