全ては此処から始まった
俺が異世界の入り口へと消えたのはいつだろう。
あの時はまだ小学生だった。
昔から俺は何にも興味を示していて怖いもの知らずのクソガキで、
だからあの異世界の入り口に単なる興味本位で手を出した。今ならそれが失敗だったとよく分かるだろう。
触った時身体が飲み込まれ黒い空間をひたすら回りながら落ちていくような感じ。
あれだけでも相当気持ち悪いがそれ以上なのはその世界の綺麗な若草色の草原と神秘的に透き通った湖とは裏腹に腹を空かし、血眼になって獲物を探す狼のような獣、
見つけた獲物を驚異の力で死ぬまで離さなずゆっくりと毒で溶かしていく人の何倍もある毒蜘蛛。
あれらを見た時怖いもの知らずの俺も恐怖のあまりチビっちまった程だ。見つかっちまって狼が走ってきた時、頭を食いちぎられ、草は紅色に染められ死んだ身体を食い荒らされる自分を想像した。
転けて狼が口を開け飛びかかってきた瞬間もう駄目だって思った。
だが突如自分の前に純白のマントを見に纏った男がそうさせなかった。疾風の如く俺の前に出ると驚くべき速度で剣を振り下ろす。一匹の狼の頭は飛んだ。
斬り上げ、斬り下ろしと流れるようにして男は二匹、三匹とあっという間に斬り伏せると剣を鞘に戻しこちらを振り向いた。俺に男は声をかけた
「怪我はないか?」
と。優しい声だった。
その時助かったって分かってその男にしがみついた。
怖さで震えていた俺を男は無理矢理引き剥がさず一緒にいてくれた。
怖かった思いと安心した思いが混ざり合って俺の目から一筋の涙が零れ落ちた。