八話 王都会戦
ロンバル王国は、各国に使者を送った。
ここザルツ帝国には、宰相直々に、皇帝陛下に謁見を申し出た。
「な、何だと。待てだと。私を誰だと思っている!」
「ロンバル王国の宰相閣下とお見受けしています。今、各国の使節を、序列順に謁見をされています」
「いつもは、最優先で会ってくれたぞ!」
「いつもがおかしかったのです」
☆八時間後の夕暮れ、やっと会うことが出来た。
辺境伯の軍が反乱を起こした。奴らの資金を分けるので、援軍が欲しいと申し出た。
しかし、皇帝は、興味なさそうに、
「援軍を出さない」と一言
「ルドルフ殿下が、我が国におります。たいそう、我が国を気に入っております。どうか。ご再考を!」
「ほお、援軍を出さないと、余の子息、ルドルフを人質に取ると?」
「そうは申していませんが、援軍を出さないと、貴国への感情が悪くなり・・民衆が」
「もう、良い。そやつを拘束せよ。ルドルフに万が一のことがあれば、お前を、塔の上から落下刑にする」
「「「御意」」」
「なっ」
・・・ジェイドが、高いところから落とされて死亡したことを知ってるのか?
☆聖王国聖都平民担当官
「はあ、ロンバル国の辺境伯が邪教ね。軍神タダは女神教の列聖だよ。地方信仰も認める場合があるって、知らないのかい?」
「そんな。話は聞いておりません」
「そりゃ、そうだ。今日、宣言されたんだもの」
☆グリーンランド王国
「援軍は出しませんな」
「な、んですと。辺境伯の富は欲しくないのですか?」
「欲しくない。これにて、謁見は終わりじゃ」
わずか、一分で終わった。
☆☆☆ロンバル王国王宮、
「何だと、どこも、援軍を出さぬと」
「はい、陛下、宰相閣下は、拘束、外務卿にいたっては、平民担当官が出てきました」
「何と、訳がわからぬ。ヘンリーは何をしている」
「魔獣対策の専門家と話をしております」
「魔獣など冒険者に任せれば良いではないか?」
「それが・・・出現地で、辺境伯がほとんど討ち取っていたので、予算がありません」
☆王太子宮
王太子は、魔獣保護の第一人者、リッチモンド教授を王宮に招いた。
・・・魔獣とは、調停者の使いと言う者がおります。
何故、魔獣は出没するのでしょう。
この世はバランスです。
人口が増え続けたら、やがて、食料が枯渇します。
増えすぎた人口を抑えるために、調停者が使わしたのです。
魔獣が生態系に及ぼす影響は、実は、誰も分からないのです。
「研究のために、保護すべきです」
「そーよ。その話が聞きたいのよ!」
「素晴らしい考えです。で、具体的方法は?」
「一番、やってはいけないことは、冒険者や、近隣住民、領主など、被害にあっている方々への抗議です。逆効果です」
「じゃあ、どーやって、保護するのよ!」
「はい、まずは、冒険者や、領主や村人たちとの友好な関係を築くことから始めます。対魔獣訓練を受けた犬を村に配り。
冒険者には報酬を払い。人里に現れた魔獣を無傷で捕えさせます。唐辛子で作ったスープを鼻に吹きかけ。来たら、不快だと学習させます。識別魔道具をつけて、山奥に放ちます。
そして、同じ個体が、人里に出てきたら、殺処分です」
「だって、魔獣は人を襲わないのでしょう!」
「ええ、しかし、学習しない。また、出てきた魔獣は危険です」
「もう、いいよ。具体的にいくら掛かる?」
「はい、一体、山に放つには金貨15枚、魔獣の山を5,6個購入して魔獣保護区にします。近い村は、村人たちに代換地を与えて移住をしてもらいます。
う~ん。貴国の場合は、金貨15万枚~30万枚ですかね。年間予算は、放魔獣100体で、金貨1500枚、予備予算と研究費も含めて、金貨5000枚って所でしょう。
是非、ご検討下さい」
「分かった。アキ、やってよ」
・・・しまった。いつも、アキに投げていた。
魔獣保護派の学者を招き。魔獣対策を聞いたが、即効性はない。
リッチモンド教授は、学術の面から、魔獣を保護すべきであると主張している。
話がかみ合わない。
「もう、全然、話が違うじゃない!」
「リリアン、待て、政務を・・・」
「仕事、多過ぎよ。ヘンリーがやってよ!」
しかし、この王国、対策することは、魔獣だけではない。
「辺境伯軍は、沈黙しています」
「資金が足りません」
「冬を越す食料がありません」
「だから、僕に投げかけるなよ!アキに・・・」
「殿下、落ち着いて、まず。全体を掌握するのです」
「君は?」
「財務官出納係の、マウリーと申します・・」
「平民出身か」
彼女が言うには、今、金庫にいくら残っているのか?帳簿は、アキが殺害されてから、実はつけられていないこと。
リリアンが、勝手に持ち出している状態であると説明した。
「まず。リリアン様の政務の権限を停止、リリアン様のドレスや宝石の支払いの手形を凍結、利息をつけて、来年以降に、返すと交渉する。国がなくなれば、払えなくなると言えば、納得するでしょう」
「え、リリアン、現金払いで買っていたよ」
「読んでいたのでしょうね。その商人は我が国の窮乏を、なら、殿下、ドレス、宝石を売りましょう。損は覚悟です」
「アキ様が、飢饉に備えて、王都北の倉庫に、備蓄食料をためていました。それと、女神公会議に、人道的支援を要請するべきです。兵糧にしない条件です・・・それと、仲裁もお願いしましょう・・」
・・・アキ、
「・・・殿下、留学生たちのルートから協力をお願いします?殿下にしか出来ません。救荒作物の供出、また、本国からの人道的支援の要請・・・」
・・・アキも、こんな感じで、政務を見ていた。
「殿下、お聞きになられていますか?」
「ああ、分かったよ・・・軍事のことは?」
「それは、軍部にお聞き下さい。私の父、身内びいきもありますが、マウリスが、最も、最適でしょう」
ああ、これで、助かる。アキ、
王太子は、王都中を回ったが、朗報もあった。
「アキ様が個人的に借りている倉庫が王都にありました。厳重に施錠されています」
「何だって」
・・・
「魔道具がありました!1コです」
「助かる!それを、王都の職人に見せて、複製させて!」
☆
「複製不可能、バネが使われています。バネは時計ギルドの秘匿技術です。弾は訳が分からないそうです。その他にも・・」
「何だって!」
「しかし、似たようなものがあるって言っていました。王都西のアンティークです」
「買ってよ!」
かつて、王都近辺に、魔獣が出没していた時に、手が足りず。開拓団にも渡していた銃だ。
全て、黒色火薬を使う。
「アキのじゅうも入れて、・・100ぐらいに、弾が、一つにつき、あれ計算できない。後で、計算官にやらせて、・・・じゅうの形が違うものがある。弾の大きさも、マウリスに渡して、いや、弾を作って、そうだ。弓矢の多量生産・・資金も必要」
「マウリス、マウリー!はどこにいる。何とかなりそうだよ!」
しかし、
王宮で出迎えたのは、びしょ濡れのリリアンだった。
「ヘンリー、グスン、マウリーが、私をイジメるの。私、聖女なのに、私のドレスをビリビリに破いたり。ヘンリーに近づくなって、にらんだり。噴水に落とされたの」
「え、今は、それどころ・・・」
「だからね。お父様とお母様に相談したら、魔女は死ぬべきだって言うでしょう?」
リリアンが指した方向には、
首をつられたマウリーがいた。服はビリビリに破かれている。
そのそばには、公爵家の私兵がたむろっていた。
「殿下、浮気はいけませんぜ」
「ヒヒヒ、まだ、いたしてはいないから、セーフでしょう。お嬢だけを愛して下さいな」
「ヒィ」
「マウリス、マウリス!父上!リリアンが、リリアンが!」
「おう、ヘンリー、王族たるもの走ってはいけない。慌ててはいけない」
「そうよ。ヘンリー、王族なのだもの。どっしり構えていればいいのよ」
「父上、母上!」
「マウリスが、コソコソしていたからな。問い詰めたら、何じゃ。サンペイ戦術とか、騎士なのに、地をはって、夜襲をする計画を立てていたのじゃ」
「えっ、それじゃ」
「だからな。反逆罪で、処刑したからな。娘も王太子妃を狙っていたと公爵から情報提供があった。親子して謀反人だ」
・・・違う。違う。違う。何が違うか分からないけど、違うよ。
あの時、ルドルフも、アキにご執心か?と言われて『ゲスな!』と言っていたな。
「リリアンの言うとおりじゃ。傭兵は後払いでも集まったぞ」
「そんな。何故?」
「簡単だ。近隣の村から、略奪免除税を取ることを認めたのじゃ。天気の良い日に会戦じゃ。お前が将軍をやれ、そして、王家の偉光を示すのだ」
・・・近隣の村は、略奪免除税を払えない。村は襲われ、やがて、王都に食料がはいってこなくなると、提言する文官は、いなかった。意見を言える空気では既になくなっていた。
☆☆☆辺境伯軍
要塞では、会議が開かれていた。
議題は、主に、我が軍の弱点である。
「ナミ、意見を言いなさい」
「はいなのです!我が軍は、突破力がありません。騎馬突撃を取らず。ディーゼルエンジンの装甲車は開発されていないのです!」
「・・・・そうね。野戦になったら、散兵戦術を取り、遠間から矢を密集して撃たれたら苦戦するかもね」
「三科長、敵が夜襲をした時の対処要領は?」
「閃光弾による照明です!後、指向性のランプで照らします!決定打がありません」
「四科長、補給は?」
「補給も弱点といえます。!今は、王都近郊から新鮮な牛のミルクを補給できていますが、包囲されたら、面倒です」
「そう、これからは、買い出しの比率を下げて、本国からの輸送に頼りましょう」
「ナツ戦闘団長!敵が現れました!数、数千です!」
「陣形は?」
「方陣陣形です。いえ。横に長い長方形です!」
「馬鹿なの?この六角陣地を取り囲み。火力を分散させれば、少しは勝機があるのに」
・・・・
「本当だ!」
「いや、囮かもしれない。草原に紛れて、他の角度から、伏兵が来るかもしれない」
ナツは命令を下す前に、調整を行う。
「警戒員は、そのまま、兵力を相手の全面に集中、42式75ミリ野砲には、ぶどう弾・・・で、うむ?ナミ、我が軍は突破力が弱いって言ったわよね」
「はい!そうなのです」
「なら、敵の意表を突きましょう。魔法兵!前へ」
・・・・
「はい、ファイヤーボールは、詠唱が必要でして」
「うん。問題は射程よ」
「せいぜい、10メートル、狙わなくてもいいのなら、50メートルです。それ以上は、消えます」
「射程が短い気化爆弾って感じかしら。だから、近接戦闘をする冒険者で重宝され、軍隊では、弓の代わりに主流にならなかったと?」
「さようです」
「ところで、何で、魔道兵はローブを羽織っているの?バレバレじゃない?」
「さあ、私に言われても・・」
この名もなき魔道士は、この意見を言うためだけに雇われていた。
☆☆☆王国軍
「何だ。要塞から、何か出てきたぞ!」
「あれが、馬なし車、二台、伝説は本当だったのか?」
「殿下ぁ、こちらも騎馬をだしますぜ」
「うん・・」
ナツは、自ら撃って出た。乗っているのは、高機動車、
「ヒィエ、何で、私が運転手!」
「ナミ、吹っ飛ばして!」
幌は掛かっていない。荷台には、ガトリング砲が搭載されている。
もう、一台は、予備で後方をゆっくり走っている。
「ナツ戦闘団長!もう、一台、走らす意味は?」
「いつ、壊れるかもしれないから、救援用に、一台よ」
「ヒエ~」
王国陣地は、
「おい、あれは女だ。逆賊ナツじゃねえ?」
と浮き足だったが、
「何だ。あれ、はえ~」
「ヒィ、あんな早さは、見たことない!」
「馬の二倍、いや、三倍あるぞ!」
この時代、庶民は、馬より早い乗り物を見たことがない。
地球で、汽車が出来たとき、時速20キロを超える乗り物は人体に悪いと、本気で反対する人たちがいた。
ナツが、敵陣地から300メートル付近を時速60キロで横切っただけで、敵陣は恐怖に陥った。
「ヒャッハー!」
「何ですか?それ、近隣の村人みたいな叫び声なのです!」
「フフフ、気に入っているのよ」
「盗賊みたいなのです!」
「あれ、会戦名決めてなかった。ナミ、良い案ない?」
「ヒィ、王都会戦でいいのです!」
最後までお読みいただき有り難うございました。