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七話 金を生み出す装置

 ☆☆☆王都平原、辺境伯軍要塞


「陛下は、早急に、兵を引けば、今回の謀反罪を取り消すと仰せです。田舎に引っ込み今まで通り魔獣狩りをすることを許しますぞ!」


 ピ~、ピロピロピロ~~~


「ナツ殿!無礼ですぞ。何ですか?その伸びる紙の笛は?馬鹿にしているのですか?」


 ナツは、使者との対談中に、紙笛を吹いて、遊んでいた。


「魔女の罪を許すと言っているのですぞ!」


「あ、それ、投射器で、飛ばして」


「「使者を投射器で投射!了解!」」


「無体な。こちらは、使者で・・で、ですぞ!」

「お姉様を騙し打ちにしたくせに」


 使者は、投石機で飛ばされた。砦から数十メートルで落下し、地面をバウンドして、外で待っていた護衛騎士の前で、息絶えた。


「ア~ハハハハハハ、面白ーい。まだ、人の形をしている!次は、あの遠巻きで見ている奴らごと吹き飛ばす。カタパルトで、爆弾付矢を投射!」


「ヒィ、逃げるぞ!」

「使者に手を出すとは!非道だ」


 ・・・・


「ナツ様、あおりスキル、すごすぎなのです。アキ様のことを魔女って、王国は、交渉のつもりなのですか?」


「さあ?殺して欲しかったのかも。ナミ、お茶を入れてくれる?」

「はい。それから、買い出し組が帰ってきました」


 ナツは、王都に物資の買い付けを命じたフリッパーとリリー親子に王都の状況を聞く。


「ウエスギ様からの書状だ・・です。門番は通行料を取ったら調べもしなかっただ」

「王都は、酒場だらけでしたぜ」

「不自然に空き店舗も多かったよ」


 ・・・そう、酒場、空き地は、父様、母様の代で、テラコヤを作ることを提案し、資金援助して買い付けた土地と建物ね。

 前の王が崩御し、

 現国王の時代に、学校は閉鎖になったわね。

 王宮のみで、外国の留学生だけは受け入れるようになった。

 姉様の尽力もあったけども、外国とのパイプが欲しかったからだろう。


 現国王は、勉学嫌いで有名だったわね。


 上杉からの書状には、リリアンはドレス、宝石を買いまくっていることと王都や宮中の様子が記載されている。


「フフフフ、お前たちのことは、お前たちで決めさせてあげるわ」



 ☆☆☆王宮


「何故だよ!何故、兵が集まらないのさ!」


「各地で魔獣の被害が出ています」

「兵を都に送る余裕はないとのこと」

「傭兵を集めるにも資金が不足しています」


「どうすれば良いんだよ!」


 ダンダン!

(うわ、地団駄を踏んでいる)


「ヘンリー、私に良い考えがあるの」


「リリアン、何?」


「傭兵を集めるのよ。お金は大丈夫よ。後払いにすればいいのよ。そして、生き残った傭兵にだけお金を払えばいいのよ」


「そうだ!リリアン、良いアイデアだ。しかし、生き残った傭兵は?」


「大丈夫よ。お金は辺境伯がいっぱい持っているのよ。奪えばいいのよ。私知っているんだから、魔女、沢山、金貨をもっていたのよ。

 魔女は麦ごときに大金を払って大陸中から集めて、コソコソ何かしていた!あの砦の中に金貨がいっぱいあるに決まっているのだから」


「そうだ。実行しろ。そこの文官、命令書を作成して」


「お待ちください!」


「マウリス」


 老齢の騎士が割って入った。


「傭兵は、半分前払いが基本です。でないと集まりません。

 傭兵は、砦の周りに配置して食料を補給できないように検問、向こうが撃って出たら逃げるを繰り返します。

 王都に、もしかして、「じゅう」があるかもしれません。それを探して、訓練をする。

 併せて、弓矢を多量生産をして、遠間から一斉射撃!戦えることを示して、和睦をするのです」


「え~、相手は邪教だよ。魔女だよ。私をいじめた一族だよ」


「まずは、呼称をなおして下さい。そこからです。相手を怒らすだけです!」


「マイケルの騎士団が、辺境伯領を、占領しているかもしれないわ!強気でいかなきゃ!」


「敗退したと考えるのが、自然でしょう」


「もめているようだな」


「父上、母上」


 この国の国王と王妃が顔を出した。


「ヘンリー、学校を廃止したワシが、何故、留学生を受け入れたか分かるか?」


「我が国の偉容を示すためですか?」


「それもある。社交は大事だからだ。こんな時の社交だからだ」


 ワシの他に二人の兄がいた。ワシは学校に行くのが嫌だったのだ。彼らの教育を受けると、虫のように集団で動くようになる・・・人らしさを失うと思ったから、学校に行かなかった。

 王位が回って来ないと思ったが、兄二人は、病死だ。


 ワシはずっと、見ていた。

 奴らは、

 飢饉になったら、すぐに援助をしてくれる。

 平民学校を作るために資金を提供した。

 もちろん、用地買収をしたところで、ワシが潰したがな。

 土地は王家で没収したのだ。


「まるで、あちらが、王国で、こっちが、辺境伯ではないか」


「そのようなことがヒドイ。こっちが王家なのに」


「辺境伯には分不相応の富がある。それを分けてやると言えば、他国は援軍を出すわ」


「さすが、父上」


「奴らは、どうやら、金のなる木を持っているようだ。でないと、あの魔道具を開発は出来まいて、世界中から援軍が来るのだ。如何に奴らでも対処できまい」


「さすが父上、魔道具を見て、ビビるどっかの騎士とは大違いだ。分かったよ。そこの文官、各国に使者を出す書状の文面を考えて」


「・・御意」


 あ、もうダメだ。

 最適解を出した老騎士は、ため息をつく。

 先代の王は、学校に行かない王子の尻を叩いていたのに、まさか、馬鹿王子が王位を継ぐとは、そして、王妃は男爵家出身、終始、ニコニコしているだけだ。


 ・・・王に即位した時に、当時の公爵令嬢と婚約破棄をし、公爵家の一族を処刑した。お気に入りのリリアンの一族に家督を継がせた。ちょっぴり、聖魔法が使える田舎の土豪だ。


「こりゃ、親子、似ているな。もう、ダメかもしれない」

「マウリス様、声がデカイです。不敬罪になったら、誰が王国を復興するのですか?」

「もう、知らん」




 ☆☆☆辺境伯砦


 砦には、タモン・ウエスギが訪れていた。


「よお、ナツ、久しぶりだな。・・・・アキは、残念なことになったな」

 ペコ「上杉のおじさま、お久しぶりです」


 砦内を、65式自走荷馬車が走る。

 この世界の荷馬車に、ハンドルとエンジンを取り付けた奇妙な姿だ。

 最高速度70キロ、巡航速度時速40キロだ。


 ブロロロロロロ~~~~


「お、もう、自作の自動車が出来たのか?うちのご始祖様が逝かれた時に、最後のトラックも息を引き取った。

 もちろん、売ってくれるよな」


「差し上げるわ。おじさまにはお世話になりっぱなしだもの」


「ダメだ。トラックが無くなったときに、援助してくれたのは、ナオヤ様だ。無利息でお金を貸し付けてくれた。仕事もくれたよ」


「評価試験はまだしてないわ。そうね。評価試験と宣伝も兼ねて、お安く譲るのは如何かしら」


「小売価格は?」

「500万円、しかし、おじさまなら、150万円でいいわ」

「助かる~~」

「一台お試しにお売りしますわ。ガソリンもつけるわ」

「そうか、ガソリン駅も作らなきゃな。商売の幅が広がるぜ」

「ジャガイモから作ったアルコールで動くタイプの自走車も検討中です。整備商会も作れますね」


「ナツ、上杉殿」


「御大」

「エミリ様!いらっしゃるとは知らずに、失礼しました。ご挨拶を申し上げます。上杉商会が代表、タモン・上杉でございます。

 また、機会を設けてご挨拶に伺います。私はこれで」


 上杉は場を察して、砦を去った。

 エミリの目は、老齢ながら鋭かった。

 エミリは、ジィとナツを見つめた後、


「来なさい。これから、継承の儀を行います。はっきり言います。アキに継承させるつもりでした。

 しかし、ゴホゴホゴホ」


「メイド!何をしている。曾お婆さまは寝てなきゃダメよ」


「フフフフフ、やっと、曾お婆さまと呼んでくれましたね。今の上杉殿とのやりとり。見事でした。

 まるで、旦那様のようでした。上杉殿も、無料を断って、立派です」



 ・・・・


 ・・・何故、ナオヤ殿が、この地に着いてからも、研究を続け。仲間たちには、無利息でお金を貸し付けることが出来たのか。

 想像は出来ますか?


「分かりません」


「秘術があるのです。この世界の魔道には、落とし穴があります。錬金魔法は、魔素を物質に注入して変化を起こす方向で進みました。

 ある金属を金に変える秘薬などは、とても高価で、意味をなしえません

 しかし、旦那様は、それに、近いことをしていました」



 ☆☆☆62前


『このままいけば、ニート国家になるかもしれない。・・・どうしよう』

『旦那様、いつも粗銅をこんなに集めて、何をなさっているのですか?それに変なお面をかぶって、怖いですわ』


『これは、防毒マスクって言ってな。近くに銅の鉱山あるだろ?そこから銅を買っているけど、ドワーフは鉄に夢中だし・・・う~む。これは危険だしな』


 旦那様は、とんでもない方法を言いました。

 それは、粗銅から金を抽出する方法です。

 旦那様は、それをみんなに言うと決断をしました。


 ・・・・


『みんな、聞いてくれ。実は、俺には秘密がある。銅から金を抽出する方法を知っているのだ』


『『だからか!』』

『あんた。鍛冶の真似事をしよると思っておったのじゃ』

『おかしいと思った。わしらに給金を払いよる』

『魔獣の素材だけでは無理だと思った』

『開発費はそっから出ているのか』


『用はそんだけか。あ~すっきりした。おう、みんな、仕事に戻るぜ』


『え、方法は聞かないの?』


 異世界から来た仲間も聞きませんでした。


『ハハハ、それじゃ、まだ、武器は作れるな。コンバウンドボウをもっと作ってくれよ』

『そうだ。余裕があったら、気球も作ってくれ!』

『方法はエミリさんとの間の子に教えてくれよ』


『みんな』


 ・・・・・


「これが、その方法を記した書物になります。機密扱いです。写本は許可しません」


 ボロボロのA4用紙を束ねたものを、ナツに手渡した。


「書かれているのは、日本語です。当分は、この方法は、この一族の当主の秘匿技術です」


 この書物には、


 佐々木三曹の考察から始まっていた。


 ・・・銅の値段が安い。灰吹法がないか。方法は知っているが、奴隷などのコストが合わないのでやっていない。

 いや、女神教の教義で、非人道的だからかもしれない。

 灰吹き法は、作業者が早死にする。


 ・・・灰吹き法、

 鉱物を鉛に溶け込ませ。金や銀を取り出す方法。

 日本には1591年、南蛮人によって、伝わった。

 しかし、鉛中毒により。作業者は短命であった。


 当初、防毒マスクをかぶって、佐々木は作業していたが、

 晩年、発電の開発に併せて、安全な電気精錬を復元した。


 との趣旨が書かれている。


「この装置は、辺境伯館の奥の間にあります。これが、鍵です。貴方のお父様とお母様が亡くなった時に、私が預かっていました」


「使うときは、緊急の場合に限られます・・・王国はあれほど、困った時に、頼ってきたのに、ゴホ、ゴホ」


「曾お婆さま!」


 この日、正式に、ナツは実務のトップから、辺境伯をついだ。

 もちろん、王国の承認は求めない。

 独立を意味する。



最後までお読みいただき有り難うございました。

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