五話
予言の書が、秘匿本になったのは、滅びの予言でもあるからです。
予言の書には、
・・・文明が進みこのまま人口が増えれば、食料生産が追いつかなくなり。やがて、文明を維持できなくなるであろう。
しかし、人族は、グアノ(鳥糞石)、硝石を肥料にすることを思いつき、急場をしのぐが、
深刻な資源争奪戦争が起き。持たざる国と持たざる国で戦争が起きる。
それも、やがて、枯渇していく、
しかし、未来の英知は、解決していくであろう。
解決策は、化学肥料・品種改良・内炎機関である。
それが、ないと滅ぶ。
「あの、グレース様、聖都の聖女様の魔法や、土魔法士の方々で解決出来るのではないのではないでしょうか?」
「ルイーザ様、とても、素晴らしい方々ですが、自然肥料の域を超えません。
化学肥料を施した麦は、実りが多すぎて、倒れてしまい。新たに品種改良が必要だったとか、失礼ながら、歴代、聖女様の偉業でそのようなことは寡聞に聞きません」
「内炎機関とは何だ?」
「簡単に言うと、馬なしで走る車です。ルドルフ様、貴殿のお国では、牛馬の飼料に、農地をどれくらい当てていますか?我が国は、農業国ですが、全農地の4分の1から3分の1です」
「1/3だ・・・いや、軍馬に力を入れているから、もっとかもしれない。そうか。馬を減らせれば、それだけ人のための農地が増える・・・」
「ええ、食べるためだけに、牛を育てているとも仰っていましたわ」
グレースは、語る。
アキから聞いた。日本の事を、
貧民でも、一日3食が可能、24時間、食べ物を販売している商会・・冷蔵庫、冷凍庫、電子レンジというもので温めて、いつでも食べることが出来る。大道芸人が庶民を笑わせ。音楽は、王侯貴族以外も楽しめる。夢の世界・・
ここに来る者は、王族、貴族であるが、彼らでも、後ろ盾がなければ、王宮で食事にすら困ることがある。
「とても、信じられないが、事実だろうな。俺は体験した。すさまじい技術を」
俺は、この国に来た頃、腐っていた。
☆回想
俺は三男だ。何かあった時のスペアだ。
しかし、弟、四男が、本国の騎士学校に入学して、俺が、この国に留学するように勅命が下った。
ああ、つまらない。俺には騎士団長になる出世コースから外れたぜ。
『ああ、こんな小国に留学するなんて、やってられない!王太子は威張っているし、こんな国、簡単に滅ぼせるのに、もともとは我が国からの流民の末裔ではないか?』
『殿下、さすがに言い過ぎですよ。あ、アキ殿に聞かれた?』
『アキ殿!これは、違うのです。殿下は、機嫌が悪いだけで‥』
『かまうものか』
愚痴る俺に、アキ殿は、優しく諭してくれた。
『確かに、小国ですわ。しかし、これを・・・』
『これは、なんだ。杖か?』
『フフフ、練兵場まで、どうぞ』
バン!カチャン!カラン、バン!カチャン、カラン、バン!・・・
・・・なんだ。これは、アキ殿は女性、なのに、150メートル先の、的が粉々になるぐらいの威力だ。
それに、5発連続で撃っている。撃つ毎に、金属の何かが、杖からこぼれ落ちる。
150メートル、弓で撃っても、正確に狙えない距離だ。魔法は、射程が短い・・・脅威だ。
『これは、後装填式ライフル銃、60式です。銃身にライフル螺旋が刻まれていて、威力はすごいのです。それに、無煙火薬の開発に成功しました』
『・・・これを明かして良いのか?』
『これが、あれば、女でも魔獣を討伐できます。貴国も魔獣で多くの方が命を落としているのではないですか?』
『ああ、これが、ほしい』
『まだ、だめです。これは誰にでも扱えるからこそ、統率力ある方に渡し。ともに改良をしようと思っています。その旨は、皇帝陛下に内密にお手紙をお書きしました。
つまり、皇帝陛下は、あなたにその素質があると見込んでいるのでしょう』
『・・・・アキ殿、無礼な発言、謝罪をする』
・・・・・
「まあ、王太子は、あの軍隊と戦うことになる。自業自得だがな」
☆☆☆同時刻、辺境領、
「お父ちゃん!いたよ。あの草むらに隠れている。赤い上衣に、白いズボン、大将首だ!」
「でかした!リリー」
「「「ヒャッハー、落ち騎士狩りだ!」」」
「ヒィ、命だけは助けてくれ~~」
・・・何故、子供まで、参加している。こいつら、会戦を、ランチボックスを食いながら、観戦していた村人たちじゃないか?
敗戦と分かると、武器を持って、騎士に襲いかかってきた。
蛮族だ!
「うわ、みっともない。グルグルパンチみたいに、剣を振り回しているぞ!」
「サスマタで動きを封じろ!」
「うぐ、なんだ。これは、トゲがついている。捕獲具か、武器かどっちだ!我は、騎士団長マイケルだ!貴賓の待遇を所望する!」
「うお~!金貨100枚だ!」
「少し、眠れ」
バシン!
アサカ会戦は、たった、二発の大砲で、雌雄を決した。
アームストロング砲を真似た砲である。ただの砲弾ではない。
ぶどう弾を使用している。
彼らの騎馬陣地上空で、弾が炸裂し、砲弾の破片が降り注いだ。
馬は、爆音にならされる訓練をされておらず。
破片を免れた馬が暴れ、騎馬の用をなさなくなった。
もう、一発は、魔道師団の上で炸裂した。
・・・・・
「総員103名、事故8名、事故の内訳、転倒5名、投擲兵器による打ち身2名、他一名、槍による振り払いによる切り傷、皆、次の作戦に参加可能なのです。いずれも掃討戦時なのです!」
「投擲兵器による打ち身、防刃チョッキは、衝撃には弱いのは想定済み。
ナミ、待って、槍で負傷した者の名と経緯は?」
「福田士長、18歳、今年、戦闘団に配属された者です。刀で戦いました!その際、穂先が肩に当たりました。しかし、相手を斬殺、武勲です!」
「彼は何故、銃ではなく、刀を使ったのかしら?」
「はい、銃弾の使用制限です。一人殺すのに、弾七発までとの制限によるものだと思います。福田士長は、弾を撃ち尽くしていました!」
「ふう~、若さ故の過ちね。効率よく殺すことを覚えなければ、この先難しいわね。弾は無制限ではないわ」
「あの、戦闘団長は15歳では?」
「ナミ、今夜は徹夜で、表彰の選定と、準備をしなさい」
「ヒィ、申し訳ないのです!」
「戦闘団長、敵、騎士団長、マイケルを捕獲しました!近隣の村人です」
「そう、会うわ。村人に報奨金を渡してあげなさい」
「「「御意」」」
・・・
「ねえ。お前たちは、どうやって、お姉さまを殺したの?」
「ヒィ、許してください」
「回答になっていないわ。制裁!」
ナツは、靴先に鉄が入っている軍靴で、マイケルを蹴る。
バシ!ビシ!
「はあ、はあ、ウグ、王子が、王太子殿下が、お茶会に呼び出して・・・そのまま剣で殺害しました」
バシ!ビシ!バギ!
「この鬼畜が!お前は、腹いせに何を言っても蹴られるの。お姉さまが何を言っても信じてもらえなかった屈辱をお前が受けるのよ」
マイケルは何を言っても殴られる結果になった。
この一族が、この世界に転移したのは、65年前にさかのぼる。
その年には、この地に住み着いた。
この地に来た手段は、
ブロロロロロ~~~~
車列が、やってきた。
「馬なし車?!御大!」
「御大!」
一人の老婆が、メイドに手を支えながら、車を降りた。
「これ、ナツや・・・この高機動車を使いなさい」
ナツは、マイケルへの暴行を一時中断して、膝をついて、礼をした。
この一族の最長老である。
「でも、思い出深い車ではないでしょうか?」
「夫、ナオヤ・ササキと共に、この地に来た車です。決心がつきました。私は・・王国の最後を見届けます。遠征に連れて行ってもらいますよ」
「御大の御心のままに」
「6両あります。もう一台は、工房に見本として残しています。残り全部使いなさい」
自衛隊の高機動車は、かの世界の有名企業、トヨタ製である。
高機動車、耐用年数をすぎて、くず鉄として海外に売却されたが、まだ、十分に使え。ロシア、東南アジアで使用が確認された稀有な車両である。
また、アメリカでは、100万キロを超えたトヨタ車が、普通に走っていた事例が確認された。
この異世界でも、耐用年数をはるかに超えても動いていた。
しかし、さすがに、
「ランプは全滅、オイルは限られています。走行距離は200万キロを超えています。ドワーフから、共食い整備を提案されましたが、拒否しましたわ。私と同じで、今、遠征が、最期でしょうね」
「これからも、一族をお導き下さい」
「ナツ、貴方は幸せになるべき存在です。過剰なざまぁは・・・心を魔界に落としますよ」
「王国の事は、民に決めてもらいます。王家は、御大の御心のままに、『予言の書』馬鹿王子対処要領、『復讐はしなければ、無意味と分からない』」
「・・・・・」
「では、事後、総評が待っています。失礼します」
去っていてく、ナツの後ろ姿を見送りながら、
老婆はつぶやいた。
「予言の書は・・・人が書いたものですよ」
☆65年前、回想
『何ですの?!これ?』
『アハハハハハ、エミリ、令嬢が、婚約破棄をされて、ざまぁをする場合の話だよ』
『つまらないですわ!破棄なんて、不吉ですわ。そんなこと起こるはずがありませんわ。通常は話し合いをして、解消ですわ!希なケースを詳細に書くなんて、お話し合いをして、解消をするマニュアルを書くべきですわ!』
・・・旦那様は、先を読んでいたのかしらね。
・・・・・
彼女は、転移者、佐々木三曹の妻、エミリであった。この世界の住人だ。