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二話

「殿下、魔女の部屋にあった本は、全て焼却が終わりました」


「ご苦労様、気味の悪い文字で書かれていたね。あれは、邪教の呪文だね」



 ジェイドとマイケルが辺境伯領に出立した後、


 僕は、アキの部屋にあった本を全て、処分した。


 気になった。理由は分からないが、討伐に参加した護衛騎士に聞いた。


「そういえば、魔女は今際の際に何か言っていた?」

「・・・そうですね」


「『まだ、死ねない。食べ物に困らない世界を、後、もう少しで実現出来るのに・・・』とか世迷い言をほざいて命乞いをしていましたね」


「はあ、全く、出来もしないことを」


 王族や高位貴族は、食に困らないが、平民や低位貴族は、毎日の食に困ると聞く。

 彼らは努力が足りないのさ。


 リリアンは、学園で留学生たちを掌握するために、授業を受け持つことになった。


 学園と言っても、王宮内にある。

 留学生は他国の王族や高位貴族たちだ。


 アキでも出来たのだから大丈夫だろう。

 アキは、従者とメイドを教師にもしていた。

 全員殺したのは痛かったが、何、大丈夫だろう。


「殿下!大変です。留学生たちが、騒いでいます!」


「何だって!」


 ☆☆☆学園


「このお菓子腐っていますよ」

「腐臭がしますわ」


「もう、何でなのよ!リリアン、一生懸命に作ったのに!」


 ・・・何故、リリアンがお菓子を振る舞っているんだよ。


 理由を聞くと、アキは料理を振る舞っていたという。

 それを真似した?

 ああ、王宮でも、下々の者が食しそうなイモや固いクッキーの食事会をしようとして、止めたことがあったな。


「リリアン、ちゃんと、作ったの。美味しくなるように、聖魔法かけたんだからっ!」

「それが、原因でございますよ!聖魔法は生物の成長を促進します。菌を増殖させたのでしょうね・・」

「『きん』って何なのよ!」

「目に見えないくらい小さな生物ですわ」

「そんなのあるわけないでしょう!」


「そもそも、味見はなされましたか?」


 ・・・お菓子会か。まあ、リリアンの可愛い失敗だ。


「まあ、まあ、皆、これからは、王宮の菓子職人に作らせるから、今日のところは僕に免じて、許してよ。明日には、美味しいお菓子を出すと約束しよう」


「あの、王太子殿下、そもそも勘違いされていませんか?」


「君は?」

 一人のお下げの少女が、遠慮がちに手をあげ発言を求めた。


「ハンザ王国の王女ルイーザと申します」

 山国の小国だ。生意気な。しかし、ここは我慢だ。リリアンの支持を取り付けなくてはならない。


「どういうことだ?」


「アキ様は・・・救荒作物や非常食の紹介をされていましたわ」


 ☆回想


『皆様、これは、私のご先祖が、異界から持ち込んだイモ、ジャガイモと言います。食料として持ってきました。これを煮たものになります。お塩をつけて、お食べ下さい』


『『・・・・・』』

『いくら、アキ様でも見た目が悪いですわ・・・』


『おいしいですよ。ほら、アグッ、男子たち、私でも食べられたのに怖いですか?戦場ではフォークとナイフで食事をされますか?』


『『何を!』』


『『美味しい!』』


『これは、栽培も比較的簡単で、先祖の世界では、救荒食物として普及しました。これが、あれば、民が餓死する確率は減るでしょう』


『是非!種芋を下さい!』


『今はダメです。問題があります。ジャガイモは一種類しかありません・・・』


 私の先祖の世界では、ジャガイモを主食にしていた国がありました。

 しかし、ジャガイモが病気になり。深刻な飢饉になりました。


 原産地では、病気に備え。数種類のジャガイモを植えていました。

 しかし、その国には伝わっておらず。一種類しか植えていなかったからです。


『ですから、皆様にお願いです。このイモと似ているものはございませんか?』

『あの、私の国ではあります。観賞用の植物として栽培していました。数種類あります。根っこの部分は、食べられるとは知りませんでしたわ』


『まあ、ハンザ王国のルイーザ様、是非、お取り寄せをお願いします。品種が多ければ、民へ配布できますわ』


『まあ、ルイーザ様、お手柄ね』

『さすが、植物学が進んでいると評判の国だな』

『そんな。皆様・・・グスン』


 ・・・・・・


「殿下と聖女様、そもそも、この学園の初等科、中等科の科目を履修されていますか?

 アキ様は、異世界の知識を、上から目線で教えません。私たちに寄り添って、知識を教えてくれます。

 ここは各国の貴族学園の上のアカデミーに匹敵する学舎と言われています!上っ面だけ真似ても無駄ですよ!」


「何を、小国のくせに、私は帝王学を学んでいる!王族たるもの。指示を出して、仕事をさせればいいのだ!発言を撤回しろ!王太子である僕と聖女に無礼だよ!」


 ・・・初等科、中等科の授業は退屈だ。内容は王族に必要ない。計算とか。まるで、商会員がやるようなことを教えていた。

 僕は、すぐに、打ち切ったけどな。


「撤回しません!」


 いきり立つヘンリーに、待ったをかける人物が現れた。


「ヘンリー、令嬢にこぶしをあげるのか?」

「王太子殿下、そこまでですわ」


「グレース・・・王女とルドルフ・・いつの間に」


「皆様、アキ様と、基礎学力を教えて下さる従者やメイドの方々がいないこの学舎に意味はありません。私の大使館で今までの学習をまとめることにしましょう。アキ様の歩みを止めてはいけませんわ」


「そうだ。農学、軍学、体術、土木の実習は、ザルツ帝国の大使館でまとめよう」


「午前中は、グリーンランドの大使館で」

「午後は、ザルツ帝国の大使館で資料をまとめよう。昼食は、ジャガイモ料理を振る舞おうぞ」


「「「はい!」」」


 グレース王女は、王太子に問う。


「貴方は、アキ様から本をもらっているでしょう?」


「あっ、そう言えば、魔女の本、まだ、王宮図書館にあるかもしれない。それも処分しなければいけないな!」


「そう、貴方って人は・・・」


 何か言いたげに、言葉を止め。


 留学生たちと共に去って行った。


「そもそも、魔女の学問なんて、不要だよ。しばらくは、学園を封鎖する。リリアン、良いだろう?」


「リリアン、知らない!」

「待て・・・」


 魔女め。死んだ後も呪いを残しやがって、


 そうだ。ゴスだ。ゴスに神学から、アキの教えが間違っていると、皆を説得させよう。

 あれ、ゴスは昨日からいない。


「早急に、女神教会に行く。馬車を出してよ」


「「御意」」


 ☆☆☆王都女神教会


「殿下、ゴスは、昨晩、急病で亡くなりました。とても、見られない姿だったので、早急に火葬し、遺骨は聖王国本国まで運ぶ計画を立てています」


「何だって?!魔女の呪いか?」


「殿下、ゴスは、あれでも、我が子、真っ白なキャンバスのように、仕える相手の色に染まる子でした」


 聞いてない。一晩で亡くなるのか?


「それと、殿下、女神公会議の負担金、貴国は納めなくても結構ですよ」


「そうか。魔女討伐の報酬か。うん。父上にも伝えておくよ」


「公会議も、貴国は遠いですから、出席しなくても大丈夫ですよ」


「助かる。礼を言う。あれ、何か騒がしいようだけど・・」


「ええ、ゴスの遺骨を本国に運びます。この国出身者以外は、しばらく貴国を離れます」


「わかった。じゃあ、ゴスの埋葬が終わったら、知らせてよ。僕たちお別れに行くからさ」


「・・・・・」


「それと、リリアンの聖女の承認もお願いするよ」


「・・・・・」


 神官長は頭を下げ。言葉を発しなかった。


 ・・・・


「「「神官長様!」」」


 王太子が見えなくなったら、王都神官長は膝をついた。


「彼奴に仕えなければ、ゴスを自裁させることもなかったのに、昨晩、嫌がるゴスに毒杯を飲ませた・・・ウウウウウウッ」


 これは、破門の一歩手前の処置である。

 神職は婉曲な物言いを好む。王太子には伝わらなかった。


 ☆☆☆翌朝、王宮


 チュン、チュン


「ムニャ、ムニャ」


 ・・・ドレスと宝石を買ってあげると言ったら、リリアンは、機嫌を治してくれた。

「リリアンの寝顔は可愛いな。さて、今日は、王宮図書館の魔女の本を一掃するぞ」


 ドンドン!

「殿下!一大事でございます!」


 使用人たちは置物、どうでもいいが、

 さすがに、リリアンは裸だぞ。


「どうした。ここで言えよ」


「殿下!大変でございます!ジェイド様が・・・ジェイド様のご遺体が、中庭で発見されました」


「何だって!!!」


 ・・・おかしい。辺境伯領に、早馬で到達したとして、7日、まだ、出発してから10日ぐらいだぞ。


「発見されたときは、全身骨折で、息絶えておりました・・・」


 ・・・マイケルの騎士団は、まだ、到達していないな。軍隊の移動だから時間がかかる。ジェイドが効を焦って、わずかな護衛と共に、辺境伯の館に、無血開城に交渉に入ったな。

 あれほど、マイケルの騎士団と一緒に行けっていったのに、

 しかし、だからと言って、だまし討ちをするとは、卑怯者、やっぱり蛮族だ!


「しかし、何で、ジェイドの遺体が、中庭にあるんだよ!」


「殿下!大変です。穀倉地帯が燃えているとの報告が来ています!」


「何だって!」



 ☆☆☆辺境伯館


「1!1!1!2!右向け~~~止まれ!1!2!3!【敬礼!】・・・【直れ!】」


「報告!通信班長ナミ、報告するのです!伝書鳩ポッポー1号より書簡あり!イセ航空隊!王家の穀倉地帯に焼夷弾爆撃成功!

 王宮の上空で、ジェイドの爆撃成功!」


「ナミ、教練じゃないのだから、普通でいいわ。それよりも、搭乗員は無事?」


「はい、加藤と三村は、早朝に王都郊外に着陸、気球を燃やし。王都民に紛れました。二人は、茶髪と金髪に、イエローにグリーンの目です!原住民と見分けがつかないのです!」


「よし。それが大事・・ジェイドって、メガネだっけ?いや、メガネって、ジェイドだっけ?」


「はい!戦闘団長!メガネです!」


「ヒヒヒヒヒ、グヘへへへ、ヒャハハハハハハ!メガネの爆撃成功だぁ!あ~おかしい!お姉様の悔しさ悲しみを少しは晴らせたわ!」


「「「「はい!ナツ魔獣狩り小隊長!!」」」

「小隊長、笑い方・・・」



 そこには、アキと姿形は似ているが、性格は真逆な妹、ナツがいた。

 彼女は黒髪だが、目はやや青みがかっている。


「馬鹿な奴ら、お姉様が、一族で一番の融和主義者だったのに」

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