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一話

 ☆ロンバル王国王宮


婚約破棄ってよく聞く。公開の場で断罪して、国外追放か。修道院送り。

そっちの方が可哀想ではないか?


生きているうちに恥辱を与え。一生、他国で平民として生きるか。修道院で男を知らずに、おばあちゃんになる。


婚約破棄をして、追放して生かすのは、実は残酷なのだ。


今日、僕の婚約者を、成敗した。



「殿下、アキ殿の討伐完了しました」


「ご苦労、マイケル、でも、僕の元婚約者とは言え。聖女をいじめたのだ。これからは魔女と呼ぼうか」


「「「さすが、王太子殿下」」」

「慧眼です」


 僕はロンバル王国の王太子ヘンリー、領土こそ小国だが、学問の国として、各国から一目置かれ、留学生も最近受け入れを始めた。


 優秀な側近に囲まれ、聖女リリアンも傍らにいるが、悩みもあった。


 元婚約者のアキが、リリアンに嫉妬して、イジメを始めたと報告を受けた。


 いくら、やめるように言ったのに、『・・身に覚えがありません』としか言わない。


 ビリビリに破られたドレスや、噴水に突き落とされたリリアンが泣いているのを目撃した。


『このドレスが証拠だ!僕もビショビショに濡れたリリアンを見たぞ!』

『それは・・・私が行った証拠にはなりません』


 屁理屈をこねた。


 だから、父上に相談して、討伐の王命を下してもらった。


 彼女は辺境伯の令嬢、その一族のことも考えなければならない。


 彼女の一族は、荒唐無稽な由来を持っている。

 空を飛ぶ魔道具や、馬なし車に乗って、この世界に来たそうだ。


 はん。馬鹿らしい。


 この国に住み着いて、初代王に取り入って、辺境伯の地位に就いたのが真相だ。


 一族の戦闘員は100人もいないのに、辺境伯を名乗っている。全くおこがましい。

 そっち方面は外国もない。荒涼とした魔族もすまない荒れ地で、魔獣退治をしている。

 魔獣退治?他国では冒険者が行う卑しい仕事だよ。

 荒くれ者の平民は、ほっとくと暴れるから、与えるくそみたいな仕事だよ。


 文化大国の我が国には不必要だよ。


 騎士団で簡単に対処できる。


 それに、魔獣からとった素材や資源を開発して分不相応の財産を蓄えている。


 この機会に、財産を没収して、辺境伯を解体しあるべき姿に戻す。

 父上と母上も賛成してくれた。


 さて、アキと対面しますか?


「あれ、首、多くない?」


「それが・・・従者、メイドまで、王命と言っても聞かずに、激しく抵抗しました」

「さすが、蛮族、ヒドイものだな」

「我ら騎士は、最期は潔くしたいものです」


「さあ、リリアン、君を苦しめた魔女の首だよ」


「ヒィ、近くで見ると、黒髪がおぞましいですわ。まるで、カラスのよう・・」


「せっかくだ。皆に、首を披露して、我が国の偉容をしめそう。ジェイド、皆は集まっているね」


「殿下、婚約者に関しての重大発表があると言って、外国の留学生を集めております。さあ」


 ジェイドは、宰相の息子にして、秀才。

 この討伐の案を考えてくれた。


そして、女神教の神官の息子、ゴスが彼女の罪を、神職から、証明してくれる。


「魔女の一族は、女神様が統べる地で、邪教を信仰しています。私が、皆に説明します」


 彼女の一族、イセ族は、軍神タダを信仰している。


「それに、奇妙なことを言っています。空からパンを作る・・・人の手で、それは女神様の奇跡だ。人が行うとは、全く、けしからんことです!」


 魔女の髪の色は、黒髪、そして、黒目だ。


 留学生たちは勘違いして、アキを勇者の子孫と称してもてはやしていたからな。


 僕の側近は、


 若き騎士団長マイケル

 次期宰相候補、ジェイド

 神官の息子、ゴス


 そして、我が国の導き。公爵令嬢でもある聖女リリアンだ。

 彼女は金髪碧眼で、王家に相応しい血統だ。


 元々、アキとは婚約をしたくなかった。

 我が国には奇妙な取り決めがある。

 三代あけて、王家と辺境伯家で婚姻を結ぶ。


 蝶よ花とたたえられる令嬢から選び放題だったはずなのに、


 それも今日でおしまいだ。

 

 新たにリリアンと婚約を結び。


 秀才ジェイドの策により。外国の留学生たちにも見せつける。

 

 やつら、変な信仰があるからな。

 黒髪は勇者由来だというし、アキは姑息にも外国の留学生たちには、人気があった。

 全く、魔女の魅了か?



 僕たちは魔女と一味の首を騎士に持たせて、会場まで行ったのさ。



 ☆☆☆パーティ会場


「王太子殿下の登場でございます」


ざわめきが止まり。王太子と側近たちに注目が集まる。


そのまま、彼らは、壇上に上がった。


皆は、注目するが、


しかし、どよめきが生じた。


いつもの婚約者とは違う女性、聖女リリアンが、王太子の横にいた。王太子は、手に腰を回し、親密さをアピールする。



「皆に、報告がある。私の婚約者は、我が国の聖女リリアンに嫉妬し、ひどいイジメをした。

聖女をいじめる魔女である。よって、正義を断行した。

 新婚約者は、聖女リリアンを指定する。

これは、父上、母上も承知の話だ。この話は正式に各国に通達する。君たちに一足先に教えたかったのさ」


クイッと、僕は手招きした。


インパクトが大事だ。


手招きされて、僕の後に控えていた騎士たちが、首をもって現れる。


我が国の精鋭騎士たちだ。


彼らは、僕達の後ろに控えて、元婚約者アキと、従者、メイドの首を、高く掲げた。


「聞け。辺境伯令嬢アキは、聖女様をいじめた罪により。処刑を断行した!」

「従者、メイドも激しく抵抗したので、やむなく処刑した!」


騎士たちは口々に叫び。


リリアンは、皆に魔女の罪を告白する。


「グスン、グスン、私、聖女なのに、あの魔女のような黒髪と黒目で、私をにらみました。ヘンリーに近づくなって・・・持ち物を隠されたり。ドレスをビリビリに破られたり。噴水に突き落とされたり・・・とても、怖かったわ。グスン」


・・・さて、皆の反応は?



ザワザワザワ~


パーティ会場にどよめきが轟く。まだ、ピンと来ないのか?


追撃だ。実は、アキは邪教の徒でもある。


さあ、聖職者の服を着ているゴスが、説明すれば、皆は納得するであろう。


「アキ・ササキは、魔女であった。彼女の一族は女神教徒ではない。おどろおどろしい神殿を建て、軍神タダという神をまつっている。

 しかし、表向きは、女神教を信仰するふりをしていたのだ」


「そんな・・馬鹿なことで?!アキ殿を殺害したのか?」

「ヒ、ヒドイ」


明確に、王太子を批判する声を発したのは、留学生の中の、大国の二人。


ザルツ帝国と、グリーンランド王国の、皇子ルドルフと王女グレースだ。


分かっていたよ。魔女の言動にだまされていた。

想定内だ。


皇子は膝をつき。両手で体を支える。四つん這いの姿になる。


そして、グレース王女は、腰を抜かし、床にスカートで華を描く形になった。



甘いな。アキから、何かおこぼれをもらおうとしていただろう。


アキの祖先は、四代前に、我が国に転移してきたとうそぶく一族


珍しい秘宝や、知識をもらいたいと思っていたのだろう。



辺境伯って言っても、魔族や他国と戦争しているわけではない。


魔獣を討伐しているぐらいだ。


それは、他国では、冒険者がやる卑しい仕事だ。



仕事がなければ、暴れるしか取り柄のない冒険者に、仕方なく与えたお情けの仕事だ。


わが国にはいらないし。


リリアンは、慈悲の観点から、魔獣との共存を打ち出している。


最近の学説だと、魔獣はめったに人を襲わない。


山の中に、木の実やドングリを置いておけば、人を襲わないのだ。


ルドルフは、力なく起き。王子に口走る。



「馬鹿な。王太子よ。アキ殿が不要ならば、一言を言ってくれれば、我が国が迎えたのに・・・」


はは~~ん。そういうことか。




「ルドルフ殿下は、アキ殿にご執心されておられたのですかな?」


・・・よし、ジェイドがルドルフに言ってやった。



「ゲスな!君たちとの付き合いはこれまでだ!」


ルドルフは側近とともに、会場を立ち去った。



そして、グレース王女も反論する。


「アキ様は、信仰を隠しておりませんでしたわ。軍神タダとはご先祖様と聞いておりますわ。邪教の徒ではございません。敬意を持って、女神教の教えも学び。儀式に参加しておりましたわ」


「ほお、グレース王女殿下も、邪教の徒と言われかねませぞ」


・・・さすが、ゴス、大国の王女でも毅然と反論をする。


「アキ様・・アキ様・・・ウグ、ウワワワワーーン」

「「おいたわしい。お嬢様」」

「さあ、王女殿下、お手を、とにかく、宿舎に、いえ。大使館に行きましょう」


メイドたちに肩を支えられ、会場を後にした。


グレース王女の方は、アキと仲が良かったからな。


よし。討伐をちらつかせて、解体だ。


前から、不満に思っていたのだ。


異世界人だから、不思議な力がある?


そんなの見たことない。でも、辺境伯の一族は100人もいまい。


不思議な力、空を飛ぶ魔道具も、馬なし車もない。


だから、攻撃して、ナツと不相応な財産を献上させてやる。


まずは、武力をちらつかせて交渉だ。




「マイケル、ジェイド頼んだよ」


「仰せのままに」

「殿下、私が、財産の没取と、アキの妹、ナツを下女として、王宮に呼び。寝室の床を磨かせましょうぞ」



そして、僕たちは、力を見せつけて、会場を後にした。




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