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十一話 それぞれの末路

 ☆☆☆王都


「チィ、あの貴族、麦の種を大事そうにもって、無駄な殺しをさせやがって」

「どうする兄貴?」


「まあ、いい。孤児院に行こうぜ」


「孤児院?数日前に、略奪にあったと聞いたぜ。奴ら、子供に食わせる食料をため込んでいたって、騒ぎになっていたぜ」


「ま~だ。ガキが残っているだろう。ガキを売ろうぜ。知り合いに、その手が好きなお大尽とつながりのある闇奴隷商がいるんだぜ」




「兄貴!いい考えだ!」

「「「行こうぜ!」」」


 ドン!ドン!ドン!


「ドアを開けろ!開んか!口減らしでガキどもをもらってやるぜ!」


 ドン!とドアを蹴破り中に入る。


「もう、何もありません。全て持って行かれました」

「おお、ガキがいるな。口減らしでもらってやるぜ」

「ヒィ、お止め下さい!子供たちは、未来の希望です!」


「あ、シスターは、BBAだな。いらねえ。ここで餓死しろ」


「ウワ~ン」

「助けて!」

「お腹すいた。もう、いや!」


 ゴロツキたちは、子供たちを縄で縛り。連れ出そうとしたが・・・


 ドアの前に人がいた。別口の人さらいだと、ゴロツキたちは判断した。


【ねえ。お前たち、何をしているの?】


 ナツだ。布鎧を身につけ。護衛に小銃班2個、予備自3等陸曹フリーパーに、リリー親子たちに、荷車を引かせていた。

 中身は、食料に、子供用のプレゼントだ。


「へっ、何だい。お仲間かい。そうだな。分けてやる。こいつと、こいつ、ええい。半分もってけ」


 ナツは、フリフリと首を横にふって否定した。


「全部はなしだぜ。俺たちが先に目をつけたんだぜ」

「欲張りだな!欲張りは泥棒の始まりだぜ!」


「・・・よせ。他を当たろうぜ」


 ゴロツキの兄貴は、不利を悟って、子供の縄を解いて、逃げようとしたが、


 ナツは更に首を横にふり否定する。


「お前たちが欲しい。犯罪奴隷として売る!拘束せよ!人さらいの現行犯だ!」


「「「人さらい現行犯逮捕了解!」」」

「「「ヒャッハー!逮捕だ!逮捕だ!」」」


「ヒィ、何で!」

「今は無法地帯ではないのかよ!」


「無法でも秩序あり。私が秩序なのよ。愚者は経験で学びなさい」


 ナツはシスターに、食料と、おもちゃを渡そうとしたが、考えを改める。


「ここは危ないわね。保護します。ナミ、手続きをして、食事は保証されます。そこで、おもちゃと絵本を渡してあげましょう」


「ナツ様、はいなのです!」


 子供が指さして、叫ぶ。


「アキお姫様?・・・何だ。違うの・・・」


「これ!失礼でしょう。謝りなさい」


「フフフフ、いいのよ。それだけ。お姉様の事が好きだったということでしょう?私も嬉しいわ」

「・・・ごめんなさい。お姫様、大好きだったから・・」


「あの、実は、先日の略奪で、アキ様の麦まで、持って行かれました・・・」


「いいのよ。孤児の食べ物を奪う奴らはいらないわね。奴らは、お前たちの事は、お前たちに決めさせてやる。もうすぐ、青年協力軍がくるわ」


 青年協力軍、人族の戦争地域に、中立の立場で、人道支援を目的とし、食料の配給、治安業務を行う。

 古くは、聖王国に行った吉田医官の提唱により発足した。


 その後、ナツは王都、上杉商会を回る。


「食料は、実は、あるんですよ。政変の後に、集めておきました。商業ギルドも命令通り価格を抑えていますよ。しかし、暴力や恫喝で、食料を買い占め。売っているグループや個人がいます。ナツちゃん。何とか出来ないかね・・」


「分かった。転売屋は、見つけ次第、処刑ね」

「ハハハハハ、それいい」


 ザルツ大使館にも向かったが、そこでは、ナツはチヤホヤされて、固まることになる。

 まるで、お姉ちゃんに用事があって、上級生の教室に行ったが姉はいない。上級生に囲まれかまわれる妹のような扱いになっていた。


「「「「キャー、可愛い」」」

「可愛い勇まし」

「アキ殿の妹君、ナツ殿か・・・いつも、アキ殿から話は聞いていたぞ」


 スリスリ~

 令嬢たちに、スリスリされ、

「ヒィ」と思わず悲鳴をあげた。


 ここで、ある取り決めがされた。

 今後の事だ。

 ここは、戦後、学園都市になる事が決まる。

 留学生たちが、教授、教師になる予定だ。

 全ての者が、王位継承者ではない。

 故に、自由がきく。


「ナツ様・・・私は、アキ様の意思をついで、異世界10号を再現したいですわ・・」


「グレース様、分かりましたわ。協力します。文献によると、異世界10号は、台風の多い地域に突然変異で誕生するようですよ」

「まあ、筋道は分かりましたわ・・でも」

「後で、品種改良の本を送ります。日本語です。この世界にはない言葉が多くありますので、翻訳はしておりません。辞書もつけます。ただし、膨大ですよ」

「!それで、結構ですわ!」


「私は、ハンザ王国のルイーザです。私はトウモロコシというものを再現したいです。そしたら家畜を沢山飼えるようになります」

「まだ。早い。多量の水が必要です・・・でも、研究は自由です」

「実は、我が国で、原種っぽいものを発見したと報告がありました」

「まあ、すごい」


「俺は、銃を自前で作りたいが、その前に、工業技術が不可欠・・・基礎産業を学びたい」


「ええ、段階的に、情報を開示する予定ですわ・・・対魔獣小隊の装備として旧式のものを提供する予定です」


「一度銃を見たが、真似できるようで、真似が出来ない。あれが、工業製品というものか?」


「ええ、65式は、0.1ミリ単位、ズレれば作動しなくなるでしょうね」


 ・・・ご先祖様と、お姉様は間違ってはいなかった。

 チートは、皆で分け合うべき。

 チートを独り占めにすると、やがて、袋小路に陥る。

 良い商品を作っても、市場が育っていなければ売れない。

 周りが豊かにならなければ、物を売れない。


 しかし、チート技術は、誰にでも分けていいものではない。信用と素質のある者のみ。

 それを作るには、教育と交流だ。お姉様のように、我が部族も外に出るべきかも・・・


「お姉様は、全て見越していたのかもね。さあ、ナミ、移動即決裁判所を作って、暴動を起こしている奴らを、処刑・・鎮圧するわ。その手続きをお願い。刑務所は、旧騎士団跡ね」


「ヒィ、何ですか?そのおどろおどろしい裁判所の名前は?!手が足りません」


「大丈夫よ。上杉のおじ様が、人を確保していたわ」



 その後、王都近郊に、各国の連合軍3万人からなる青年協力軍が着陣した。


 長は、ザルツ帝国皇帝自ら出陣し、

 各国は、示し合わせたかのように、若い王族たちを派遣した。

 目的は二つある。一つは、教育のためである。


「見たか。王都の民衆、デモというものを起こしている」

「しかし、ナツ殿は、容赦なく鎮圧をしている・・」


「何が、正しいかは・・・分からない」

「しかし、食料は十分にあるのに・・・」

「いや、無いという不安が暴動を起こしているのだ」

「民衆に食料を供給しないと、王族も危ないな」


「フフフ、異世界文庫では、その話があるわ」

「「「ナツ殿!」」」


 ナツはガリバー旅行記の話をした。童話の元になった話だ。

 ガリバーは、小人の国、巨人の国・・・日本に行った後、ガリバーは最後に馬の国に行く。その国では、馬が主人で、人間が家畜だ。


 馬は人間をいぶかしげに思う。

 人間は、食料が十分にあるのに奪い合う。

 何故だ?と、


「もっとも苦しいその時に、争うのが人間の性なのかも、

 とりあえず。平民学校を作って、列に並ばせることから、教えるべき。非常事態でも列に並ぶ。これは、異世界では可能だったと文献にありました」


「あの、ナツ殿、その見識、お伺いしたいです。野外ですが、お茶会に招待します。メイドを連れてきていますから、安心ですよ」

「何故!メイドを!」

「いや、是非、我が国の紅茶を」

「何の。珍しい本があります。魔道書です。貴国は、魔道の研究も余念がないとか」

「えっ、えっ、何故?!」


 もう一つの理由は、ナツとの見合いだ。

 ナツは混乱する。


「ナツ殿」


「「「皇帝陛下!」」」


「ナツ殿、こちらへ」

「はい。皇帝陛下」


 皇帝が連れて行った先には、難民受付所があった。


 帳の外から、こっそり開けて、ナツに様子を見せた。


 彼らは、商人であると自己申請をしている。


「おい、早くしてくれたまえ」

「まあ、ここは虫が出ますわね。汚いわ。早く綺麗なお部屋に案内しなさい」

「そうだ。そこの平民、貴族を呼んできなさい!陛下・・いや、商会長がお困りだ!」


「難民申請、1番目の希望者だ・・・ロンバル王と王妃、妃たちだ・・・外務卿もいるぞ。どうしたい」


「ここは、難民を受け付ける場所です。王は、民ではありません・・・始祖様と初代ロンバル王は仲が良かったです・・民にすれば、難民として、受け付けて良いかと」


「ほお、寛大だな。宰相もつけるぞ」

「ええ、お願いします。開拓団として貴国の辺境に送られるでしょう。まさに初代の王の後跡をたどる。本望でしょうから」


 ・・・・


 ザルツ皇帝は、自ら彼らに面会をした。

 王とは、女神公会議で面識はある。

「ヒィ、皇帝・・」

「まあ、皇帝陛下なの?是非、侯爵待遇で保護をお願いしますわ」


「ここは、難民避難所だ。民なら、保護することは差し使いないが、この書類にサインをしてもらおう」


 行政権を全て、ナツら辺境伯軍に渡す誓約書である。


 彼らに、選択権はない。


 民として、開拓地に送られることになった。


 彼らは開拓地で、メイドや侍従を要求し、物議を醸すが、


「いるわけねえだろ!」

「おい、お前、書類仕事できっか?文字読めるだけじゃダメだぞ。きめ細やかな仕事を・・・て、お前、王様だったのに、文字も読めないのか?どうやって、政治やっていたんだよ!」


「文官がやっておったわ!王たる者、指示を出せばいいのだ!」


「あ~、もう、ええ。使えないな。男爵様の屋敷で、下働きでもしとけ!」


 低位貴族の屋敷で、こき使われる事になる。


 一方、リリアンは、青年協力軍の若手将校や、王族にいいよっている姿が確認されたが、


「連れて帰る訳ないだろ!!」

「何でよ!」

「婚約者がいるのに言い寄る悪女として指名書が似顔絵付きで出回っているんだわ!」


 リリアンは、やがて、冒険者ギルドに登録し、パーティに参加し。

 あるクエストを受けることになる。


「魔獣の捕獲だ。金貨15枚の仕事だ!」


「何で、捕獲なのよ!危ないじゃない!遠くから魔法をドッカンドッカン放って殺せばいいでしょう!」

「だから、金貨15枚なのさ。あんたは擦り傷しか治せないけど、貴重な回復術士だ。後ろで、・・・・魔獣だ!逃げろ!」


「グヤァアア!」


「ヒィ、俺たちには、まだ、早かった!」

「キャー、連れて行ってよ!」


 ・・・・


「リッチモンド教授!大変です。魔獣が人を襲いました。F級の底辺パーティです!」


「何、あれほど、B級以上と言っていたのに、何故、受けさせたのだ!」

「それが、一人だけ、B級のロートルが名義貸しをしていたようで」

「ギルド長、そのB級に処分を」

「畏まりました」


「可哀想に・・・」


 リリアンは行方不明、

 その後、人喰い魔獣が討伐されたが、解体したら、若い女の登録票が確認された。

 名前はメリー、リリアンが使っていた偽名だ。






最後までお読みいただき有り難うございました。



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