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作戦会議


 ラア・ミーレとパーティー(戦争時仮パーティー)を組んだあと、彼女と馴染むためと、会議のためにそのまま近くのバーへと向かった。

 ラアは意外と馴染みやすい子だった。冒険者を初めて一年目らしいけど、Aランクだし、武器や装備もかなり質が良いものだった。

 最初は弱い子かなとか思っちゃったけど、人は見た目で判断してはいけないということに気づかされた。

 それから、ラアはとても軽く接してくれた。

 彼女は自分のことをラアと呼んで話していた。


「ラアさ、これでも恋人出来たことないんだよね!」


 今もこんなことを軽々と話している。

 まぁそうだろう。こんな美少女に近づける男なんか、そうそういないさ。

 とか、考えて笑ったりして、すぐに仲は深まっていった。

 

 しかし、バーで飲んでいるときの悲劇。


「ラアさ、ずぅーーーっと相手がいなかったからぁ……性欲がたまりにたまっぢゃっでさぁー」


 と、ラアは思いっきり酔ってた。

 ルリオとレリアもこれにはドン引き。さすがの俺もドーン引き。

 せっかくの美貌がもったいない……

 これはもっと近づきずらい存在であると思った瞬間であった。


「でさでさ! ちょっと欲を張らすために、お店行ったんだけど、定員さんおどおどしちゃって下手くそでさ! もういやなっちゃって……結局処女!!!」


 バァンッと、酒の入ったビンを机に叩いた。

 やばい、この子は酒魔だ。こういう所には連れて行ちゃいけないタイプだ!

 そう直感で判断した俺とルリオとレリア三人は、急いで会計を済まし、バーから逃げ出すように出ていったのだった。


 バーから出ると、外はもうすっかり夜になっていた。夜の街はいつもなら、もっと賑わっているはずなのに、今夜はしんとしている。

 風すらも吹かない、そんな夜だ。

 いつ魔王が攻めてくるか分からないからか、みんなずっと家に引きこもっているんだな。

 そんななか、騒いでいる人が一人。


「酒ぇー! おかわりぃーー!」


 ラアだ。


「ちょっと、静かに!」


 俺は慌てて彼女の口を押さえて、回復魔法をかけた。これで酔いが収まるといいんだけど……


「あれ?」


 あ、収まった。


「近所迷惑!」


 俺はまるで、小さい子供の親のような態度でラアを叱った。


「ごめんなさい……」


 ラアは落ち込んでいるし、ちゃんと謝ったので、ここでは見逃す……というか、許してあげよう。

 そして、俺たちは改めて会議を行うため、ルリオの家へと向かった。


 そこは、見事な豪邸だった。

 薄々思っていたけど、というか、分かってた。うん、分かってた。俺は知ってた。

 こいつはかなりの富豪だと、俺はすぐに察した。


「どうぞ、上がって」


 門からしてレベルが違う。ルリオの家には迫力と、威圧感があった。常に波動を放っているみたいだ。

 庭も、俺の新築の家の二倍はある。

 扉も大きかった。まるで神の寝室の扉みたいだ。

 それは大袈裟かな?とか考えながら、俺はルリオの家を観察していく。

 廊下を歩いていると、美術品が数えきれない程、大量にある。

 まるで貴族だな。

 俺はチラッとルリオの顔を覗いてみたが、何を考えているのか、さっぱり分からない。

 こいつは飛んだ化け物だからなー、一度殺されてるし、俺の中のブラックリストだ。

 次死んだら終わりと考えると、こいつは俺の中の討伐対象でもある。こいつを殺さないと俺の計画が狂う。

 俺は改めて計画の実行を決意した。


 ルリオに案内されたのは応接間。

 ここもまた、大きな部屋だった。俺の寝室の一・五倍ほどある。

 ここは部屋の中央に綺麗な女性の美術品があるだけで、他は特に目立った物はない。高そうな机に椅子があるだけだ。

 さて、ここでメイドさんやらなんやらがコーヒーとかを持ってきてくれるのかな……?と思ったが、なんとルリオは一人暮らしらしい。

 聞いたときは俺も驚いたが、今ではルリオならそうだよなと納得している。こんな大きな家をどうやって一人で管理するんだとか疑問に思うけど、そこはあんまり深く考えないでおこう。

 さてと、そろそろ観察も終わりにして、落ち着こう。

 みんなが椅子に座るのを確認して、ルリオが口を開く。


「じゃあ、会議を始めようか」


 俺はコクりと頷いて見せる。

 四人では会議とは言わないと思うけど……と言いかけて俺はその言葉を飲み込んだ。

 いらんことは言わなくていいのだ。

 話すとき以外は黙っとこう。


「まず、ギルド…というか、国から言われていることを説明しよう」


 と言うとルリオは、何処から取ってきたのか分からないが、文字がびっしりと詰められた書類を出した。

 するとルリオは話を続けた。


「長くなるけど、最後まで聞いてくれ。レリアとウォスには話したところもあるが、もう一度説明する。まず、今回の戦争では、国兵部隊(ベレル騎士団とベレル魔法団)、一般兵、上位冒険者部隊、下位冒険者部隊に分かれる。あー、それと他国からの援軍。これはあんまり望めないらしいけど…とりあえずまだ未決定だ。」


 そこまで説明すると、ルリオは人差し指ですーっと、部隊編成詳細と書かれている所を指差した。

 ふむふむ、なるほど。

 騎士団と一般兵と上位冒険者部隊が前列に出て、その後ろに下位冒険者部隊と魔法団が出るということか。


「見てのとおり、俺らは前だ。そして、冒険者部隊ではこのように、パーティーごとにグループを作る。俺らは第二十四部隊だ。」


 ルリオが指差す場所には、冒険者部隊編成詳細と書かれていた。

 確かに俺らは第二十四部隊だ。

 俺がこくこくと頷きながら書類を読み進めていると、「ここまで質問ない?」とルリオが尋ねてきた。

 しかし、俺とレリアとラアも特に質問はないみたいだ。

 それを確認すると、ルリオはまた話し始める。


「俺たちのグループは、上位冒険者部隊の二列目だ。とりあえず、魔王軍に全力でぶつかりに行けとのこと。まあ、死ぬことはないだろう。俺たちなら」


 なんかいらん自信過剰な付け足しが聞こえたが、それは無視しておく。

 そうだな、魔王軍にぶつかりに行けか……ずいぶん適当だな。

 というか、これは計画のチャンスじゃないか?前々から考えてはいたけど、そんな前列ならば、さらにチャンスだ。

 魔王レオルクシ(俺)に近づけるかもしれない。

 よし。と、俺は内心喜んでいると、ルリオの話が続いていた。


「相手は魔人や魔獣も操る魔王軍だ。幹部連中もいるらしいから、命の保証は無いな。でも、やっぱり俺たちなら大丈夫だろう」


 ルリオがふふんと自慢気に鼻をならす。

 途中まで良かったのに、またいらん付け足しが出たよ。そうやって油断していると死ぬんだぞと言いたかったが、こいつが死ぬとは思えないし……と考え込んでしまい、これもまた飲み込んだ。

 そしてまた話しに集中をもどそうと、顔を上げると、レリアが挙手をしていた。


「質問いい?」


「もちろん」


「魔王軍って、魔王も直接来るのかな?」


 それは俺も気になる!!!

 俺はルリオに視線を移した。さぁ、どんな答えが来るのかな……?

 しかし、ルリオの答えはこうだ。


「ごめん、それは分からないな」


 ガックシ、と俺は肩を落としたが、仕方ない。それと、レリアはどこか不安そうな顔をして手を下ろした。

 魔王が怖いのかな?と思ったけど、それも仕方ないかと思い、まぁいっかみたいな感じでまとまった。

 そろそろ終わりかな?と思ったが、まだ話は続くようだ。


「もう終わりにするよ。最後に一つ。情報によると、魔王軍の進軍開始は二日後らしい。戦争は全て同じだが、攻める方が主導権を握ることになる。相手が攻めてきたらこっちも守りに徹する。決して勝手な行動はしない。わかったな?」


 ルリオが急に真面目なことを言ったので、俺は少し動揺しかけたが、「おう」と言って頷いた。


「よし、じゃあ解散。また会議とかするかもだから、予定開けといてね」


 これにて会議終了。会議というより、最終打ち合わせって感じになったけど、まぁ何でもいい。

 とりあえず俺は今日の疲れを晴らすべく、急いで家に帰るのであった。

 

最後までお読みいただきありがとうございます。

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