ルレア爆誕
ついに二人が動き出す───
「うん、分かってる。ふぅー、はぁー。息を整えて」
レリアはベッドに安静に眠る。それを隣で見守るルリオ。頑張って、頑張ってと応援の言葉を囁きながら。
今ここに、最強と最強の間に最強の子供が生まれる。新たな命が───ここに、爆誕する。
「そうだっ! いいぞー。回復魔法かけるから待ってて」
「うん、あー。来そう」
ルリオはレリアの腹を押さえる。優しく指すって新たな命を歓迎する。回復魔法と痛覚無効魔法を施して、少しでもレリアの負担を少なくしようと努力する。
またルリオはレリアを優しく見守る。
「生まれるッ!!!」
そして新たな最強がここに、爆誕───ッ!!!
「あぁ、生まれたぞ。よく頑張ったなレリア! そしてルレア! おめでとう!」
「しんどかったよぉぉー! ルリオぉぉ!」
レリアはルリオに泣きじゃくる。
新たな命の誕生を祝いながら。
「さてと、レリアが回復したら行こうか! 魔王討伐へとね!」
「もっちろん! 魔王なんてボッコボコにしてやるわ!」
この二人が動かなければ、世界が動かない。天すら動いてくれないだろう。天の神たちをも導こうと二人は一歩歩み出す───
ベレリオルで嬉しい動きが始まった頃、ちょうどリオルクシが魔王城に帰ってきていた。
◇◆◇
久しぶりのガズドナルメシアだな。こうしてみると。
俺は自分の城をまじまじと見上げる。
「へぇー、これがリオルの城かい」
こいつも俺のことをリオルと呼ぶんだな。誰に似たんだか。
ラア・ミーレを思い出すよ。
初めは確か冒険者ギルドで会ったんだっけな。
あん時はとにかく可愛いと思ったなぁ。俺の彼女にしてやろうとか思ってた時だなぁ。懐かしい。
もう誘惑されるがままに戦争のチームメンバーに加入させて……
で、俺の操りから助けてあげて、好かれたよなぁ……あの時からだな。
そのあとはしばらく平和だったな。魔王の心を忘れて人間になりかけていた頃だな。ほんと、危なかった。
でも今こうして俺がいるんだ。数々の困難を乗り越えてここに。
「さてと、俺の友達を案内するよ」
「ちょっと待って! もしかしてリオルクシって、本当にあのリオルクシ?」
ミルナが戸惑いながら俺に問う。
「はあっ!? 当たり前だろ! 何回言えばいいんだ!?」
俺はミルナに叫ぶ。
まさかこいつが俺の招待に未だに気付けてなかったとは……どんだけ馬鹿なんだこいつは。
ミルナは俺を恐ろしい化け物を見るような目で見てくる。
「やめろ、食ったりしねぇよ馬鹿。さ、こっち来い」
俺はそんなミルナをほおって先へ進む。
こいつはちょっと面倒な馬鹿を連れてきちゃったな。
もっとまともな味方が欲しい。といっても、そんなにわがまま言ってられないのが今だ。
まともといってもまともすぎてもついてきてくれない可能性が高い。こいつはラア・ミーレのこともあって人間への復讐心があるし、使いやすいだろう。
なんとなく、いける気がする。
「ほら、ここだよ」
俺は優しい紳士的な男を演じて見せる。
「わあお! 綺麗なお部屋!」
まるで少女のようにミルナがはしゃぐ。
そうそう、ウクラルには巨体が邪魔なので外でまってもらってる。警備でもしといてーと言って適当かもしれないが、許して欲しい。
てことで、ミルナに俺らの紹介を済ませる。
「俺は魔王リオルクシ。そして、こっちが俺の相棒のメイピスだ」
「はじめまして」
「やっほー」
初めての対面がやっほーって、なんだこの礼儀がなっていないお馬鹿ちゃんは。
まあいい。
こいつは戦力としてだけ考えればいいだろう。
「さてと、俺らの作戦を話させてもらう。」
ミルナに理解できるかは知らないが、これからの作戦について、彼女の頭に戦路を叩き込んだのだった。
ミルナにはベレリオルへの突撃を頼んだ。
城の防衛を頼んでも意味がないので、ミーレの恨みをぶつけて欲しい。
これで、完璧だろう。
「ありがとう。じゃあ、今夜はここでゆっくりしてくれ」
「マジ!? 自由にまわっていいの!? やったー! おっ城ーおっ城ー!」
俺が解散を命ずると、ミルナは無邪気にはしゃいでどっかに行ってしまった。
何かしないか心配だが、俺は疲れたのですぐに寝ることにした。
「じゃあ明明後日、ついに俺の二万年の歴史が動き出すぜ────ッ!!!」
準備は整った。あとは潰すだけ。
壊すだけだ。
人間は殺す。破壊の限りを尽くす!
◇◆◇
俺には分からない。
魔王がなぜ世界を滅ぼそうとするのか。二万年もの間は神がなんとかバランスを押さえていたようだが、それももう、なぜか突如なくなった。
だからこうして勇者や冒険者が生まれた。
人間は弱い。だから強い者に守ってもらうのに。
神という王を中心に、戦っていく。
天使族も突如消えた。天空城も突如消えた。
残されたのは魔物と人間それだけだ。
たまに、天の子という才能の塊が生まれる。
それが、俺だった。
俺は魔法も剣術も長けていて、誰からも最強と言われた。
特に剣だな。
筋肉とか、体力みたいな身体能力とかも誰よりも長けていた。
そのうちに、みんな俺を勇者と言い始めた。
これは、神の試練なのだろうか?
神様の嫌がらせなのだろうか?
俺に魔王を倒せと言っているのだろうか?
だったら俺はごめんだね。
ゆっくりのんびり暮らしたいだけなんだよ。
俺にはみんなの言う、勇者という憧れがなかった。
生まれつき、農家という道しか残されていないと思っていた。
というか、農家になりたかった。
あんな平凡な職業、他にない。
冒険者は命が保証されない。
俺は最初、それが怖かった。
怖くてしかたがなかった。
だから、俺は拒んだ。
そんなの嫌だと。
なのに、みんな。
みんなみんな。
お前しかいないんだと、俺を勇者と煽てた。
誰しも頼られたら断りづらい。
特に大勢にな。
それでも俺は闘った。
逃げて逃げて逃げて───
逃げた先にあったのが剣だった。
冒険者だった。
やはり、俺にはこれしかなかったんだ。
俺が冒険者になることを決めると、みんな喜んだ。
飛び跳ねて喜んだ。
喜ばれたら少し誇らしくなった。
俺はそれから、魔物と戦い始めた。
意外と勝てた。
俺からすれば魔物は弱かった。
これなら、魔王すらも倒せるんじゃないかと思った。
それかは、俺は一気に強くなった。
誰からも勇者と呼ばれた。
そして───とうとう三人の仲間を集めて、魔王城へと向かった。
「魔王リオルクシッ!!! お前はここで終わりだ!!!」
勇者パーティの「フェロス」なんか名乗っちゃって、俺は調子に乗っていた。
魔王もなぜか俺を見て怯えちゃって、やっぱりこいつも弱いんだなと俺は思った。
そして、殺した。
それが、一個前の俺の人生だ。
なぜか俺は振り出しに戻された。
記憶も消された。
でも、レリアと様子が変わったウォスは普通に仲間だった。
それから二度も戦争が起きて、何かしらの違和感を感じていた。
歴史が大きく傾いてしまっているような気がしてたまらなかった。
「なんか、変だよなぁ」
毎日のようにため息をつく日々が過ぎていったある日、真実が明らかになった。
ウォスが消え、魔王リオルクシが入れ替わった。
そして、人間に向かって猛威を振るった。
やはり何かがおかしかったんだ。
俺はここで魔王を討伐するしかないと思った。レリアと子どもも作り、やり残したことはないと確認して、レリアと共に、魔王を討つときが来たんだ。
俺は一歩前に踏み出す。
剣を持って、レリアは杖を持って。今はルレアは王様に任せている。任せるしかないんだ。
ルレアは絶対に守らなければならない。死なせてはならない。
俺がもし死んだら、そいつが俺の転生体になるから。
さてと、これで準備万端だな、さあ行こうか!
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