表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/34

俺の噂


 あれから一週間。俺はゆっくりのんびりと身体を休めた───




 じゃねぇぇぇー!!!

 その休んでいる間に、またまた色んな情報をかき集めたんだよ!

 だいたいリュミリーから聞き出せたものだ。思い出話をしていたんだが、そこから予想も入れながら分析できた。

 俺の転生体のウォスの性格は分かったとして、他の奴らの情報だ。

 まず、ルリオ。ルリオはもう分かってはいるが陽気な少年で、元気、活発。お金大好き。剣が得意。意外と頭が良い。

 次にレリア。レリアも陽気な少女で、元気、活発。お金大好き。魔法が得意。まぁまぁ頭が良い。

 そして、二人とも最強。(俺も最強)

 って、ほぼ同じやないかいっ! しかも情報薄すぎ! 子供の自己紹介かよ! この一週間で集められたのがこれか!

 俺としたことが……

 俺は俺に呆れ、ため息をつき、寝転んでいたベッドから起き上がって部屋を出た。

 リビングにはリュミリーが机の椅子に座って待っていた。

 なにやら元気そうだ。にこにこしている。

 ちなみに、リュミリーは薬屋で働いている、らしい。俺に回復薬もくれたから、それはほんとうなのだろう。


「なんかあったの?」


 俺は気軽な感じでリュミリーに話しかけた。


「それがね、今日、二人が帰ってきたの。だから、お見舞いに来るって」


「そうなの?てか、もう俺元気なんだけど」


 はは…と俺は笑いながらリュミリーの前の椅子に腰掛けた。


「まぁまぁ、そろそろ来るらしいから、ここで待っとこうよ」


「そうだね」


「あと、椅子二つ用意しないと。待ってて」


 と言ってリュミリーは立ち上がり、新しく二つの椅子を持ってきた。それを机に並べる。

 これで一つの机を四つの椅子が囲む形になった。


「うん、完璧」


 リュミリーは我ながら上出来とか言いながら、また椅子に座り直して「まだかなまだかなー」と楽しそうに揺れた。


「久しぶりだよね、私がルリオとレリアに会うなんてー」


 俺はそんなに二人のことが好きなのかと思いつつ、彼女を見つめた。

 今日も可愛い……じゃなくて…


「あ、であとさ、これなんだけど……えっと……」


 リュミリーが氷箱れいぞうこからなんかの箱を取り出した。

 それは、ケーキだった!


「じゃーんっ! これ、ケーキだよ! 久しぶりに四人揃うじゃん?だから、張りきっちゃったぁ」


 リュミリーは机の上にどぉーんっと、ケーキを置き、満足気に鼻をならした。

 俺は「凄いね」と言いながら拍手をした。


「これを四当分するとなると、まぁまぁ大きいね」


 俺はだいたいで測ってみたが、かなりの大きさだ。食べきれる量ではあるが、少し太りそうだなぁ。

 俺がそんなことを考えていると、玄関のドアが叩かれる音がした。


「おーい、ウォスー! ルリオでーす! 医者免許取ったよーん」


 などとふざけたことを言う声もする。

 俺もリュミリーも待ってましたとばかりに玄関へと急いだ。

 ドアを開けると、そこにはルリオとレリアが立っていた。

 前と同じ服だが、少し汚れている。冒険で汚れたのだろうか?


「やっほー、ここ久しぶりだねー。なんも用意できなかったけど、お邪魔します」


 二人は靴を脱いで家に上がった。

 リュミリーが嬉しそうに笑いながら、リビングまで案内し、ケーキを見せてあっと驚かせた。


「わーーいっ! ケーキだぁっ!」


 ルリオとレリアはそれを見て椅子に飛び付き、「早く食べたい!」と言い出した。

 こいつら、本当に子供だなぁと、俺はまたまた思った。二万歳の俺からしたら、子供とかいうレベルでもないがな。

 そして、リュミリーが急いで皿を準備し、四当分し、それぞれの皿に分けた。


「いっただきぃまぁっーすー!」


 ルリオが変な口調で喋り、がつがつケーキを頬張った。

 レリアはさすがに食べるときは落ち着いて、ゆっくりと味わいながら食べていた。

 俺もゆっくり、一口一口を大切にして食べた。

 リュミリーはそんな俺たちを眺めなから食べていた。


「やばい、美味しすぎる」


「んぅーっ! 溶けちゃうぅ!」


 ルリオとレリアは相変わらずはしゃいでいた。ケーキに興奮し、げらげら大きな声で笑って話している。

 俺も同じくらいはしゃいで食べていたが、二人よりもは落ち着いていたと思う。そりゃあ、思いっきり楽しめるわけないさ……一応、演技だからな。


 そんなこんなで楽しく談笑していると突然、ルリオが俺に向かって


「そうそう、結局ウォスさ、大丈夫そうなん?」


 と訊いてきたので、俺は「あん、もう全然へーき」と軽々しく答えた。


「よかった。じゃあ、俺の旅の話しな」


 おいおい、俺の心配もっとしねぇのかよ、と苦笑いしながら、俺はルリオの自慢話を聞いてやった。

 オーガクは弱かったらしい。俺がいないから、最初は不安だったらしいけど、二人で全然余裕だったとか。こいつらを見た目で判断してはいけないな。実力は確かみたいだ。

 俺はとりあえず「うんうん、凄いねぇー!」とか言って調子を合わせて聞いていた。

 リュミリーは興味津々といった感じで、うんうんとうなずきながら、とても集中して聞いていた。

 それが終わるとみんなケーキを食べ終えていて、リュミリーが食器を片付けているところだった。

 一旦落ち着いたルリオは、また椅子に戻って「そうそう!」と言って話を振った。

 それは、魔王についてだった。


「ウォスも、ちゃんと聞いてくれよ」


 ルリオが俺の肩をぽんっと叩いてきたので、「う、うん」と少し姿勢を直して向き直った。


「それが、最近なんか魔獣魔物が活発化しているだろう?」


 そうなのか……?

 俺はごくりと、たまった唾液を飲み込んだ。


「それ、魔王の仕業だった…てこと。」


 この時期とタイミングからして、これは……俺が拠点を移した時のことだな。


「どういう……こと?」


 とレリアが首を傾けながらルリオを見つめた。


「それがな、魔王が……拠点を移した」


 ルリオのその一言で、その場の空気は入れ換えられたかのように一変した。

 俺もその話の続きに固唾を飲んでいる。


「それが、理由は分からない」


 それを聞くと、「なんだよー」と言いながらみんな脱力してだらしなく机にもたれかかった。そこまで知れると思っていたのだろうか?というか、俺としては少し安心だ。

 普通に知られたくないんじゃない、というか………言いづらいが………

 拠点を移した理由が、ただ元の拠点が寒かったから………だからだ。

 最強と言われる魔王が寒いからという理由で城を移すなんて、恥ずかしくてとても言えない。

 このまま気づかれませんようにと、俺はかつて敵対関係だった神に祈りを捧げた。


「で、だ。拠点は俺らの街に近づいたんだ。だから、近隣の森林の魔獣魔物は、魔王の城から漏れ出るエネルギーに反応して、活発化した…てこと」


 ルリオが言い終わると、みんなまた大きく脱力して、ため息を吐いた。

 俺はそういえばこんなこともあったっけな?と、懐かしみを感じていた。

 そういえば、このあと俺はこの街に幹部をつれて襲撃したような…?

 そうすれば……こいつらを罠にかけるチャンスが生まれるかもしれない!?

 そして、俺は元の……いや、それは分からないな。元に戻れたらそりゃあ、ハッピーエンドだけど、そもそもどうやって…

 もう少し大人しくしておくか。そうだな、元に戻る方法が分かって魔王おれと対峙することになったら、そこで罠にかけよう。

 そして、戻る!

 俺はルリオとレリアを、にやりと笑みを浮かべて睨み付けた。

 俺が一人、頭のなかで嘲笑っていると、レリアがびくびくしながら口を開いた。


「てかさ、魔王って、捕まえた者を死ぬまで奴隷にし、地獄のような牢屋に放り込むっていう噂なかったけ……?」


 ん!? なんだそれ!? 俺は決してそんなことはしていないぞ!? …いや、したっけな? してないよな?

 リュミリーも嫌そうな顔をしている。ルリオはいつも通りの態度で動揺もしていない。

 ちなみに俺はそのレリアの言葉に戸惑いを見せた。て、違う違う、落ち着け。俺は三人に合わせるようにわざと眉をひそめた。

 だって俺はそんなことしてないもん。絶対、幹部の奴らだもん。なんかそんなことしている奴いた気がするし!

 俺も幹部の管理が甘かったな……と今頃反省する。

 てことで大丈夫だ。俺は悪くない。

 と、一人で安心しているとレリアは続けた。


「それで、私の友達二人ぐらい死んでるの…」


 おいおいおいおいおい、さすがにそれはやりすぎじゃないか!? 俺の幹部!!! 幹部!!! 多分、アイツ!!!

 ちなみにアイツとは、俺の直属の配下であり、幹部最強と言われる、デヴァ・ノアルドだ。絶対にあいつの仕業だ!!! 俺はなにもしていない!!!

 おっと、危ない危ない。危うく頭から噴火するところだった。

 俺は心を落ち着かせるため、ゆっくり深呼吸をして大きなため息を吐いた。


「あ、ごめんごめん、なんか空気薄暗くなっちゃったねー」


 レリアは無駄に慌てて空気を戻そうとした。

 俺はこの二人に、遠回しに嫌悪感を抱かれているということになる。

 が、今の俺は自分の心を押さえることで精一杯という感じだったから、気づくこともなく……


「まぁそういうことだから、これからはギルドの依頼が高難易度なやつばっかになると思う。だから、気を引き締めていこう!」


 そんな乱れた空気をルリオが綺麗にまとめてみせた。

 俺は動揺と焦りがばれないように小さく拍手を送っていた。

 それから世間話とかして、全て終わるとルリオとレリアは家を出ていく準備をした。

 俺はあと一日は休めと、念を押して言われた。

 のんびりしよう……そう思った。

最後までお読みいただきありがとうございます。

少しでも「面白い」「続きが気になる」と思ったらブックマーク登録、評価よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ